
近年、マーケティングに欠かせないといわれるグロースハックは、グロースハックを専門的に行うグロースハッカーという職業をうみだすほど重要性が高まっています。いったいグロースハックとは何なのでしょうか?
本記事ではグロースハックの概念とその特徴、成功事例までご紹介します。
グロースハックとは
グロースハックとは、ユーザーの声や市場、製品価値を徹底的に分析・検証し、継続的にマーケティング改善を続けることで製品やサービスを短期間で成長に結び付けていくことをいいます。
そのため、グロースハックを専門的に行うグロースハッカーはマーケティングだけではなく、製品やサービス開発のことも考えて行く必要があります。
グロースハックと従来のマーケティングとの違い
グロースハックとマーケティングの仕事は同じではないか?と思われがちです。確かに、マーケティングで行っていることをグロースハックでも行います。しかし厳密にはその目的から違ってきます。
マーケティングは分析や検証を行いすでにある商品をいかにターゲットに訴求し、「売れる仕組み」をつくるかを目的にしています。一方グロースハックは、売れる仕組みをつくるだけではなく、「製品やサービスの開発面から企業を成長させる仕組み」をつくることを目的としています。
マーケティングが「今」売れる仕組みづくりを目指すのに対し、グロースハックは「10年後の未来」も見据えた仕組みづくりが大切です。
また、従来のマーケティングは完成された商品があるうえで予算をかけてマーケティングを行っていくのに対し、グロースハックはユーザーの反応を見ながら継続的に施策と改善を行うので、先だって予算をかけないで始めていきます。継続的、といっても時間をたくさんかけて行うわけではありません。施策と改善のサイクルを短くし、短期間で製品やサービスを成長させていくことが目的なので、グロースハックにはマーケティングよりもスピード感が求められます。
グロースハックのフレームワーク
グロースハックを考える際によく用いられる「AARRR」、別名「スタートアップ・メトリクスモデル」というその名の通りスタートアップ企業を成長させるために考えられたフレームワークがあります。
AARRR
- Acquisition(ユーザー獲得)
新規ユーザー獲得のため、ユーザーに認知してもらう段階です。Web上にあるサービスであれば、PV数、資料ダウンロード数、広告クリック数、などが指標となります。施策としては広告の最適化などがあります。 - Activation(ユーザー活性化)
認知してもらったユーザーに、実際にサービスを利用してもらう段階です。Webサイトに訪問したユーザーが新規登録してもらえるよう、新規登録数を指標にし、ダウンロードできる資料の最適化やユーザビリティを上げるなどの施策を行います。 - Retention(ユーザーの利用継続)
登録してもらったユーザーに継続的に利用してもらう、もしくは休眠していたユーザーに再度サービスを利用してもらう段階です。再訪問率やリピーターのセッション時間などを指標にし、施策として継続ユーザーへの特典、カスタマーサポート、プッシュ通知などをします。 - Referral(ユーザー紹介)
継続利用してくれているユーザーが、口コミやSNSなどでサービスを紹介し、新規ユーザーを獲得する段階です。口コミ数やツイート数などを指標とし、既存顧客の満足度を高めるのはもちろん、紹介インセンティブ制度やシェアキャンペーンなど、紹介したくなる仕組みづくりを施策とします。 - Revenue(収益化)
継続ユーザーに有料サービスを使ってもらう段階です。1ユーザーあたりの収益、金額に関わらず収益に至った割合、登録から一定期間内に収益になる行動をしたユーザーの割合を指標とします。1〜4までの施策は収益を最大化するための施策であり、これらをサイクル化し、最適化させることが大切です。
Product Market Fit
「AARRR」を行う前に、「Product Market Fit」という概念が重要になってきます。Product Market Fitとは言葉どおり、その製品やサービスが市場に合っているかどうか、ということです。どんなに素晴らしい製品やサービスであったとしても、市場に合っていなければ意味はなく、成果を上げることはできないでしょう。つまり、グロースハックを行ううえでも市場調査、サービスに対する市場の根本的な理解は欠かせません。
グロースハックの成功事例
Dropbox
オンラインストレージサービスのDropboxはトップ画像の変更、登録フォームの最適化、使用までの遷移の最適化などのユーザビリティを高めました。また、「紹介インセンティブ」としてDropboxを紹介すると1ユーザーにつき500MB、最大で16GBまでもらえるキャンペーンや、SNSと連携することで100MBプレゼント、という施策を行いました。その結果、Dropboxは2008年のサービス開始から2013年には約1.8億人、2014年には3億人、2015年には4億人ものユーザーを獲得し、急成長しました。
Twitterは今や世界的SNSとして有名ですが、開始当初は獲得したユーザーの利用継続に悩まされていました。そこでTwitterは自社のユーザーデータを分析し、長期ユーザーになるための条件が「開始初日に5人以上フォローをしている」ことを発見しました。そこでTwitterは登録直後にフォローをするよう促すステップを入れ、その施策を洗練させていくことでユーザーの継続率を増やしていくことに成功しました。
Airbnb
世界最大級の民泊プラットフォームであるAirbnbは訪問者数を増やすために広告費をかけないグロースハックに取り組みました。具体的には、Airbnbで投稿をCrigslistというアメリカ大手の地方情報コミュニティサイトに自動投稿させる仕組みをつくることで、Crigslistに多くの投稿が表示され、そこから膨大なユーザーを獲得することができました。
グロースハックをはじめるポイント
どんなデータが必要か明確にする
グロースハックを成功させるには「AARRR」のステップでもわかるとおり、常に指標を持ち、その指標から施策を考えるためのデータ分析が欠かせません。どのようなデータが、どんなステップで必要かを明確にすることがグロースハックをはじめる上で大切といえます。また、「AARRR」の前に「Product Market Fit」の概念を持ち、市場調査、顧客分析、サービス調査が重要となってきます。これらの調査、分析を素早く行うために自社アンケートなどで時間をかけていては素早さが大切なグロースハックには適していません。SNSや口コミなど今すぐ確認できるWeb情報を活用して調査、分析を行うとよいでしょう。
プロダクト設計、分析力、マーケティング力、アイデア力全てが必要
グロースハックはマーケティングだけではなく、データ分析、製品開発、デザイン、全てを同時期に素早く行う必要があります。一人で全ての能力を持つことは難しいため、グロースハックチームにはそれぞれの高い能力を持つ人が配置される必要があります。これらの人材が全て社内で整わない場合は素早く対応してくれる外注を探し、利用することを考えるのもひとつの手でしょう。
データ活用が推進される今、新規サービスや既存サービスの競争にグロースハックという考え方はどんどん普及していくでしょう。まずはグロースハックを始める第一歩として、市場や顧客のことがわかるデータ収集、分析をしてみてはいかがでしょうか。