
金融業界は他の業界に対して、DX化が遅れています。今回は、金融業界のDX化が遅れている理由とDX化が難航する理由、DX化のメリットを解説します。
金融業界のDXが遅れている理由
元々、金融業界は他の業界に比べ早い段階でITの導入が進んでいました。1970年代には、銀行のIT化が既に他の業界を先行しており、当時では驚くほどの完成度を誇っていました。
本来であれば「IT技術の進歩により、各業界・業種がIT化の恩恵を受けて発展」という流れが一般的です。しかし、金融業界の場合は、この流れの逆である可能性があります。
そのため『ムーアの法則』と呼ばれる「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という経験則が金融業界には該当せず、他の業界と比較してその後のITの発展に遅れを取るようになってしまいました。
昨今でこそ、AIやロボットの導入が進んでいる企業もありますが、業界全体では、レガシーシステムとして残存している割合が高く、2025年の崖の解消に向け早急なDXが要求されているのです。
金融業界のDXが難航する理由

金融業界は他の業界に比べ、早い段階でIT化が進んでいました。早い段階でIT化が進んだことにより、いくつかの弊害が生じてしまいました。
その弊害こそが、金融業界のDX化の難航に繋がっています。
早期にITを導入した結果システムの刷新が困難に
IT化が進めば進むほど、より柔軟性の高いシステム開発ができるようになります。しかし、IT技術の発展よりも先に高度なセキュリティを持つシステムを追求した結果、柔軟性が低く、手間もコストもかかるシステムが完成しました。
システムを刷新しようとしても、システムの内情を把握できず、ブラックボックス化を招いてしまい、意図した改善が困難になってしまったのです。
外部システム連携を視野に入れていない構成
強固なセキュリティを実現するために、外部システムとの連携は制限することが多く、単体のシステムで必要な処理を補完せざるを得ませんでした。当時は、外部システムとの連携は想定外とも言え、本来であれば、IT技術の発展とともに抜本的に見直す必要がありました。しかし、抜本的な見直しはシステムの作り直しと同義に等しく、解決が難航しているのが現状です。
当時の技術を持つ人が減少
IT技術は日々進歩しており、特にここ数年はAIや機械学習、IoTなど、自動化に関する技術の進歩が著しいです。
金融業界のシステムは『COBOL』というプログラミング言語で構成されていることが主流です。現在では、COBOLを扱えるエンジニアが高齢化しており、若手のエンジニアが不足しています。当時の技術を引き継げる人材が減少していることもあり、昔からシステムの内情を知る人材に属人化、DXに踏み込めないケースが存在します。

DXで得られるメリット
DXを推進することで、次のようなメリットを得られます。
- 顧客や社会のニーズに素早く応えることができる
- →ウォーターフォールではなく、アジャイル開発
- 社内の体制や制度を改善できる
顧客や社会のニーズに素早く応えることができる
金融業界の従来の手法は、サービス提供に至るまでに綿密な計画立案など、ウォーターフォール型のアプローチが主流でした。近年のビジネス環境は、顧客や社会を問わずに多様かつ急速に変化していることもあり、従来のウォーターフォールでは、サービス提供までに陳腐化している可能性があります。
DXの本質は「ビジネス環境の激しい変化に対応し、製品やサービス、ビジネスモデルを変革する」ことです。DXを推進する以上、ウォーターフォール型ではなく、アジャイル型のアプローチ方法に変更すべきです。
アジャイル型のアプローチ方法は、新技術の観点においても効果的です。どの技術を取り入れればいいか分からない場合など、簡易なPoCを実施しながら、短い期間でリリースを繰り返し、最適な効果が得られる技術を選択すればいいのです。
アジャイル型でアプローチすることで、顧客や社会のニーズにリアルタイムで応えることができます。

社内の体制や制度を改善できる
DXを推進することで、社内の体制や制度を改善できます。
アジャイル型のアプローチでは、短い期間でのリリースを繰り返すため、業務部門・企画部門・開発部門などを組織として一体化するなどの変革が必要です。この体制が実現できれば、業務側と開発側の相互理解にも繋がり、よりスムーズなDX推進ができます。
また、DXの効果を最大限高めるためには、業務の一部を自動化したり、テレワークやフレックス制度の導入など、社内制度の改革を行うことも重要です。金融業界は強固なセキュリティを求められますが、高セキュリティを備えたサービスや、企業の状況に応じたセキュリティに調整できるサービスもあります。
DXとデータ活用

DXを推進する上で、データ活用は大きな意味を持ちます。
今では様々なケースでビッグデータを活用できるようになり、顧客に合わせた提案や顧客サービスの向上、効率化による同業他社との優位性など、様々な側面でデータ活用が重要な役割を担います。
ビジネス面で優位に立てるだけでなく、アジャイル型のアプローチにおいても、顧客や社会が今後何を求めるかをデータから導き出せるようになります。
自社でのデータ収集・分析が難しい場合は、これらを得意とする企業に外注するなど、何かしらの手段を検討しましょう。DXを成功させるためにはデータ活用は必要不可欠です。
まとめ
今回は、金融業界のDX化が遅れている理由とDX化が難航する理由、DX化のメリットを解説しました。DXを推進する上で、金融業界は様々な課題を抱えています。全てを一度に解決しようと考えるのではなく、少しずつ解決していくことがDXを継続する意味でも重要です。