
ロボット技術やAI、ビッグデータなどのデジタル技術が発展し、今農業に組み込む「スマート農業」の動きが活発化しています。スマート農業の取り組みは、今後の農業従事者の減少、さらなるデジタル技術の発展を考慮すると必須と言っても過言ではありません。
今回はスマート農業とはどのような取り組みなのか、その目的や代表的な取り組み内容、実際に使用される機器について解説します。
スマート農業とは
スマート農業とは、農業にロボットやAI、ビッグデータなどのデジタルの先端技術を取り入れることで、生産現場の課題を解決する取り組みを指します。従来の農業は、高齢化に伴う労働力の低下や国内の食料自給率の衰退が大きな課題となっています。
農林水産省の農業労働力に関する統計によると、平成27年から令和3年までの基幹的農業従事者は徐々に数を減らしていることが分かります。また、平均年齢も高齢化しており、若手の基幹的農業従事者数が定着していません。
(※基幹的農業従事者:自営農業として従事している者)

労働者の平均年齢が高齢化することで後継者不足になり、耕作放棄地の増加と食料自給率の低下に繋がっています。スマート農場は、作業の自動化やデータ活用により、生産から加工・流通・消費の一連のプロセスを効率化しながら課題解決できるのです。
スマート農業の目的
スマート農業の目的は主に4つあり、どれも日本の農業が抱える課題の解決に繋がります。
作業の自動化
スマート農業の大きな目的のひとつに作業の自動化があります。これまでの働き方では、農業が抱える労働力不足に対応できず、現場への手厚い支援が必要でした。スマート農業では、無人トラクターやスマートフォンによる水田の管理システムを活用できます。作業を自動化し、人手を省くことで現場の負担軽減にも貢献しています。
農業技術の継承
これまでは、ベテラン農業者の技術を確実に継承することが難しく、農業技術の継承に失敗したことで品質の低下を招く例もありました。スマート農業では、デジタル技術を導入するため、システムを介した継承を持続的に行えます。
情報共有の簡易化
農業の規模によっては複数人で管理・運営していることもあり、作業記録や進捗などの共有に手間がかかっていました。
そこで、位置情報と連動した経営管理システムや作業記録のデジタル化や自動化することで、誰でも簡単に情報共有ができるようになります。
データ活用による課題解決の仕組みづくり
スマート農業を取り入れることで、高齢化に伴う労働力の低下や国内の食料自給率の改善などが期待されます。特にAIやIoTを活用することでビッグデータを収集・蓄積できます。デジタル技術を活用することで、ドローンや衛生のセンシングデータの解析まで可能となり、農作物の状況を細かく把握できます。
また、ロボットやAIの導入により労働力の低下を抑止し、機械が労働力の代わりになります。その結果、今よりも広い耕地を持てるようになり、食料自給率の改善に繋がります。データ活用によって農業の持つ課題を解決できる仕組みづくりができます。

スマート農業の代表的な取り組み
スマート農業はデジタル技術を取り入れた新時代の農業ですが、実際は様々な取り組みが行われています。具体的な取り組み内容を紹介します。
ビッグデータと農業
農地の状況や日照、生育状況のビッグデータを解析することで、より効率的な管理・運営が実現します。ビッグデータは日々蓄積されるため、経験と感覚に頼っていた繊細な判断もデータ基準で行えます。
例えば、収穫可能時期になった際に二酸化炭素の排出量を測定することで、収穫から出荷時期までの期間を予測することができます。より高度なデータ解析ができれば、栽培に関するリスクや過去データから生育の傾向まで導き出せます。
ロボットと農業
農業にロボット技術を取り入れることで、荷物の運搬から収穫までのプロセスを自動化できます。これまでのロボット技術は、大規模農業や工場でのみ使われていましたが、導入コストがリーズナブルになったことで、一般農家でも比較的安価に導入できるようになりました。
ロボットの活躍の場は、AIと組み合わせることでさらに広がります。例えば、農作物を最適なタイミングで自動収穫したり、収穫した農作物を形やサイズ毎に選別する作業もロボットに任せることができます。
スマート農業のメリット
スマート農業を導入することで、作業の自動化やデータ活用以外にもメリットがあります。
農地の規模拡大に繋がる
ロボットによる自動操縦により長時間の作業が実現すれば、人手に余裕ができ、農地の規模拡大も検討できます。また、他の作業も並行して進められるため、生産量の増加にも貢献します。
肉体的負担の軽減
一般的に農業は肉体労働がきついというイメージがあります。朝は早く、作業中の姿勢次第では体を痛めてしまう懸念も残ります。スマート農業に取り組むことで、作業をデジタル化し、重労働や体へのリスクが伴う作業は、ロボットにより代替できます。農業向けのアシストスーツなども開発されており、肉体的負担を大きく減らす動きも顕著です。
スマート農業で欠かせない農機具
スマート農業の導入は確かに時間がかかりますが、導入時の効果は非常に大きいです。スマート農業で欠かせない農機具について紹介します。
農業用ドローン
農業用ドローンは、農地情報の収集や農薬散布などに活用されており、操作性・安定性ともに優れているため人気が高いです。農業用ドローンに搭載したカメラを用いることで、空撮による生育状況を確認できるため、農地全体を一目見るだけで把握できます。一部の農地だけに農薬を散布したい場合も農業用ドローンは効果的です。
無人トラクター
大手農機具メーカーでは、自動運転に対応したトラクターを販売しています。従来のトラクターは、移動基地局を設置する必要があり、導入のネックとなっていました。無人トラクターの場合、単体で自動運転ができるため、移動基地局は必要ありません。ただし、導入コストは高く、1000万円を超えるものが多くあります。無人トラクター以外にもコンバインや田植機も存在します。
自動収穫機
自動収穫機は「自走式」「ドローン式」「吊り下げ式」の3つが実用化されていますが、AI搭載型の収穫機も注目されています。農地によっては、自走式の収穫期が地形に対応できなかったり、ドローンを飛ばせないエリアである可能性もあります。AIを搭載することで、地形に影響されずに収穫でき、収穫量や人件費の削減が見込めます。

まとめ
今回はスマート農業とはどのような取り組みなのか、その目的や代表的な取り組み、実際に使用される機器について解説しました。スマート農業は様々な技術を取り入れることで実現しています。導入までのハードルは決して低くはないですが、少しずつ取り組むことが重要です。