
デジタル化が進んでいる現代で、波に乗り遅れないように、自社でもデータ活用を進めていきたいと考えている方は多くいるのではないでしょうか?インターネットが普及し、誰でも簡単に情報を入手できるようになった現代において、ビジネスにデータを活用するのはもはや必須です。近年では、経済産業省がDXの推進を加速させていることもあって、データ活用の取り組みがより活発になっています。しかしながら、データ活用をどのように進めていけばよいか、分からないという方も多くいるのではないでしょうか?
そこで今回は、データ活用のメリットと進め方、押さえるべきポイントについて解説します。この記事を読めば、どのようにデータ活用を進めればよいのか分かるようになりますよ。
データ活用とは
データ活用とは社内外で蓄積されている膨大なデータを、売上の向上や業務の効率化をするために活用し、ビジネスを成功に導くまでの過程です。インターネットやスマホが普及した現代では、消費者はいつでも気軽に情報にアクセスできるようになりました。これまで情報を発信していたのは企業だけでしたが、インターネットやSNSなどの普及に伴って個人でも発信できるようになっています。
今までよりも多くの情報を入手できるようになったため、消費者のニーズは多様化しており、従来のような経験や勘に頼る経営戦略では捉えきれません。市場の動きもIT化によって加速しているので、意思決定に時間がかかっていると、あっという間に時代遅れになってしまうでしょう。消費者の多様化したニーズに素早く対応するには、顧客データや売上データなどの情報を収集・分析して、活用していく必要があります。企業に蓄積されているデータには数字や記号といった、客観的な事実が記載されているので、経験や勘に頼らない根拠のある意思決定を行うことが可能です。加速している市場と多様化している顧客のニーズに対応して、売上の向上と戦略の立案に繋げていくためには、効果的なデータ活用が欠かせません。
日本におけるデータ活用の現状
現代の経営戦略に必要不可欠とされるデータ活用ですが、日本においては欧米諸国やアジア先進諸国と比べて、導入が進んでいないというのが現状です。ガートナージャパンが2020年11月に行った調査によると、回答した企業の60%以上がデータ利活用に対して課題意識を持っており、意識や関心は高いことが分かります。しかし、データ利活用によってビジネス成果を得られたと回答している企業の割合は2018年から一進一退の状況が続いており、十分なビジネス成果を得られていません。
日本でデータ活用が進んでいない原因として考えられるのが、
- データ活用に対する理解不足
- データやリテラシーの不足
- データを活用できるスキルや人材の不足
などが挙げられるでしょう。
ガートナージャパンの調査でも、スキル・人員の不足やデータ・リテラシーの不足を、半数以上の企業が阻害要因として挙げていました。データ活用に精通している人材はIT業界全体の人材不足もあって、確保するのが難しいのが現状です。外部のパートナー企業を頼るにしても、選定や委託に時間がかかってしまうという課題もあります。仮に人材を確保できたとしても、現場や経営層の理解不足によって、分析したデータが有効活用されないというケースも多いです。以上のような理由によって、なかなかデータ活用が進んでいないのが日本の現状となっています。
データ活用とデータ分析の違い
データ活用とデータ分析とでは、何のためにデータを使うのか、目的が異なります。
まず、データ分析はデータ活用に必要な情報を抽出することが目的です。データはそのままだと、ただの数字の寄せ集めでしかないので、分析して情報を得やすくするためにはデータを加工しなければなりません。それぞれのデータを組み合わせて分析を行い、規則性や異常値、相関・因果関係などを探ることで、単体では意味をなさないデータが意味を持つようになります。
対して、データ活用はデータ分析で出た結果に基づいて、必要なアクションを起こしてビジネスに役立てることが目的です。分析結果を使ってどのように課題や目標を達成するのかを考えなければならないので、データ活用を始める前には、データを用いる目的を明確にしておく必要があります。分析で得られたヒントを基に戦略やアクションを起こし、効果の検証を行う一連の流れを繰り返し行ってデータを蓄積していくことで、より戦略が効果的になるのです。つまり、データ分析はデータ活用を効果的にするための、ベースであるといえます。
また、データ分析では統計学といった数字を加工するためのスキルが求められるのに対し、データ活用では実務経験やマーケティングが求められるという違いも挙げられるでしょう。
データ活用を行うメリット

データ活用をビジネスに導入していくうえでのメリットとして、次のような点が挙げられます。
- 現状把握
- 迅速な経営判断
- 新しいチャンスの発見
消費者が容易に情報を入手できるようになり、ニーズが多様化している市場の変化に対応していくためには、社内外に蓄積されているデータを有効に活用していく必要があります。
従来の経験や勘に頼った経営戦略だと、変化が激しい市場に対応することができずに、おいていかれかねません。データを有効活用できれば、新規ビジネスを起こして収益を増やしたり、業務を最適化してコストの削減を実現できるでしょう。今やIT人材を確保している大企業はもちろん、中小企業もデータを活用して組織改革やサービスの改革に取り組んでいます。データ活用を効果的にするためには、データ活用を行うメリットを把握しておく必要があるでしょう。
次に、ビジネスの場でデータ活用を行うメリットについてそれぞれ解説しますので、参考にしてみてください。
現状把握に役立つ
社内外に蓄積されているデータを収集・分析することで、自社や市場などの市場動向の現状を把握できるようになります。課題を解決し目標を達成する的確な経営戦略を立てるには、自社の現状を把握しておくことが大切です。
例えば、下がっている売上を回復させたい時に自社の現状を把握できていないと、原因が分からず的外れな施策を実行してしまいかねません。社内外に蓄積されているデータは客観的な事実を示しているので、活用することで経験や勘といった不確定な物差しに頼らない分析が可能です。売上データや顧客データを数値やグラフに変換して見える化することで、迅速に現状を把握できるようになり、的確な原因究明ができるようになります。
経営判断が迅速に行える
経営判断の意思決定にデータを活用することで、根拠に基づいた決定をスピード感を持って行えるようになります。インターネットの普及などにより、消費者のニーズが多様化しており、市場の変化は激しいです。市場の変化に対応するには迅速な経営判断が必要ですが、従来のような経験や勘に頼った意思決定では追いつかないでしょう。個人の感覚に頼った意思決定では多くの人とすり合わせる必要があるほか、周囲と認識を共有するのに時間がかかってしまいます。仮に意思決定にまでこぎつけたとしても、ニーズが多様化している現代においては、既に時代遅れとなっていて失敗してしまうケースも多いです。対して、データを活用した意思決定であれば、根拠に基づいて意思決定を行うことができます。具体的なデータを基にした根拠があるので、周囲とも認識を共有しやすくなり、スピード感を持った経営判断が実現するでしょう。
また、データを用いた意思決定であれば、将来的に経営判断の意思決定が正しかったかどうかの検証も容易になります。経営判断の評価を適切に行えるようになれば、今後の経営判断の質がより向上していくでしょう。
新しいチャンスに気づける
社内外に蓄積されたデータを分析し、活用を進めていく中で、今まで気付いていなかった新しいビジネスチャンスにも気付けるようになります。新しいビジネスチャンスを見つけるには土台となる材料が必要です。データには新しいビジネスチャンスを見つけるためのヒントが多く隠されているので、新たな戦略の土台として効果的です。単体では意味をなさないデータであっても、複数のデータと組み合わせて分析を行うことで、今まで気づいていなかったビジネスの課題やアイデアを発見できます。社内だけでなく、国などの公共機関が公表しているデータも活用すれば、より効果的な分析が可能です。人の手では難しいデータ同士の関係性も、ツールを活用すれば簡単に行えるので、人力だけでは気付かない課題やニーズも発見できるでしょう。
データ活用の進め方

企業でデータを活用していくには、次のような手順で進めていくとよいでしょう。
- データ収集
- データ整理
- データ分析
- データ活用
いざデータ活用をビジネスに導入しようとしても、どのように活用を進めていけばよいのか分からない方も多くいるでしょう。最近では、データ処理や可視化を助けてくれるツールが一般的になっているので、専門家がいなくてもある程度活用を進められるようになっています。
しかし、ツールはあくまでもサポートなので、活用までの流れを理解していないと効果的にデータを活用できないでしょう。データを有効に利用するために、まずはデータ活用するまでの流れを理解しておくことが大切です。
次に、データの収集から活用までの流れについて解説します。
1.データを集める
まずは、課題の解決や目的の達成のために必要となるデータを決めて、収集していきます。データを収集していく方法は大きく分けて、次の2種類です。
- 自社で収集する
- 他社のデータを利用する
自社でデータを収集していくには、部署や部門ごとに点在しているデータを、集約できるシステムをが必要となります。
例えば、リード獲得までのデータはマーケティング部門、顧客データはカスタマーサポートといったように点在しているケースが多いでしょう。点在しているデータを1箇所にまとめることで、分析がしやすくなるのです。ただし、企業によっては必要なデータが、そもそも収集されていないというケースもあります。必要なデータがないと正確な分析ができないので、部署や部門の協力を仰いで、データを収集できる仕組みを構築する必要があるでしょう。
また、自社で収集できないブランドイメージなどのデータに関しては、外部のデータを利用する必要があります。外部のデータを利用する場合、一般的にはマーケティング会社や調査会社に、データ収集を依頼することになるでしょう。最近では、マーケットプレイス経由で取引・利用できるセカンドパーティデータの活用も進んでいます。
2.データを整理する
収集したデータはそのままだと分析しにくいので、データクレンジングという作業できれいに整理する必要があります。データクレンジングとはデータベース内のデータの中から、表記ゆれのあるデータや誤記を探し出して、一定の基準で修正して最適化する作業です。データベース上のデータが記入ミスや管理ミスなどによって散らばったままだと、分析の質が低下してしまいます。例えば、名簿データに記入されているアルファベットが全角か半角かで統一されていないと、分析を行う時に手間となってしまうのです。
また、株式会社の表記方法がそれぞれの会社で異なっていたり、区切り文字が異なっていると、正確な分析が行えません。データクレンジングを行う際には、数値は半角に統一する、株式会社の表記は(株)に統一するといった一定の基準を決めることが大切です。分析する目的に応じて使いやすくなるように、データクレンジングを行いましょう。
また、データクレンジングを実施したデータは目的に合わせて、各リストに分けるなどして整理しておきます。必要な場所にデータを振り分けて整理しておけば、分析の際に使いやすくなるでしょう。
3.データを分析する
データの整理ができたなら、いよいよデータ分析に取り組んでいきます。データ分析と一口に言っても、手法によって得られる情報が異なるので、効果を最大限発揮させるには、分析手法の特性を理解しておくことが大切です。目的に応じて最適な手法を選ぶようにしましょう。分析手法によって得られる分析結果が異なるので、分析の種類や手法を理解せずに活用してしまうと、得られる効果が薄れたり限定的な効果に留まってしまうでしょう。適切な仮説を立てた上で分析を行うことで適切な結果を得られるほか、無駄な分析を避けられるので、業務の効率化にも繋がっていきます。
また、偏見のない分析を行うために、データの分析に特化したチームを用意しておくのもよいでしょう。同じデータであっても、誰が見るかによって解釈が異なってしまうので、正確な分析には客観的な視点が必要です。例えば、マーケティングの担当者のみで分析を行うと、売上が上がらない原因をマーケティング部門ではなくカスタマーサポートにあると解釈する可能性があります。このようなことから、データの分析には外部のパートナーと組むといった対策を打つ必要があるでしょう。
4.データを活用する
データを分析した結果、見えてきた課題をどのように解決するのか、データを活用して施策や戦略を提案していきます。データ分析によって掴んだ傾向を基に、いつどの顧客にどのようなアプローチを行えば成果が出るのか、検討・実施していきましょう。例えば、売上を伸ばしていくために売れ筋の商品を多く取り寄せて、死に筋の商品の入荷を抑えるといった戦略が考えられます。ただし、データを活用し、施策を立てたからといって、必ずしも課題解決や目標達成に繋がる成果を上げられるとは限りません。施策を実行した後に、設定した目標をどれくらい達成したのかを、データを基に検証しましょう成功していたのなら成功できた理由は何か、失敗していたのなら失敗した原因は何か、それぞれ社内で議論を行って次の施策に繋げていくことが大切です。
データ活用を成功させるための3つのポイント

ビジネスにおけるデータ活用を成功させるためには、次の3つのポイントを押さえておきましょう。
- データ活用を社内に浸透させる
- 必要な時に活用できる仕組みを整える
- データ活用人材を評価できる体制を用意する
1.データ活用を社内に浸透させる
データ活用で成果を上げるためには、まずデータを活用して意思決定をする文化を、組織や社内全体に浸透させる必要があります。データは活用しなければただの数字でしかなく、蓄積しているだけでは意味がありません。データを使って業務を改善したり、新しい施策を考えようとする意識を従業員に持たせなければ、一向にデータ活用は進んでいかないでしょう。
また、データの活用で成功するには複数の部署での連携が必須なので、社内全体にデータ活用の文化を浸透させなければなりません。データ活用を社内全体に浸透させるには、経営層が自らデータ活用戦略に積極的に参加することが重要です。データ活用は重要度が高い一方で、すぐに成果が出ない戦略なので、支援がなければ後回しにされて立ち消えになってしまいます。経営層がデータ活用を理解して継続的に推進していけば、社内全体の意識は変わっていくでしょう。
2.必要なデータを必要なときに活用できる仕組みを整える
業務でデータが必要になった時に、必要なデータが入手できる仕組みを整えておく必要があります。いざデータを業務で使おうと思っても、欲しいデータが手に入るまで時間がかかるとなれば、使わなくてもよいと考えてしまう人が出てきてしまうでしょう。データ活用が面倒であるという雰囲気ができてしまうと、組織内でデータ活用が活発になりません。データ活用を促進させるには、必要なデータが必要な時に手に入る仕組みを整える必要があるのです。データを活用できる仕組みの1例として、データプラットフォームが挙げられます。データプラットフォームとはデータの集積から加工、分析まで一貫して行えるようにする機能の集合体です。データプラットフォームを導入できれば、データの分析をしたい時にすぐに作業に取り掛かれるほか、会社内で横断したデータ分析が可能となります。
しかし、データプラットフォームを導入するには専門的な知識やノウハウが必要となるので、自社に人材がいなければコンサルティング会社などに依頼する必要があるでしょう。
3.データ活用人材を確保・育成・評価できる体制を用意する
長期的にデータ活用に取り組んでいくために、データ活用人材を確保・育成し、適切に評価できる体制を用意する必要があります。データ活用は一朝一夕で終わらず長期間にわたるので、その場しのぎで人材を雇うのではなく、データを扱う専門の人材として常に会社に在籍させることが大切です。専門の人材を配置するということは、データ活用に対する会社の本気度の表れでもあるので、社内の意思統一やモチベーションの向上にも繋がるでしょう。専門のチームを結成すれば、データ活用を推進する取り組みに専念できるので、途中離脱の防止も可能です。
また、データ活用の成果が出るまでには時間がかかるので、成果が出ていないとして早々に評価を下してしまうとモチベーションが低下してしまいます。データ活用人材を適切に評価するために、達成基準を設けた人事評価にするなど、新たな評価軸が必要となるでしょう。
まとめ
データ活用を行うメリットや、進め方について解説しました。インターネットが普及し、膨大なデータを集められるようになった現代において、データを活用できるかどうかが企業の将来を左右するのは間違いありません。データ活用を積極的に進めていけば、経営判断を迅速に行えたり、新たなビジネスチャンスを素早く掴めるようになるでしょう。ぜひ会社全体で、データ活用に積極的に取り組んでみてください。