可視化とは?見える化との違いと活用術
自社の業務を効率的にして改善するために、可視化に関心を持っている方はいませんか?働き方改革の推進などの影響で、生産の現場だけでなく営業や経営状態についても、可視化の必要性が訴えられています。業務の可視化を適切に行えば、これまで煩雑で明らかでなかった業務が明確になり、業務の効率化によって会社の業績も向上していきます。
しかし、業務の可視化という言葉を聞いたとはあっても、どうすればよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、可視化の概要と実施するメリットなどについて詳しく解説します。合わせて、混同されやすい見える化との違いや可視化を成功させるポイントもご紹介。
この記事を読めば、自社のデータを適切に可視化できるようになりますよ。
「可視化」と「見える化」とは?
可視化や見える化とは主に企業活動において、これまで見えない状態だった業務プロセスの実態などを、図表を用いて視覚的に分かりやすくすることを指します。
人手不足を背景に社員1人1人の負担が大きくなっていることが多く、煩雑になってしまった業務を俯瞰して見ることが難しくなっていました。今まで中身が分からず、ブラックボックスのような状態になっていた業務内容や進行状況を可視化・見える化することで、業務における課題に気付きやすくなります。業務の問題点を共有できれば、改善に向けた対策も効率的かつ効果的に実施できるでしょう。
可視化と見える化はともに同じような意味で使われることが多いですが、ビジネスの現場においては異なる意味を持っているのです。次に、見える化の起源についてと、可視化と見える化の違いについて解説します。
「見える化」は「トヨタ自動車」が起源だった
見える化という表現が初めて登場したのは、トヨタ自動車株式会社の岡本渉氏が1988年に発表した「生産保全活動の実態の見える化」という論文です。見える化の原点が生産ライン上に設置された「あんどん」と呼ばれるランプで、ライン上で異常が発生した際に点灯し、作業員全員に異常の発生を見えるようにしました。また、発生した異常の種類別に色分けすることで、どのような異常が発生したのかも素早く判断できるようになっているのです。
トヨタの生産現場で生まれた見える化という考え方によって生産性が大きく向上し、現在では生産現場だけにとどまらず、ビジネス分野全般で見える化が使われるようになりました。トヨタの見える化は問題発生から対処までの短いスパンで発生するものでしたが、近年ではAIやIoTを用いた、より複雑な見える化も登場しています。
「可視化」と「見える化」は意味が違う
見えないものを見えるようにする効果を持つ可視化と見える化ですが、ビジネスの現場においては、どのタイミングで見えるようになるのかで意味が異なります。
それぞれの違いを簡単に説明したのが次の通りです。
- 可視化:具体的なデータを見たい時にのみ見える状態にすること
- 見える化:抽象的なデータを常に見える状態にすること
可視化された情報は、見たい人が見たい時にのみ閲覧できるようになり、目的に応じて利用しやすくなります。従業員の稼働時間や営業成績など、店舗経営者が知るべき具体的なデータに対して用いられているケースが多いです。
対して見える化は、従業員のモチベーションやスキルといった抽象的なデータなどが、いつでも確認できるような状態を指しています。見える化を行うことで情報共有をスムーズに行えたり、異常に対して素早く気付けるといった利点を得られるでしょう。また、可視化が幅広い分野で用いられているのに対し、見える化は企業活動などで使われれることが多いという違いもあります。

可視化を進めることのメリット
業務の可視化を進めることで得られるメリットとして、次のようなポイントが挙げられます。
- 業務全体の把握
- 課題に対する意識改革
- 業務の標準化
業務の可視化を進めていけば、業務を効率的に行えるようになるほか、企業の業績向上にも繋がっていくでしょう。
また、可視化によって課題点も客観的に捉えられるようになるので、意識改革にも効果的です。可視化によって業務を改善するためには、可視化によるメリットをしっかりと把握しておくことが重要です。
次にそれぞれのメリットについて詳しく解説しますので、ご覧ください。
業務の全体図を理解・把握しやすい
業務の上流から下流まで可視化を行うことで、自社の業務がどのように機能しているのか全体図を把握しやすくなります。一部の業務だけではなく、業務全体を把握できるように横断的に可視化を行うことで、現状を認識できるようになるのです。自分の担当している業務だけでなく全体を把握できるようになるので、大きな視点から業務の流れを捉えられるようになります。全体の業務の流れを把握できるようになれば、トラブルの早期発見と解決が可能です。業務の流れを可視化することでリアルタイムで進捗状況を把握できるようになり、どの時点でトラブルが発生してしまったのか迅速に発見できます。
また、可視化によって発生したトラブルの早期発見だけでなく、今までブラックボックスとなっていた業務上の問題点も迅速に見つけられるでしょう。トラブルや問題をを早期発見して対処できれば、問題によって考えられる被害を最小限に留めて、改善に向けて素早く取り掛かれるようになります。
課題に対して社内全体の意識が変わる
会社全体の業務を可視化すると、従業員が客観的に自身の立ち位置を把握できるようになり、自社の業務や課題に対する意識が高まります。
会社の利益構造の中で自身がどのような貢献をしているのか把握できれば、会社の業務に参加しているという意識を持てるようになり、仕事のモチベーションも向上するでしょう。会社の売上データのような数字が可視化されれば、解決しなければならない課題もすぐに判別でき、従業員に課題を改善しようとする意識も生まれるはずです。
例えば、店舗の売上目標と現在の売上データが明らかになれば、達成すべき数字が見えてモチベーションが高まるでしょう。モチベーションが高まれば1人あたりの生産性が向上するほか、会社が抱えている課題解決にも積極的に参加するようになります。一部だけでなく会社全体で共通の意識を持って取り組むことが、課題解決には欠かせません。
難しい業務も誰でも対応可能にできる
業務の工程をマニュアル等で可視化すれば、属人化していた難しい業務であっても、誰でも作業を行えるようになります。
マニュアルが用意されていない業務の場合、同じ業務であっても1人1人異なる方法で行われているので、業務を行う人のスキルによって品質が違ってしまいます。業務の難易度が高いと、特定の高いスキルを負った従業員でなければ作業できない、属人化というリスクが発生してしまうのです。属人化が起きた業務は個人に依存しているため、欠員が出てしまえば業務効率が大幅に低下してしまいます。
業務のマニュアルを作成するなどして作業内容を可視化すれば、異動や退職などで欠員が出ても作業効率は安定するでしょう。また、高いスキルを持った人材の情報を共有できれば、より高効率な業務マニュアルとなります。マニュアルといった形で業務を可視化すれば、業務の引継ぎもスムーズに行えるようになるでしょう。

業務を可視化する3つのポイント
業務の可視化を行う上で押さえておくべきポイントは、次の3点です。
- 現状の把握
- 目的の共有と浸透
- 可視化ツールの活用
業務の可視化は現状を改善するために必要ですが、ただ単に必要だからと可視化を行っただけでは、十分に機能を発揮できないまま終わってしまいます。可視化はあくまでも目的を達成するために必要な手段であり、目標を設定せず可視化を行っても効果はありません。可視化を最大限に活かすには、現状をしっかりと把握した上で、目的を共有しておく必要があります。
次にご紹介するポイントをしっかりと押さえた上で業務の可視化を行えば、メリットを最大限得ることができ、業績の向上につなげられるでしょう。
①現状を把握する
部署同士の繋がりや最終的な目標を明確にして、自社が抱えている課題や問題が何かを明確にするために、まずは自社の現状を把握することが大切です。
社内で意見を出し合うなどによって現状を把握するのと同時に、自社の目指す姿はどのようなものかもしっかりと明確にしておきましょう。自社の目指す姿と現状とのギャップがそのまま、可視化によって解決すべき課題となります。現状抱えている課題を基に具体的な目標を設定すれば、目標達成に向けて必要となるものも明確になるでしょう。
また、現状の可視化を進めていけば、可視化のために必要となるコストも計算できるようになります。可視化を意識すると経営に関わるデータが全て可視化の対象に見えますが、むやみに可視化すると本当に重要なデータが隠れてしまいかねません。可視化するべきデータは設定した目標を達成するために、必要となるデータのみに絞りましょう。効率的な可視化の実施によって、目標達成に向けて本当に必要となる情報が明らかになるので、無駄なコストの削減に繋がります。
②可視化する目的の共有と浸透
社員全体が同じ方向を向いて業務改善に取り組めるように、可視化する目的を社内全体で共有しておく必要があります。
データの可視化はともすれば、従業員の行動を監視していると言う意図として捉えられかねません。自身の行動を監視されていると捉えられてしまうと、安心して業務に取り組めないとして、拒否反応を示される可能性があります。
また、ただ単に可視化された売上データや労働時間を掲示しているだけでは、従業員からしてみれば「もっと働け」という圧力に感じてしまうでしょう。従業員のモチベーションが下がってしまえば、作業効率がよくなるどころか下がってしまい、かえって業績が落ちてしまいます。データを可視化するのは労働の監視のためではなく、業務を改善するためであると認識してもらうためには、目的の共有を進めなければなりません。日頃から会社全体と目的などの情報を共有しておけば、従業員と信頼関係を築けるようになり、積極的に業務改善に参加してくれるようになるでしょう。
③可視化ツールを活用する
効率的に可視化を進めるには、可視化ツールの活用が欠かせません。
可視化ツールの利用によって、社内に蓄積されている膨大なデータを1ヶ所に集計し、分析した結果をグラフなどの直感的に理解しやすい見た目にできます。手作業で行うよりも素早く正確にデータを可視化できるので、意思決定のスピードと質を向上させられるようになるでしょう。
可視化ツールと一口に言っても、ツールごとに持っている機能が異なるので、
- 導入する目的
- 扱うデータ
- 活用する人材のスキル
などといった観点から目的に応じて選ぶのが大切です。自社に合った適切なツールを用いれば、効果的に業務の改善を行えるようになるでしょう。

可視化の意味を理解して、業務に活用してみよう
業務を可視化する上でのメリットと、見える化との違いなどについて解説しました。業務を可視化すれば会社全体の業務を把握できるようになり、会社で抱えている課題を明確にして、適切な業務の改善が可能になります。
また、可視化を効率的に行うには、自社の目的にあった可視化ツールの利用が欠かせません。例えば、可視化機能を備えた分析プラットフォームのtableauであれば、直感的な操作で簡単にデータの分析と可視化を行えます。
可視化の意味を正しく把握したうえで、業務の改善に役立ててみてください。