
日本は世界の先進国の中でも高齢化が特に急速に進んでいる国です。統計上2035年には、人口の3人に1人は高齢者になることが予測されています。若い世代と比べて、高齢者は健康状態が悪化しやすい傾向があります。ヘルスケアは、日本が抱えている緊急の課題です。ビッグデータを収集して分析する技術が発展してから、ヘルスケアに応用する動きも増えてきました。ビッグデータをヘルスケアに活用すれば、人々の健康状態を良好に維持することができます。日本の医療費の削減にもつながります。
この記事では、ビッグデータによるヘルスケアの方法を解説します。
ヘルスケアには3つの段階がある
ヘルスケアには主に3つの段階があり、それぞれに対策をする必要があります。
- 病気を予防する段階
- 病気を発症してしまった段階
- 治療をした後の経過を確認する段階
段階によって対応の方法は異なるので、ヘルスケアを段階ごとに解説します。
1.病気を予防する段階
ヘルスケアの1番目の段階は、病気の予防段階です。病気を予防しておけば、多くの重病を避けられます。日本人の死因となる原因である糖尿病や動脈硬化などは、生活習慣病と呼ばれています。生活習慣病の予防は、日々の生活習慣を整えることで可能です。食事習慣の変更や、適度な運動を取り入れることで健康状態を維持できます。病気の予防をしておけば、大きな病気にかかる可能性を低くできます。誰もが健康に生活して、人生の質を高めて行きたいものです。
2.病気を発症してしまった段階
ヘルスケアの2段階目は、病気を発症してしまった段階です。生活習慣に気を付けていたとしても、かかってしまうのが病気です。病気を発症した段階では、病院に行く必要があります。医師の診断によって、病気が特定されて対応療法が決定します。重い病気だと診断された場合には、手術をすることもありますし、処方箋療法によって経過を観察することもあります。内服薬の処方によって治療する場合は、医師の判断によって症状に適した薬が処方されます。
3.治療をした後の経過を確認する段階
ヘルスケアの3段階目は、病気の治療後に経過を観察する段階です。医師の診断によって、手術や処方箋によって病気の治療をしても、治療後には再発のリスクがあります。また、病気による後遺症が残る場合もあります。そのため、治療後でも回復の経過をきちんと看ていかなければいけません。患者側は医師の判断に基づいて、処方された薬も期間内は使用する必要があります。ヘルスケアの第3段階は、治療後の完全に治癒した状態になるまでの期間に、何らかの副作用や再発が起きないか確認します。
ビッグデータがヘルスケアに貢献している具体例の紹介
ヘルスケアの3つの段階を解説したところで、ビッグデータがこれらの段階にどのように貢献できるのか見ていきましょう。ビッグデータは、ヘルスケアの分野ですでに活用されています。ここからは、ビッグデータ活用の具体的な例を紹介します。
病気の予防段階での活用例
疾病予防や生活習慣病の予防方法と初期症状の兆候を把握する際にビッグデータは活用されています。。大きな疾病になってしまうガンのような病気も、初期状態では気づくことが難しい場合もあります。ビッグデータを分析すれば、個人情報は伏せた形で、過去の健康診断データを分析し、見過ごしてしまいそうな疾病の初期症状も発見できるようになります。ビッグデータの分析結果の共有を幅広く医療や福祉施設に広げれば、病気の発症 を見逃すことも少なくなります。
病気の治療段階での活用例
病気の治療段階でもビッグデータは活用されています。専門の医師でも見逃してしまいそうな小さな病気の兆候も、AIにCT画像などの医療ビッグデータを読み込ませることによって分析できます。患者一人ひとりの診断を主治医だけに任せずに、データ分析と照らし合せることで最適な治療法を選択します。人間とテクノロジーが協力する事で、人為的な診断ミスのリスクも大幅に減らせます。病院内で細かく分かれている診療科間で情報を共有すれば、併発している病気にも対応可能です。
治療後の経過観察での活用例
治療後の経過観察でもビッグデータは活用されています。手書きだったカルテに電子診療情報を導入することにより、調剤業務を効率化させます。治療後の回復経過も電子カルテで保存しておくことで、回復の経過を把握できます。経過観察期間中に再発が起きた場合でも、迅速で適切な対応も取れるようになります。また、これまでの臨床試験のデータを匿名で公開することにより、創薬にも役立てられています。適切な処方箋が適切なタイミングで処方されれば、治療後の再発リスクも削減できます。
ビッグデータはヘルスケアだけでなく医療費も削減する
ビッグデータは個人のヘルスケアに貢献するだけではなく、医療費の削減にも貢献します。少子高齢化の問題は、医療費コストの問題も議論として挙げられます。
ビッグデータが医療費コストを削減できる主な理由は以下の3つです。
- 人々の健康が保たれていれば医療費も削減される
- ビッグデータ×AIで医療従事者をサポート
- 病気の早期発見によって手術の負担を無くす
それぞれ詳しく解説していきます。
人々の健康が保たれていれば医療費も削減される
当たり前のことですが、人々の健康が保たれていれば医療の必要性は少なくなります。高齢化の問題の一つは、病気になりがちな高齢者が病院を利用する回数が多くなり医療費が増えてしまう点です。身体接触型のデバイスを活用したビッグデータの収集と分析によって、一人ひとりの健康状態が分かれば、個人に合った適切で迅速な対応が可能です。その結果、国民全体の健康促進につながり、病院に行く人も少なくなり医療費を削減できます。
ビッグデータ×AIで医療従事者をサポート
ビッグデータとAIを掛け合わせることによって、専門医でも把握しきれない症例をデータとして保存しておけます。医療の技術や知見は日々進化していて、新しい論文や症例は日々更新されます。多忙な医師個人では、全ての情報を把握しきることは難しいです。医師による診断とビッグデータで保存されているデータ、そして、AIによる分析結果を照らし合わせれば適切な診断もできます。医療従事者の仕事負担を減らすことで、医療費の削減に繋がります。
病気の早期発見によって手術の回数を削減する
ビッグデータは病気の早期発見によって、手術数の回数を削減します。ビッグデータは病気の早期発見によって、医療コストのかかる大きな手術の回数を少なくします。病気の早期発見による治療は、医療従事者の負担も減らします。そのため、多忙のため手の回らなかった患者に対しても適切な医療を提供できます。病気の初期段階で対応できる患者の数が増えるため、さらに重症化する患者が少なくなります。
膨大なビッグデータを分析するのは難しい
医療にビッグデータを導入するには、課題があります。AIにビッグデータを読ませるにしても、カルテのデータを照らし合わせるにも、膨大なデータの場合は処理が難しいです。膨大な量のビッグデータから有用なデータを取り出し、不要なデータを切り捨てる必要があるからです。つまり、スクレイピング(クローリング)段階には手間と時間がかかってしまいます。医療にビッグデータを活かすためには、手間のかかる作業を委託して医療体制をスムーズにする必要があるでしょう。
まとめ
ビッグデータはヘルスケアにも貢献できます。すでに実際に活用されている例はあります。少子高齢化が進む日本で、ヘルスケアは大事な問題です。ヘルスケアをきちんとしていれば、QOL(人生の質)を高めていくことも可能です。ヘルスケアには3つの段階があり、それぞれにビッグデータの活用方法は異なります。病気の予防段階では、過去のビッグデータ分析から、疾病の原因を早期に発見します。
また病気の治療の段階では、医師の診断を助けるためにビッグデータが利用されています。創薬にも過去のビッグデータを分析することで役立てられています。ヘルスケアが浸透していけば、健康を維持できる人も多くなり病院への負担が少なくなり医療費のコストも削減されます。ただし、医療の分野でビッグデータを扱う場合には、スクレイピング(クローリング)部分に手間がかかってしまいます。スクレイピング(クローリング)部分は専門の会社に委託して、ヘルスケアに直接かかわるデータの分析に集中しましょう。ヘルスケアが浸透すれば、人々の人生の質を高めることにもつながります。