
働き方改革の一環として総務省が推進しているのは「在宅ワーク」です。
多くの企業に馴染みのないものでしたが、2020年4月7日新型コロナウイルス蔓延により緊急事態宣言が出されてから、全国で一気にその働き方が導入されはじめました。
しかし、未だに在宅ワークという働き方に不安を持っている企業も多いでしょう。
今回は在宅ワークの現状から、メリット・デメリット、また導入のポイントをお伝えします。
在宅ワークとは
在宅ワークとは、その名のとおり自宅で勤務をすることです。出社の必要がないため、理由があって自宅から離れることが難しい人でも働くことができる勤務形態です。
現在では豊富なチャットツールやWeb会議システムが普及されているので、オフィス勤務と同レベルの業務をこなすことが可能となってきました。同様に「テレワーク」という言葉も同義語で使われますが、テレワークは「情報通信技術(ICT)を活用した勤務形態」、場所や時間を問わない勤務を示し、「在宅ワーク」はテレワークの一種と言えます。
新型コロナの影響による在宅ワークの現状
実際、在宅ワークの実施率はどのくらいあるのでしょうか?
2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため首都圏を中心に緊急事態宣言が出されました。それにより、多くの企業が在宅ワークを導入しはじめました。5月末日に緊急事態宣言が解除され、徐々に通常通りの出勤するかたちにもどりつつありますが(図1)、2020年6月現在もなお完全に収束していない新型コロナウイルスの脅威があるため、69.4%の被雇用者が在宅ワークの継続を希望しています。(図2)
図1 テレワーク実施の推移

図2 テレワーク継続希望

(参照:パーソル総合研究所)
在宅ワーク希望者が多い一方、企業としては従来と違う勤務形態に不安や戸惑いが多く、そのメリット・デメリットが問われています。では、企業にとって在宅ワークはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
在宅ワークの4つのメリット
交通費などのコスト削減
厚生労働省が発表した平成 27 年就労条件総合調査の概況によると、全業種の1人あたりの通勤手当は1カ月で11,462円です。つまり、1年間で137,544円にもなり、被雇用者が多ければ多いほどその金額は無視できないものとなるでしょう。
また、極論を言えば在宅ワークによってオフィスそのものが必要なくなる場合、その規模の縮小化によって家賃や固定資産税の削減にもつながります。
優秀な人材の確保
通勤する必要がない=働く場所を選ばないため、遠方に住む良質な人材の雇用が可能となります。少子化が進む日本では特に、今後優秀な人材を企業間で取り合いになることは近い将来に見えています。その中で、在宅ワークを行っている企業はその企業から遠方に住むまたは理由があって自宅から離れられない優秀な被雇用者にとって魅力的な条件のひとつとなるでしょう。
災害時での業務継続
新型コロナウイルスの蔓延、といった予期できない災害時でも、在宅ワークの制度が整っている場合は問題なく業務を遂行することができます。
例えば、2019年秋に発生した大型台風の影響で各鉄道会社が運転見合わせ、遅延となり、多くの就労者がいつも通りに出勤をすることができませんでした。いつでも在宅ワークができる環境であれば、このような事態でも無駄な時間をかけた遠回りをしての出勤、遅延する電車を待ち続ける、などせずに自宅で業務に取り組むことができます。
従業員のストレス緩和
通勤がなくなることでコスト削減、といった企業側のメリットも大きいですが、被雇用者にとっても1時間もの通勤時間がなくなることで、自由な時間が増え、できなかった資格の勉強や家事ができるようになります。また、人間関係に悩む被雇用者にとってもそのストレスがなくなることで、業務効率があがることが考えられます。
ストレスのない環境をつくることで離職率を減らすこともできるでしょう。
在宅ワークの5つのデメリット
在宅ワークに多くのメリットがあるなかで、企業がそれを導入できない理由にはいくつかのデメリットも考えられます。
セキュリティ問題
オフィスと違い、個人宅でのネットワーク環境はセキュリティ設備が整えられていません。特に個人情報を取り扱う企業にはセキュリティ設備をどうするか、が課題となってきます。
コミュニケーション不足
今までオフィスで働く同じチームの仲間と簡単にできていた時に比べて、意思疎通が難しくなってきます。それによって共有されるべき事柄の認識違いなどが生まれる可能性も考えられます。
被雇用者への評価方法
在宅ワークでは働く従業員の姿、業務の過程をみることが難しいため、結果や成果物のみでの評価しかできない可能性があります。
モチベーションの維持
自己管理のできる被雇用者であれば問題ありませんが、在宅では仕事とプライベートの区別をすることが難しくなってきます。そのため、モチベーションが下がると仕事に支障が出てしまう可能性があります。
残業の有無
オフィスと違い勤怠管理が難しくなるため、残業をさせない、といった判断も出てくるでしょう。上記に挙げたデメリット(コミュニケーション不足、モチベーションの低下)などに影響される可能性を考えると、今まで以上に業務効率化が求められます。
在宅ワーク導入の3つのポイント
企業として在宅ワークを導入するにあたって、上記に挙げたデメリットをできる限り軽減させる必要があります。
そのために、
企業として在宅ワークの規定を設定
被雇用者の評価基準、セキュリティを強化するために企業としてしっかりとルールを定めなければなりません。例えば、就業時間、使用してよいツールなどを定め、企業としてのリスクを下げましょう。
チャット・Web会議ツールの選定
コミュニケーション不足を軽減するためには、チャット・Web会議ツールの活用は欠かせません。セキュリティが整っているツール、また有料であればどのような機能がついているのかを検討し、慎重に選ぶ必要があります。
ITを活用した業務効率化
厚生労働省が制定している36協定では、時間外労働(残業)の基準が定められており、在宅ワークで効率が下がった、という理由で残業を増やすことは好ましくありません。そのため在宅ワークでもできる業務効率化をすすめる必要があります。
2020年現在、業務効率化のためのサービスは多く普及しています。マーケティング効率化ツール、RPAによるデスクワークの自動化、AIによる初回接客、スクレイピングでのビッグデータ収集など、主にITを駆使したサービスを活用することで、人が手作業でやっていた業務を効率化することができます。
初期投資が必要なこともありますが、長い将来を見て、在宅ワーク導入のための環境を整えていくことは大きなメリットに繋がることでしょう。