改正著作権法もチェック!Webスクレイピング(クローリング)で気を付けることは?
Webスクレイピング(クローリング)を行う際にはいくつかの気を付けなければならない法律があります。
法律、というと難しく、しっかり把握できているか不安になることでしょう。しかし、違法スクレイピング(クローリング)にならないためにはそれらの法律を理解することは必須です。
今回は、Webスクレイピング(クローリング)に関わる法律を具体を含め、簡単にご紹介します。
Webスクレイピング(クローリング)の基礎をまとめたガイドはこちら
知っておくべきWebスクレイピング(クローリング)関連の法律
Webスクレイピング(クローリング)には以下3つの法律が関わってきます。
- ① 著作権法
- ② 刑法
- ③ 民法
著作権
他人のサイト情報(著作物)を収集して、自身のサイトに直接掲載したり、自身のサーバに保存する行為は基本的には著作権の侵害となるため、著作者に利用許可をもらう必要があります。
以前は「著作権法第47条の7」によって、情報解析が目的であれば著作者の許諾なく著作物の記録又は翻案ができる、とされていました。それに加えて、著作権法は2019年1月1日より改正したものが試行されました。新しい著作権法ではどのようになっているでしょうか。
改正著作権法第30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種 類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場 合は、この限りでない。
- 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
- 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
- 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合
引用:e-Gov
ここから、Webスクレイピング(クローリング)で得たデータ(著作物)は
- 録音、録画その他に係る技術の開発又は実用化のための実験
- 情報解析用
であれば、利用可能ということがわかります。
例えば、Webスクレイピング(クローリング)から得たデータを解析終了後に学習用データセットとして譲渡、公衆送信、頒布することが改正民法第30条の4によってできるようになった、といえます。
刑法233条(偽計業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。引用:e-Gov
これにより、Webスクレイピング(クローリング)によって正常なサイト運営を妨げた場合にこの刑法が成立する可能性があります。
民法548条の2(定型約款)
定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
- 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
- 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
(定型約款の内容の表示)引用:e-Gov
これにより、「Webスクレイピング(クローリング)禁止」といった内容が利用規約で提示してあり、そのWebサイトで合意をした場合は双方の契約内容となるため、そのようなWebサイトからスクレイピング(クローリング)を行うことはこの民法が成立し、契約違反となります。
Webスクレイピング(クローリング)と著作権の関係を一目で解説
上記で述べた法律の中でも特に、「著作権」は複雑でわかりづらいでしょう。
そこで、Webスクレイピング(クローリング)と著作権の関係を図解で見てみましょう。

Webスクレイピング(クローリング)の目的が、データを直接公開したり、保存したり、譲渡または販売することは禁止されていますが、「データ解析をする」という目的の元Webスクレイピング(クローリング)をし、それを解析したデータにおいてはいずれの場合も著作権の侵害には当てはまりません。
どうすると著作権の侵害・・?大切なのはデータの扱い
Webデータを取集することは簡単ではありません。それは技術面だけではなく、Webデータそのものが法律において守られている大切な資源だからです。
そんな大切な資源を違法にならずに活用したいですよね。
Webスクレイピング(クローリング)の技術を学ぶだけでは、その行為が違法かどうかはわかりません。「このWebサイトはスクレイピング(クローリング)しても大丈夫か」「データの活用目的が〇〇だけど著作権の侵害にはならないか」「情報解析が目的ってどういうこと?」といった不安がある場合は、一度データ、Webスクレイピング(クローリング)のプロに相談してみるといいでしょう。
⇒IT弁護士に聞く「企業としてのWebスクレイピングは違法なのか?」 ⇒【Webスクレイピング】違法にならないサービスパターン5選
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