パーソナルデータとは?制約や活用法を解説
パーソナルデータという言葉を聞いたことがありますか?パーソナルデータはビッグデータの一種で、個人の属性情報全般のことを言います。
IoTソリューションの発展で、ビッグデータのなかでも個人の属性に関する情報を収集するケースが増えています。ビッグデータの中でもパーソナルデータをうまく利用すると、個人のお客様に充てた効果的なマーケティング施策が期待できるなど、活用法に注目が集まっています。
一方、パーソナルデータそのものは個人情報ではないものの、使われ方によっては個人情報として規制されてしまうリスクも指摘されています。
そこで、パーソナルデータに期待される活用法と、規制との向き合い方についてこの記事で解説します。パーソナルデータ活用の一助にしていただけますと幸いです。
目次
パーソナルデータは、最も活用が期待されるビッグデータの一つ
ビッグデータは、以下の構成要素からなります。
- 1.政府:国や地方公共団体が提供する「オープンデータ」
- 2.企業:暗黙知(ノウハウ)をデジタル化・構造化したデータ(「知」のデジタル化)と呼ぶ)
- 3.企業:M2M(Machine to Machine)から吐き出されるストリーミングデータ(「M2Mデータ」と呼ぶ)
- 4.個人:個人の属性に係る「パーソナルデータ」
このように、パーソナルデータは個人の属性データのことであり、ビッグデータの一部を構成するものです。情報通信白書(平成29年)
パーソナルデータの利活用は、特に次の領域で期待されています。
- ヘルスケア
- 個人向けのマーケティング
- 動態調査
なかでも、個人向けのマーケティングにおける「パーソナライゼーション」という個人の属性情報を生かしたマーケティング戦略での有効活用はすでに成功事例があります。
また、マーケティングないしセールス上の課題として、ユーザーエクスペリエンスの向上があります。これはある商品や、サービスを購入・導入したら、ユーザーの事業や生活の質がこれだけ向上した、という体験のシェア、と言い換えることができます。これをパーソナライゼーションで実現するためには、個人の属性情報=パーソナルインフォメーションの利活用が欠かせません。

パーソナルデータの活用法・成功事例
パーソナライゼーションには著名な成功事例があります。
- Amazonのリコメンド機能
- Googleのパーソナライズド検索
特定の人に当てるというより、ある属性を持っている人にはこの商品・サービスがおすすめです、と表示される機能です。
パーソナライゼーションは、例えば男性・女性・年代別ということを超えて、どのサイトを閲覧した、どの商品を検索した、などと無数の情報を集めて処理し、検索者・利用者に最適な商品・サービスを表示させる仕組みです。そのため、正確にこれらの情報を収集し、アルゴリズムで最適解となった商品や、サービスを表示させると、ユーザーエクスペリエンスが向上する確率が高くなります。
パーソナライゼーションは、最適な商品を消費者に知ってもらい、ユーザーエクスペリエンスを向上させる方向に誘導する技術ということができます。そのためビッグデータを使うことには意味があります。
PCや、スマホをつかうユーザーから情報がとれると、購買行動の誘導は非常に合理的・効率的に行えることとなります。
パーソナライゼーションが必要となった背景

パーソナライゼーションマーケティングにおける課題は、One on one マーケティングという言い方に象徴されるように、いかにIT技術を使って、個別のターゲットとなる顧客にリーチ・訴求するか、でした。ここではより効率的・合理的な顧客獲得が課題になります。
もちろん、今でもお客様の個人情報をとり、見込み客情報として管理し、購買行動に誘導するマーケティング手法はもちろん有効です。
しかし、パーソナライゼーションは、「購買行動に至る道をあらかじめビッグデータから作るため、集客ををした際に、確度が高い見込み客が大量に獲得できる」というものです。一人をターゲットにするためにコストをかけ、購買に結び付ける売り方とは効率性が違います。
こうした発想を可能にしたのがビッグデータということができます。
AmazonやGoogleが持っているデータは膨大すぎるほど膨大なものです。その中から、個人の属性情報に基づき、良質のカスタマーエクスペリエンスに至る道がパッと開かれる、ということが可能になっています。
検索をかけ始めると、自分によく似た誰か(実在の人物とは限りません)の購買行動と結びつき、ほかの人のカスタマーエクスペリエンスを追体験する、それがあたかも自分が選んだものであると感じる、というと従来の One on one との違いがよりよくわかると思います。
AmazonやGoogleが販売・広告を通じて「売っている」のはものではなく、ライフスタイルであり、経験であるといってもよいでしょう。
ヘルスケア領域や動態調査におけるパーソナルデータの活用

ヘルスケア領域や、渋滞を解消するため、あるいはパンデミックのコントロールのための人の移動の動態調査などもパーソナルデータの一層の活用が期待される領域です。
例えば、ヘルスケアデバイスから、年代・生活条件も異なる人の属性情報を集めたとすると、疾病との因果関係がよりよくわかるようなことも起こります。
動態調査においては、分析において多要素の分析を必要としますが、無数のデータの多変数解析から交通施策を割り出すなどということもビッグデータの活用が想定される場面です。
このように、パーソナルデータの活用が生活の質を上げ、多くのメリットがあることがわかっています。その一方で、問題となるのはプライバシー・個人の情報のコントロール権との対立です。法制度による規制のほか、プライバシーは企業倫理・レピュテーションまで考慮しないと、SNS で「炎上」など、企業の利益追求とは反対の結果になってしまいかねないのです。
個人情報保護法・プライバシーによるパーソナルデータ利活用の制約と限界
パーソナルデータは、個人情報と異なり、特定の個人を推測させる情報ではありません。
しかし、活用のためのデータ処理の過程において、特定の個人と結びついた場合に、個人情報に転化する可能性があります。特にセンシティブな情報となるヘルスケアに関する属性情報が個人情報に転化すると、規制はより厳しいものとなります。
個人情報として、特定の個人を推測させる情報として見られると、例えば日本の個人情報保護法もそうですが、欧州のGDPR のように厳しい法規制による制約を受けます。国境を越えて利用することが管理策の厳しさや、そこにかけるコストとの見合いで不自由になることもあり得ます。
さらに、消費者のプライバシーを守るためのカリフォルニア州法や、各国のプライバシー法制の適用を受け、個人データの活用に同意や、削除要求への承諾が要求され、今後の利用に制約が出ることもありえるでしょう。
かつて、Suicaの定期券により集めた利用履歴匿名情報を販売利用しようとしたJR が強い批判を浴びました。あるいは就職内定辞退防止のためのビジネスも、扱っていたのは匿名情報とは言え、倫理的に非常に問題のある行為として取り上げられました。
このように考えると、次の2つのポイントについて対策したうえで、積極的にパーソナルデータの活用を考えるとよいでしょう。
- ①個人情報に転化する利用を回避し、法令違反を防ぐこと
- ②法律上日本では何をすればよいのかが明確ではないプライバシーの保護を企業で考えて対応しておく。あらかじめユーザーの同意がある情報しか使わないのも一つの手。

まとめ
このようにパーソナルデータの活用は、今後ますます進むことが予見され、期待されています。その一方で、個人情報の保護法制や、消費者のプライバシーと利害が衝突する状況には注意が必要です。
これを踏まえて、パーソナルデータを安全に収集すること、そして、問題のない活用に至るには、技術的な難しさにも直面します。そこで、経験豊富な外部のコンサルタントなどの専門家や、ベンダーによる優れた収集の仕組みを活用し解決することも検討してみてはいかがでしょうか。