
「D2C」という言葉をご存知でしょうか。
「新しいビジネスモデルということは分かるものの、詳細まではちょっと……」
「おおよその意味は分かるけど、実はBtoCとの違いがよく分かっていない……」
この記事では、そんな方のために、
D2CとBtoCの違い
D2Cを成功させるためのポイント
D2Cとは
「Direct to Consumer(消費者直結)」の略語。
小売店や代理店を挟まず、さまざまなチャネルを通じて消費者に直接商品を提供するビジネスモデルのこと。
アパレルブランドや化粧品ブランドを中心に多く取り入れられている。
BtoC(Business to Consumer:企業-消費者間)が企業と消費者間の取り引き全般を指すのに対し、D2Cは提供元が「製造者(メーカー)」であるという点で大きく異なる。
製造者が消費者に直接商品を届けるビジネスモデル「D2C」。
その誕生は2010年頃と新しく、アメリカのアパレルブランドを中心に広がりを見せました。近年では多くのブランドがD2Cを取り入れていますが、その背景には「インターネットの普及・発達」があります。インターネット上のECサイトやSNSを通じ、製造者が消費者と直接コミュニケーションを取れる環境が整ったためです。このように、インターネットを通じて消費者と直接取り引きをするビジネスモデルを、特に「デジタルD2C」と呼称することもあります。
D2Cの現状
製造者、消費者どちらにも大きなメリットがあるD2C。売れるネット広告社の調査によると、2015年には1兆3,300億円だったデジタルD2Cの市場規模は年々右肩上がりの上昇を見せ、2019年には2兆300億円に到達。
2025年には3兆円規模を突破することが予想されています。
引用:『デジタルD2C市場は2025年に3兆円規模へ|ECのミカタ』
市場規模が示すとおり、年々盛り上がりを見せる「新しいビジネスモデル」D2C。従来のBtoCとは具体的に何が違うのでしょうか。
次の段落で分かりやすく解説します。
D2CとBtoCの違い
D2CとBtoCの最大の違いは、先にも述べたように「商品・サービスの販売を行うのが製造者(メーカー)自身であるかどうか」です。
D2Cの場合、販売者=製造者です。BtoCの場合、販売者は製造者以外(小売店や代理店など)です。たとえば、ある化粧品ブランドの商品をECサイトで購入したとします。Amazonや楽天といったECモールで購入した場合、ビジネスモデルは「BtoC」となります。化粧品ブランドと消費者の間にECモールが介在しているためです。
同じ商品を、今度は化粧品ブランドの自社ECから購入したとします。この場合のビジネスモデルは「D2C」となります。消費者が製造者である化粧品ブランドから直接商品を購入した形になるためです。
BtoC =製造者 ⇔ 中間業者(小売店など)⇔ 消費者
それでは、この違いがどのような特徴を生み出すのでしょうか。
BtoCと比べ、D2Cには大きく以下4つの特徴があります。
1. 顧客と直接接点を持つことができる
2. LTVを高めやすい傾向がある
3. 低価格販売やキャンペーンを行いやすい
4. 商品の販売チャネルはECサイトがメイン
顧客と直接接点を持つことができる
D2C最大の特徴は、製造者が顧客と直接接点を持つことができるという点です。
これにより、
- 自社商品を購入している消費者の属性や頻度といった購買情報
- 自社商品を購入している消費者の感想
などを製造者が直接把握することができるようになり、実際の消費者属性や頻度、ニーズなどに応じた商品企画を行いやすくなりました。
製造者が直接「製造者の思い」を消費者に届けることで、消費者の顧客ロイヤリティが向上し、製造者(ブランド)のファンになりやすいという特徴もあります。
LTVを高めやすい傾向がある
一般的に、D2CはBtoCよりもLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めやすいと言われています。
その理由は、大きく以下の3つに分けられます。
1. 製造者-消費者の直接コミュニケーションにより、消費者の顧客ロイヤリティが向上しやすい
2. 消費者のニーズをダイレクトに吸い上げることで、よりよい商品開発が可能になる
3. 多様なブランドの商品が選択肢にあるBtoCと違い、自社ブランドの商品のみを選択肢として提示できる
D2Cによって消費者が製造者(ブランド)のファンになり、LTVが高まる。
LTVが高まったことで収益性が向上し、製造者はファンに価値を還元しやすくなる。より大きな価値を得ることによって、ファンは一層ブランドのことが好きになって……と、D2Cにはこんな素敵な好循環を生み出す力もあるのです。
低価格販売やキャンペーンを行いやすい
小売店などの中間業者を挟むBtoCの場合、商品を流通させる過程でマージンが発生するため、そのぶん商品価格を高く設定しなければなりませんでした。
製造者から直接消費者に届けられるD2Cであれば、無駄な中間コストが生じないため、従来よりも安い価格で商品を提供することが可能になります。
また、キャンペーンやセールなどもすべて製造者の任意のタイミング・内容で行うことができるため、より消費者に即したサービスが展開できます。
商品の販売チャネルはECサイトがメイン
時々勘違いされるように「D2C=EC(通販)のみ」というわけではありませんが、D2Cの主な販売チャネルがECであることは確かです。ECは実店舗のように土地代や不動産の賃料、在庫管理コストなどがかかりませんし、D2Cで重要となるデジタルマーケティングとの相性も極めて良いためです。
そのため、D2Cのメインターゲットは「ミレニアル世代(1980~1990年代後半生まれ)」以降の若い世代が中心となります。ミレニアル世代以降の世代は幼いころからデジタル環境に慣れ親しんできたので、インターネットを通じた情報収集・商品購入への抵抗感が低いという特徴があります。

D2Cを成功させる4つのポイント
ここまでで、D2Cの基本や現状、これからの展望や、従来のビジネスモデル(BtoC)との違いについて説明してきました。D2Cのイメージはだいぶ掴めましたでしょうか?最後に、D2Cを成功させるためのポイントについて解説します。
大切なのは以下の4つです。
1. SNSを用いてファンとの交流やブランディングを行う
2. 顧客のフィードバックを商品に反映できる仕組みを構築する
3. 商品そのものだけでなく「価値観」や「顧客体験」を提供する
4. ECがメインの販売チャネルとなるため、データマーケティングに注力する
それぞれ順に見ていきましょう。
SNSを用いてファンとの交流やブランディングを行う
D2Cを成功させるうえで、SNSの活用は欠かすことができません。
事実、D2Cで成功している製造者のほとんどは、魅力的なSNS運用でファンと積極的なコミュニケーションをはかっています。
なぜD2CにはSNSが欠かせないのでしょうか。その理由は以下の4つです。
1. SNSとミレニアル世代は非常に親和性が高いから
2. SNSの投稿を通じて、D2Cの肝となる「ブランドの世界観」を発信できるから
3. SNSはファンの獲得・育成に最適なメディアだから
4. 製造者→消費者の一方向のコミュニケーションではなく、消費者のリアルな声も吸い上げられるから
まず、国内の主要SNSは、D2Cのメインターゲットであるミレニアル世代と非常に親和性が高いという特徴があります。そのため、ミレニアル世代に効率よく情報を届けることができます。
次に、製造者がいつでも自由にコンテンツを投稿できるSNSは、
- ブランドの世界観の発信
- ファンの獲得・育成
にも非常に役立ちます。
画像や動画といったコンテンツを駆使し、自社ブランドの世界観を魅力的に表現することができれば、自ずとファンは増えていきます。
消費者にとって有益なコンテンツを発信し続けることがファン化の一番の近道なので、
- ブランドの世界観を表した魅力的なコンテンツ
- 消費者が知りたいと思う情報を含んだコンテンツ
- 消費者が楽しめるようなコンテンツ
などをSNSで発信するようにしましょう。
最後の「製造者→消費者の一方向のコミュニケーションではなく、消費者のリアルな声も吸い上げられるから」については、次の段落で詳しく説明します。
顧客のフィードバックを商品に反映できる仕組みを構築する
SNSなどのインターネット上には「消費者のリアルな声」があふれています。
これまではインタビューやモニターなど、多大な時間や費用をかけて収集していた情報が、今ではインターネット上で簡単に手に入ってしまうのです。消費者のリアルな声が反映されたインターネット上のデータのことを「ビッグデータ」と言います。
ビッグデータは、専門のツールを用いればほとんど手間なく収集することができます。ツールによってはAIによる自動分析機能や、データサイエンティストによる詳細なデータ分析サービスが付属しており、ビッグデータから消費者のリアルな声を吸い上げることも可能です。
消費者のリアルな声を吸い上げ、自社商品のブラッシュアップに活かすためにも、ぜひビッグデータの収集分析ツールをご活用ください。

商品そのものだけでなく「価値観」や「顧客体験」を提供する
従来のBtoCが「商品の機能」を重視するのに対し、D2Cでは、「商品に付随する価値観・顧客体験」を重視する傾向にあります。ただ機能的なスーツケースを売るのではなく、「そのスーツケースと共にどんな旅を実現するのか」。
ただ発色のいい化粧品を売るのではなく、「その化粧品でどんな自分を実現するのか」。そうした価値観や顧客体験を提供し、消費者のライフスタイルを向上させること。それが、新しいビジネスモデル・D2Cに求められることなのです。
ECがメインの販売チャネルとなるため、データマーケティングに注力する
ECモールに出品すれば、ECモールそのものの利用者が自社商品に目を留めてくれる可能性があります。しかし、自社ECであればそうはいきません。まずは自社ECに集客するところから始めなければいけないのです。そのため、D2Cを取り入れる際には、デジタルマーケティングの活用が極めて重要となります。
また、データを詳細に可視化できるというデジタルマーケティングならではの魅力を活かし、
- どんなユーザーが自社ECに訪れているのか
- どんなユーザーが自社商品を購入してくれているのか
- 集客チャネルごとの効率はどうか
- リピートしてくれるユーザーと単品購入のユーザーの違いは何か
- 商品を購入してくれたユーザーのリアルな声
などを分析し、自社商品や集客方法のブラッシュアップを行っていくことが肝心です。
データマーケティングを行うには、先程ご紹介した「ビッグデータ」の分析が欠かせません。集客チャネルごとの効率や購入者属性といった定量的なデータだけでなく、ビッグデータから得られる「消費者の生の声」という定性的なデータも併せて分析することで、より消費者に沿ったマーケティングを展開できるようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、新しいビジネスモデル「D2C」について解説しました。
改めて重要なポイントをおさらいしておきましょう。
顧客と直接接点を持つことができる
LTVを高めやすい傾向がある
低価格販売やキャンペーンを行いやすい
商品の販売チャネルはECサイトがメイン
SNSを用いてファンとの交流やブランディングを行う
顧客のフィードバックを商品に反映できる仕組みを構築する
商品そのものだけでなく「価値観」や「顧客体験」を提供する
ECがメインの販売チャネルとなるため、データマーケティングに注力する
この記事が、あなたのD2Cの理解に役立ちましたら幸いです。