
ビッグデータやAIの発展により、データを駆使して利益を得る巨大企業が生まれてきました。世界の時価総額のトップ10には、アメリカや中国のIT企業が名を連ねています。個人の生活にもIoTが浸透すれば、生活そのものからもデータを収集することができるので、収集したデータを個人が活用するデータエコノミーの時代も近づいています。
それでは、データエコノミーとは何なのでしょうか?この記事では、データエコノミーとは何か、どのような社会になるのかを解説した上で、日本国内が抱えている課題を紹介します。
今後のデータエコノミー社会で、有益な商品やサービスを提供できる会社を経営したい方はぜひ参考にしてください。
データエコノミーとは?
データエコノミーとは、直訳すれば「データ」の「経済」です。膨大なデータが人間の生活する経済的・社会的な基盤を作ることを意味しています。
かつては石油などの原料が経済を支えていましたが、データエコノミーの時代はデータを資源として企業間の競争を活性化させ、新しい価値が創造されていく社会になります。
ビッグデータやAIから有益な情報だけを抽出し、会社経営や災害対策、医療などのあらゆる分野に活用できます。さらに、データは個人の生活にも大きな利便性を与えます。例えば、クレジットカードの作成やローンなどのお金の工面は、データによって簡易化されます。個人の信用スコアは全てデータで管理されているため、身分証明書の提示や会社への勤続年数、住居の有無と居住年数などの手間のかかる書類の作成や申請などが不要になります。これらの情報は、全て個人データとして保存されているからです。
データエコノミーとは、データを基盤として人間の生活を便利で豊かにしてくれる社会のことであり、その社会を作るためにも企業はデータ活用を推進する必要があるでしょう。
データの利用は企業経営や医療機関に浸透している

データを基盤とするデータエコノミー社会は、企業経営や医療機関ではすでに浸透しています。
企業の経営は、時間や人材のコストを下げて、利益を拡大させなければいけません。また、コストの削減だけではなく売り上げの増大も、利益拡大への必要事項です。データは社内の業務効率化だけではなく、セールスや宣伝、マーケティングといった売り上げを伸ばす施策にも活用されています。
医療現場でもデータの活用は進んでいて、個人のカルテをデータ化して、個人の疾患に合わせた治療や施術がされています。また、医療業界では、データによって診断や治療も異なる方法が開発されています。これまでは、各医師や病院によって診断と治療方法が異なっていることもあり、医療業界での統一がされていませんでした。医師の経験に基づく診察も多く、エビデンス(証拠)よりも経験に重きが置かれている傾向にありました。しかし、データの蓄積により、データ(エビデンス)に基づいた診断や治療もされるようになりつつあります。また、各病院で収集されたデータを他病院へ共有される事で、医療業界全体の診断や治療の統一と成長にもつながりました。
今後はデータによって、医療業界もさらなる改善がされていくことでしょう。
日本がデータエコノミー社会になるための課題
日本はデータの収集や分析に十分な投資ができていません。そのため、日本国内の企業はデータエコノミーに移行できずに、世界の企業と差を付けられているのです。
アメリカや中国などの大手IT企業は、既にデータエコノミーへの移行を実践しています。大手IT企業によるクラウドサービスやIoT商品の開発と販売は、個人の生活にも浸透し始めています。クラウドサービスやIoT商品から、膨大なデータを収集できているのです。
日本がデータエコノミーに移行するには、いくつかの解決すべき課題があります。そんな日本の課題として「個人情報の保護」「データを経済価値へ変える方法」「DX化の遅れ」などが挙げられます。これらの課題を詳しく解説していきましょう。
個人情報保護への意識が高い

日本はアメリカや中国に比べて、個人情報保護への意識が高くデータの扱いが難しいことが課題の一つです。データの収集や利用までの過程で守らなければいけない個人情報は多く、データエコノミーへ移行する際にいたるところで慎重になる必要があります。
日本国内で個人情報の扱いが難しい事例として、リクナビの裁判を例に挙げてみましょう。この問題は、日本国内での個人情報の扱いが難しい事を象徴しています。企業と就活生の就職活動をつなげるサービスを展開していたリクナビは、就活生の「内定辞退率」情報をデータ化して会社側に流していたとしてメディアや就活生から批判を受けました。このことで、リクナビは、内定辞退率を会社側に提供するサービスを中止しています。企業側からすれば、内定辞退率のデータ取得は利益になったかもしれませんが、個人情報の保護の観点からすれば問題があり実用化できなくなります。
今回は就職活動に関する事例を挙げましたが、データを扱うようになれば同様の問題は今後も起こり続けるでしょう。データを扱う側と、サンプルになる側の双方が納得できる形の規定と流出を防ぐためのセキュリティー対策が重要になるでしょう。
データを経済価値へ変える方法が確立できていない
データそのものを経済的な価値に転換する方法を模索できていないのも、解決すべき課題の一つです。データの活用に対して巨額の投資をおこなって、経済価値に還元できているのは一部の資本力がある企業だけなのが現状です。既に、GoogleやAmazonは、データベースや分析ツールなどをプラットフォーム化して個人に対しても無料提供しています。ユーザーを増やすと同時に同一プラットフォームが、データの収集も並行しておこなっているのです。帰宅時間や生活習慣に合わせて個人に最適化されたIoT商品や、インターネットサービスを持っている巨大なプラットフォームビジネスをおこなう企業だけが、消費者のニーズに対応して利益に変えられます。データを資源としている産業は、海外の企業が寡占している状況にあるのです。
海外と比べて日本国内には、あらゆるデータを収集して経済的な価値に転換できるプラットフォームがごくわずかです。現在では、GoogleやAmazonが提供している巨大なプラットフォームに対抗するためにも、日本政府が主導して日本国内でデータバンク設立などの解決策を提案しています。データを経済価値に変える方法を編み出すのも日本の課題です。日本政府主導の解決策の提案を待つ間にも、競合との格差は開いてしまいます。そのため、各企業でも対策は必要です。まずは、データ活用のコンサルティングや収集、分析等を専門としている企業に相談してみることもおすすめです。
DX化の遅れ
日本国内の経営スタイルや、業務スタイルが旧態依然としていてDX化が遅れてしまっている点も課題です。日本企業でも長期にわたって営業を続けている会社は、経営を左右する立場の役員や重役が、新しい業務のスタイルに変化させようとしないところもあります。そのため、DX化が遅れてしまいデータを駆使した経営に至っていません。
データエコノミーは、会社内のDX化の基盤が無ければ成立しません。データエコノミーを浸透させるためにも、DX化によってデータを共有できる体制を作り上げることが重要です。
個人でデータを利用できる社会で変わること

個人でデータを利用できるようになれば、社会全体が大きく変化します。これまでは、データの利用は一部の資本力のある会社だけでした。個人は情報を提供するだけの立場であり、利用する立場ではないのが現状です。しかし、データエコノミー社会が浸透すれば、個人でもデータを扱って生活に活かせるようになります。
個人データは、既にIoTやAIの分野で活用されています。データによって生活空間もかなり変化していきます。さらに、個人でデータを収集し、個人間でデータの共有や交換がおこなわれるようにもなるでしょう。個人間で各個人が作った商品やサービスの交換がおこなわれるようになれば、データが通貨のように使用される社会も想像できます。
ここからは、個人でデータを利用できる社会になって変化していくことが予想される、「医療の迅速化」「生活空間の最適化」「個人事業の効率化」について深堀していきます。
医療の迅速化
データエコノミーは医療の迅速化ももたらします。従来の医療は、患者が自身の身体に異変を感じた際に、医師に相談する体制です。しかし、データエコノミー社会になれば、本人は気づかないうちに身体に異変が起こっている場合にも、医師や病院側からアドバイスすることが可能になります。つまり、身体に異常のある人を迅速に察知できるのです。
近年スマートウォッチなどの普及によって、個人の血圧や心拍数はリアルタイムで計測できるようになりました。この個人データも常に医療機関で確認できれば、「患者と医師との関係が一方通行から、双方でのコミュニケーションができます。身体の異常を早期に発見できれば、これまでに発見が遅れて救えなかった命も救い出せることが可能になるのです。また、個人データが蓄積されれば、生活習慣を見直して、疾病予防も個人単位でおこなうことができます。
データエコノミーでは、医療体制も変化し健康寿命を伸ばす未来がやってくるでしょう。

生活空間の最適化
自宅でIoTやAIを駆使して生活空間を個人に最適化すれば、快適に生活することができます。IoTは電化製品がインターネットと接続された状態です。電化製品をインターネットと接続し、データの蓄積もできるようになると、個人の生活スタイルに合わせてAIがサポートしてくれます。
例えば、生活習慣に合わせて自動で室内の温度を調節してくれますし、スケジュールに合わせた電気の調整もしてくれます。冷蔵庫内の食品の保存状態も知らせれてくれるので、経済的なコストも削減できます。個人の生活がデータエコノミーによって、不要な手間や時間がかからず豊かで便利になるのです。
個人事業の効率化
データエコノミーは、個人事業を効率化します。YouTubeやSNSが一般に広まったことによって、個人が情報発信をすることによる収益化も可能になりました。情報発信の拠点が企業だけではなく、個人でも可能になったことを意味します。会社と個人の一方通行の商品やサービスの提供ではなく、個人間でも商品やサービスが提供できるようになるので、個人が展開できる事業の幅は広がります。
個人間での事業が広がることで、心配されるのは詐欺や犯罪です。しかし、これまでの取引記録やクレジット記録などの個人の信用情報がクラウドサービスによって管理されるため、取引相手の信用度を確認してから取引をすれば安全です。データエコノミーは、個人事業を効率化して経済の競争を高めます。
まとめ

データを基礎として新しい価値や生活の改善ができるデータエコノミーが、既に海外では主流になってきました。生活空間のIoT活用によって、便利で快適な生活を提供できる社会の仕組みが日本よりも充実しています。便利な生活を提供しながらデータを収集し、サービスの改善に取り組んでいます。
日本国内では、個人情報保護の問題やDX化の遅れなどによって、データエコノミーへの移行が遅れています。今後は法的な整備や個人情報保護のためのセキュリティーなどが解決されれば、データエコノミーが浸透していくでしょう。日本でもデータエコノミーによって、企業だけではなく個人の生活も大きく変わっていくことが予想されています。企業としては早めに社内のDX化やデータエコノミーへの準備を進めていくべきでしょう。しかし、データを活用して利益を得る仕組みを作るには、膨大な量のデータが必要です。膨大な量のデータから価値あるデータを取捨選択するには時間がかかります。有用なデータの収集や分析を専門にしている会社もありますので、一部の業務を外注することも視野にいれながらDX化とデータエコノミーを目指しましょう。