
近年では、DXの推進により、デジタル技術を活用したビジネスが当たり前になりました。これまでは大企業ばかりがデジタル技術を活用していましたが、現在では中小企業にとってもデジタル技術を活用したビジネス展開が重要視されています。しかし、中小企業のDX化は遅れていると言っても過言ではありません。今回は、中小企業のDXが重要である理由とDXにおける課題、成功のポイントを解説します。
中小企業こそDXに取り組むことが重要
DXと聞くと、中小企業よりも大企業の方が浸透が早く、進んでいるとイメージしてしまいます。確かにDXの取り組み状況は、中小企業よりも大企業が進んでいます。「日本企業の経営課題2020」では、DXの推進・検討を進めている企業は全体の約6割を占めますが、ほとんどが大企業が占めており、中小企業では3割程度に留まっています。「これから検討する」と答えた企業が約半数を占めており、状況を見定めながら慎重に検討する姿勢が伺えます。

しかし、変革に積極的であるほど、DXの効果は非常に大きいです。大企業の場合、組織が複雑化し、提供しているサービスも多岐に渡るため、DXによる組織変革は簡単ではありません。一方で中小企業の場合、組織や事業が複雑化しにくいため着手しやすく、成果も出やすい傾向にあります。試験的にDXに取り組み、結果を確認してから本格的なDXに踏み切ることもできます。
また、ここ数年の間に様々なサービスが登場し、類似サービスも増えてきました。市場競争から離脱しないためにも、顧客の購買行動や顧客ロイヤリティには注視しながらアプローチする必要があります。現代のデジタル技術を活用しなければ、社会や顧客のニーズを満たすサービスを提供できなくなる可能性もあるため、中小企業だからこそ、積極的にDXに取り組むことが重要です。

中小企業のDXにおける課題
中小企業のDXにおいて、無視できない課題が2つあります。
- IT人材の不足
- 業務や知識が特定の人材に属人化
IT人材の不足
DXの推進には、ITに通ずる人材の確保が必須です。しかし、2020年においてIT人材は30万人も不足していることが経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によって分かっています。今後、IT人材を確保することも、自社での育成も難しくなることが予想されます。IT人材の確保が難しい場合は、DXに強い企業に相談することも手段の一つです。

業務や知識が特定の人材に属人化
中小企業に陥りやすい問題として、業務や知識が特定の人材に属人化しているケースがあります。詳細な業務内容や知識を共有できないだけでなく、業務の改善ができなかったり、担当者が不在になった場合に業務の継続ができない可能性があります。特定の人材に属人化することはDXの妨げにもなるため、体制の再編が求められます。

中小企業がDXで成功するためのポイント
中小企業がDXで成功するためのポイントは次の2つが挙げられます。
- 段階を踏んでDXに取り組み、データ活用を存分に利用する
- 経営者、事業部門、IT部門が連携して進める
段階を踏んでDXに取り組み、データ活用を存分に利用する
いきなり事業・組織すべてをDXに対応させる必要はなく、段階を踏んでDXに取り組むことが重要です。中小企業の場合、大企業よりも業務側と経営者の距離が近いこともあり、現場の声を参考に進めることができます。
DXに取り組みながら、様々なデータを収集・活用できます。収集したデータは今後のDXの取り組みに大きな影響を与えるだけでなく、市場動向を分析する手段にも繋がります。現在は、様々なベンダーがデータ活用ツールを提供しているため、それらのツールの導入や、余力がなければデータ活用を外部に外注することを検討しても良いでしょう。
経営者、事業部門、IT部門が連携して進める
中小企業の利点の一つに、各部門と経営者との距離が近いことが挙げられます。DXに取り組む上で、経営者を筆頭に事業部門とIT部門それぞれが連携して進めることが重要です。
デジタル技術を活用したビジネス展開では、IT部門だけの問題に留まらず、経営・マーケティングの観点を踏まえて戦略を考えることが鍵です。経営者が独断で実行することも、IT部門に一任することも誤ったアプローチであることに注意しましょう。

中小企業のDX事例
中小企業のDXの成功事例を2つ紹介します。
株式会社東京電機
非常・防災用の発電装置を扱う製造メーカーである株式会社東京電機では、紙ベースでのデータ管理による誤入力や、図面の管理体制が非効率が課題でした。そこで、生産管理システムをIoT化し、ペーパーレスおよび情報の一元管理を実現したところ、入力ミスの削減に繋がり、作業工数の削減に成功しています。
上総屋不動産株式会社
賃貸業・管理業を展開する不動産会社である上総屋不動産株式会社では、毎月の電話対応が1,500件程ありました。新規問い合わせからクレームまでと幅広く、従業員のストレスや取次ミスが課題でした。そこで、顧客対応を管理するシステムを導入し、日々の着信回数や問い合わせの時間帯などのデータ化、問い合わせ内容を分類化しました。その結果、適切な担当者へのスムーズな取次が可能となり、従業員のストレス低減や顧客対応の向上に繋がりました。
上総屋不動産株式会社の取り組みは、データ活用を活かした成功事例です。

まとめ
今回は、中小企業のDXが重要である理由とDXにおける課題、成功のポイントを解説しました。今後はデジタル技術を活用したビジネス展開に拍車がかかることが予想されます。できる限り早急に、デジタル技術に適応した仕組みを確立することが、中小企業が生き残る鍵を握ります。