スクレイピングとは、Webサイト上の情報をプログラムやツールで自動的に取得し、必要なデータだけを抽出・整形する技術です。価格調査や口コミ分析、営業リストの作成など、人手では時間がかかるWebデータの収集を大幅に効率化できます。
一方で、やり方を誤ると利用規約違反や法律上のトラブルにつながるおそれもあります。この記事では、スクレイピング代行を手がけるPigDataが、次の内容をわかりやすく解説します。
- スクレイピングの意味と仕組
- クローリング・API・RPAとの違い
- メリット・デメリットと、4つのやり方比較
- 違法にならないための注意点とチェックリスト
- 実際の活用事例と、生成AI時代のスクレイピング
目次
スクレイピングとは
スクレイピングとは、Webサイトに表示されている情報をプログラムで自動的に取得し、必要な部分だけを抜き出して使いやすい形に整える技術です。「Webスクレイピング」とも呼ばれます。
たとえば、ECサイトに並ぶ数千件の商品名と価格を、人がコピー&ペーストで集めると数日かかります。スクレイピングなら、同じ作業を短時間で自動化し、CSVやExcelの表として受け取れます。
語源
スクレイピングは、英語の「scrape(こする・削り取る)」に由来します。Webページという大きな情報のかたまりから、必要なデータだけを削り取るイメージです。
スクレイピングの仕組み
スクレイピングは、一般的に次の5つのステップで動きます。
- リクエスト: 対象のWebページにアクセスを要求する
- HTMLの取得: Webページの元になっているHTML(ページの構造を記述した言語)を受け取る
- 解析: HTMLの構造を読み取り、欲しいデータがどこにあるかを特定する。場所の指定にはCSSセレクタやXPathを使う
- 抽出: 商品名・価格・日付など、必要なデータだけを取り出す
- 保存・整形: CSV、Excel、JSON、データベースなど、使いやすい形式で保存する
JavaScriptで後から内容を表示するページの場合は、ブラウザを自動操作するツールを使ってページを表示させてからデータを取得します。
スクレイピングとクローリング・API・RPAの違い
スクレイピングは「特定の情報を抜き出す」技術で、似た言葉のクローリング・API・RPAとは目的や仕組みが異なります。
| 項目 | スクレイピング | クローリング | API | RPA |
|---|---|---|---|---|
| 目的 | 特定のデータを抽出する | Webページを巡回して集める | 提供元が公開するデータを受け取る | PC上の定型作業を自動化する |
| データの提供者 | 取得する側が自分で集める | 取得する側が自分で集める | サイト運営者が用意する | 取得する側が自分で操作する |
| 取得できる範囲 | 画面に表示される情報 | リンクをたどれるページ全体 | 提供元が公開した項目のみ | 画面で操作できる範囲 |
| 安定性 | サイトの構造変更で止まることがある | 同左 | 高い(仕様変更は事前告知が多い) | 画面変更で止まりやすい |
| 代表例 | 価格調査、口コミ収集 | Googleの検索エンジン | 地図、交通、ECのAPI | 社内システムへの入力作業 |
クローリングとの違い
クローリングは、リンクをたどってWebページを次々に巡回し、ページそのものを集める技術です。Googleの検索エンジンが世界中のページを見つけて登録する仕組みが代表例です。スクレイピングは、集めたページの中から必要なデータを取り出す工程を指します。実務では、クローリングでページを集め、スクレイピングでデータを抜き出すという形で組み合わせて使うことが多くあります。
APIとの違い
APIは、サイト運営者が「このデータは使ってよい」と決めて提供する窓口です。欲しいデータがAPIで提供されている場合は、まずAPIの利用を検討するのが基本です。APIが提供されていない、または必要な項目が含まれていない場合にスクレイピングを検討します。
RPAとの違い
RPAは、人がパソコンで行う操作を記録して自動で再現するツールです。Webからのデータ収集にも使えますが、本来の用途は定型業務の自動化です。大量のページや複数サイトから継続的にデータを集める場合は、スクレイピングのほうが処理速度や安定性の面で向いています。
スクレイピングのメリット・デメリット
スクレイピングの最大のメリットは、大量のWebデータを短時間で正確に集められることです。一方で、サイトの構造変更への対応や法的な確認といった手間もかかります。
メリット
- 作業時間を大幅に減らせる: 人手で数日かかる収集作業を、数時間〜数分に短縮できます。
- 人為的なミスを防げる: コピー&ペーストの転記漏れや入力ミスがなくなります。
- 定期的・継続的に収集できる: 毎日の価格変動やランキングの推移など、時系列のデータを自動で蓄積できます。
- APIがないデータも取得できる: サイト側がAPIを提供していない情報も、利用規約の範囲内であれば収集できます。
- すぐに分析できる形で受け取れる: CSVやExcelなどに整形されるため、BIツールや分析作業にそのまま使えます。
デメリット・注意点
- サイトの構造が変わると止まる: ページのデザインやHTMLが変わると、プログラムの修正(メンテナンス)が必要になります。
- 取得できないサイトがある: 利用規約で禁止されているサイトや、ボット対策が厳しいサイトでは収集できない、または収集すべきでない場合があります。
- 法律や規約への配慮が必要: 著作権法や個人情報保護法、アクセス方法によっては業務妨害などが問題になることがあります(詳しくは後述)。
- 自社で行う場合は専門知識が必要: プログラミングやサーバー運用の知識、担当者の工数がかかります。
スクレイピングのやり方
スクレイピングの方法は、大きく分けて「プログラミング」「ノーコードツール」「代行サービス」「スクレイピングAI」の4つです。社内に技術者がいるか、どのくらいの量と頻度で集めたいかによって、向いている方法が変わります。
| 方法 | 初期費用 | 難易度 | 対応できるサイト | メンテナンス | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| プログラミング | 低い(人件費は別) | 高い | 幅広い | 自社で対応 | 社内にエンジニアがいる企業 |
| ノーコードツール | 無料〜月額数万円 | 低〜中 | 構造がシンプルなサイト | 自社で設定を修正 | 少量をすぐに試したい人 |
| 代行サービス | 案件ごとに見積もり | 不要 | 幅広い(ログインが必要なサイトなども相談可) | 業者が対応 | 大量・継続的に集めたい企業 |
| スクレイピングAI | 【要確認】自社サービスの料金 | 低い | 【要確認】対応範囲 | AIが構造変化に対応 | 対象サイトが多い、保守の手間を減らしたい企業 |
プログラミング
PythonやRuby、Javascript等を用いてコードを書くことで実装できます。
ライブラリの使い方など、プログラミングの知識が必要となるため、技術者でなければ難しいでしょう。
スクレイピングツールを使う
日本語にも対応しているOctoparseのようなスクレイピングツールを使えば、プログラミング初心者でもスクレイピングを実装することができます。設定が簡単なWebサイトの場合はスクレイピングツールで十分ですが、それだけでは求めているデータ収集ができない可能性もあります。
スクレイピング専門業者に依頼
スクレイピングをサービスとして行っている業者に依頼するのもひとつの手です。もちろん自社で内製したり、ツールを使うよりもコストがかかる可能性がありますが、確実にデータが収集できることと、スクレイピングにおける注意点をすべてクリアした状態で安心してデータ収集が行えることが利点です。
スクレイピングAIを使う
AIがWebサイトの構造を解析してデータを収集する、新しい方法です。PigDataの「スクレイピングAI」では、収集したいサイトのURLと取得したい内容をチャット形式で伝えるだけで、データを自動で集められます。従来のスクレイピングで課題になりがちだった、開発費用・納期・サイト変更時のメンテナンスの負担を抑えられるのが特長です。
スクレイピングの注意点
スクレイピングはWebサイトによっては禁止されていたり、スクレイピング方法を誤ってしまうと法律に触れてしまうことがあります。
スクレイピングに関わる法律
スクレイピングは実施する際、また実施したあとのデータの取り扱いの両面で関係する法律があります。実施する際には偽計業務妨害罪が主に関わってきており、スクレイピングを実施するWebサイトに負荷をかけるなどで迷惑行為だと判断された場合に罰せられる可能性があります。
また、スクレイピングで得たデータは基本的にデータ解析を目的とする必要があるなど、データの取り扱いを間違えれば個人情報保護法や著作権法が関わってきます。これらについての知識を事前に確認する必要があるでしょう。
Webサイトの特性
Webサイトによってはそもそも、スクレイピングを禁止していることを明示しているサイトがあります。スクレイピングを実施する際にWebサイトがどういった構造をしているのかはもちろんですが、Webサイト内のどこかにそういった明示がないかどうかの確認をする必要があります。
スクレイピングがDX推進のカギ
DXはデジタル技術を活用し、社会やビジネスをより良いものへと変革させることです。つまり、DX推進は単にデジタルツールを使うだけでは達成できません。
もちろん、デジタルツールの活用により社内において「内部データ」が蓄積され、それを活用することでビジネスを向上させることもできます。しかし、内部データだけでは社内における小さな世界でしか発展することができません。そこで外部データの掛け合わせがDX推進のカギとなります。「外部データ」とは社内で得られないデータのことを指します。オープンデータ、Webデータも外部データのひとつです。
オープンデータやWebデータは誰でもアクセスし、収集できるという手軽な特性がある一方、その量が膨大で収集して整理し、活用するというのが難しい面もあります。外部データを活用するにも、そのデータ収集やデータ整形に時間がかかっていては意味がありません。そこでスクレイピングが必要となります。
つまり、DX推進、「外部データ」の活用において、また「外部データ」収集を自動化するスクレイピングはDXの過程においても重要な要素のひとつとなります。
スクレイピング活用事例
スクレイピングの活用事例をいくつか紹介します。
自社製品の改善
とあるメーカーは自社製品の改善を行うにあたって、購入者へのアンケートや自社ホームページからの問い合わせ内容をもとにすすめていました。しかし、競合との差別化や他社製品を利用しているユーザーの声も調査したうえで製品開発をしたほうがいいのでは、という意見が社内会議で出たため、Webサイト上にある自社製品への口コミや他社製品の価格変動、口コミを調査することにしました。しかしそのWebサイト数や情報更新の頻度は人手でチェックするには不可能な量だったため、これらのデータ収集にスクレイピングを活用しました。
その結果、「使ってみると製品は良いが、購入前にはその良さがわからなかった」と製品の内容以外の意見を知ることができました。そこでWebの製品ページやカタログデザインの見直しをすることで同ジャンルの製品の売上120%(前年比)を達成することができました。
ブランド力の維持
コンサルティングをしている上で、顧客のブランド力を維持することは重要となってきます。そのため、顧客の製品を卸している店舗が定価より安く販売していたり、その製品を使ったサービスを安く提供している場合は、ブランド品質の定価につながるため注意喚起が必要となります。
数百以上の店舗をひとつひとつ調査することは難しいため、これらの店舗情報が集まっているポータルサイトからスクレイピングを用いてその店舗のサービス内容と価格を収集・分析することで不正を行っている店舗を割り出すことに成功しました。
不正を行っていた店舗を取り締まることで、ブランド力を維持し、適正価格で製品をユーザーに提供することができています。また、これを提案したコンサルティング企業は顧客からより高い信頼を得て新しいプロジェクトも任されることとなりました。
営業の効率化
営業におけるスクレイピングの活用方法でよく利用されるのは「営業リストの作成」ですが、「最適なタイミングで営業するためのデータ収集」もスクレイピングで分析することが可能です。
すでに自社で「新しい〇〇が売り出される時、一番自社サービスが売れる」というデータがありました。そこで「新しい〇〇」が売り出されるかどうかを各種ニュースサイトや複数のメーカーサイトをチェックし、「〇〇」というキーワードが発生した際に通知し情報を収集する設定をスクレイピングで行いました。その結果、営業担当は無駄な営業をすることが減少したため、既存顧客のフォローも十分にできるようになり顧客満足度の向上にも繋げることができました。
PDFから研究開発データの抽出
研究開発のために複数ジャンルの文献からデータを収集する機関があります。研究開発用データはPDF形式かつ膨大であるため、PDF等でダウンロードしたところでその中から必要なデータを抽出する作業は多くの時間を費やしていました。
そこでスクレイピングとPDFからデータ抽出・データ整形をしCSVに落とし込む技術を合わせることで、PDFの収集からそのあとの必要データ抽出まで一括で業務を実装することができ、時間コストの大幅な削減に成功し、より多くの研究をすすめることができました。
スクレイピングはそれだけではなく、他の技術と組み合わせることでさらに効果的な結果を生み出すことができる事例です。
生成AI時代のスクレイピング
生成AIの広がりによって、スクレイピングは「AIを使って集める」側と「AIに集められる」側の両面で変化しています。
AIを使ったスクレイピングが登場
従来のスクレイピングは、サイトごとにプログラムを作り、構造が変わるたびに修正する必要がありました。近年は、AIがページの構造を読み取って必要なデータを判断する「AIスクレイピング」が登場しています。対象サイトが多い場合や、専任のエンジニアがいない企業でも、Webデータを活用しやすくなりました。
AIクローラーへの対応が進む
生成AIの学習データを集めるためのクローラー(AIクローラー)が増えたことで、robots.txtや利用規約でAIクローラーのアクセスを制限するサイトも増えています。スクレイピングを行う側は、こうしたサイト側の意思表示を確認することが、以前にも増して重要になっています。
まとめ
「DX推進」が叫ばれている現代において、データ活用は重要なポイントです。
デジタルツールの活用から得られる「内部データ」の活用はもちろん、Webサイト等から得られる「外部データ」を活用することで、より多くの分析が可能となり、企業は内部データだけでは得られなかった新しい施策を生み出すことができます。
スクレイピングはこのような現代、またよりDXが進む未来において外部データ活用を牽引する知っておくべき技術となるため、スクレイピングの活用方法をより柔軟に、幅広く考えていくことが大切です。
PigDataではスクレイピング技術の提供だけではなく、目的を達成するための業務フローまで一緒に考えてご提案することができます。データ収集のみならず活用についてお考えの際は一度ご相談ください。

