
官民が無料で公開している「オープンデータ」。
自社調査では取得が難しいような貴重なデータも数多く公開されており、さまざまな企業・機関がオープンデータの利活用に取り組んでいます。
この記事では、そんなオープンデータのご紹介に加え、
「オープンデータをどのように自社で活用すればいいか分からない」という方向けに、オープンデータを導入する際の秘訣もご紹介しています。
オープンデータの利活用にご興味をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。
オープンデータとは
“国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、次のいずれの項目にも該当する形で公開されたデータをオープンデータと定義する。
1.営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
2.機械判読に適したもの
3.無償で利用できるもの
〈参照:オープンデータ基本指針(平成29年5月30日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)〉”
上記は国による「オープンデータの定義」ですが、少々小難しいですよね。
これをより分かりやすく言い換えるなら、「誰もが無償で二次利用可能な、パソコンで容易に処理できる形式のデータ」となります。
これと似た言葉に「ビッグデータ」があります。
2つの言葉の決定的な違いとして、
オープンデータ:行政が公開しているデータ
ビッグデータ:民間が保有しているデータ
と解説しているサイトも多いですが、上述したオープンデータの定義には「国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データ」とあるので、「官=オープンデータ/民=ビッグデータ」という区分は誤りであると言えます。
大きな違いとしては、オープンデータが「二次利用を前提とした、(ある程度)整えられた状態のデータ」であるのに対し、ビッグデータは「インターネット上に蓄積された膨大なデータ群で、二次利用や加工を前提としたものとは限らない」ということが挙げられます。
そのため、ビッグデータを収集・分析するには、スクレイピングサービスなどを活用する必要があります。
オープンデータを活用するメリット
誰もが無料で利用することができるオープンデータ。
オープンデータの中には「行政が公開しているデータ=信頼性の高いデータ」も多く、現在、さまざまな企業や機関でオープンデータが活用されています。
官民ともにオープンデータの活用を進めている理由は、主に以下の3つです。
- 自社調査では得られないさまざまなデータを取得できる
- データを元にした新しいサービス開発ができる
- 無料でデータを取得できるため、コストが削減できる
自社調査では得られないさまざまなデータを取得できる
通常、データを取得するには手間や費用をかけて調査を行う必要があります。
データの種類によっては、高額な費用をかけても取得しきれないものもあるでしょう。
そうした貴重なデータがオープンデータとして無料公開されているわけですから、活用しない手はありませんよね。
一切の手間なく、自社では得られないようなデータですら簡単に取得できる。
それこそが、オープンデータが持つ最大のメリットと言えます。
データを元にした新しいサービス開発ができる
オープンデータは、さまざまなサービス開発に活用されています。
たとえば、
- 市が発表する防犯情報をリアルタイムで通知してくれる防犯対策アプリ
- 市の調査研究データを反映し、地域の歴史教育などに使える地図アプリ
- 自治体が発表する大気環境情報をまとめ、PM2.5や気圧などの数値をリアルタイム表示してくれるアプリ
など、サービスの展開幅は実に多岐にわたります。
具体的な活用事例は「オープンデータの活用事例」でもご紹介しています。
無料でデータを取得できるため、コストが削減できる
貴重なデータが数多く公開されているにも関わらず、営利・非営利目的に関わらず無料で利用可能という点も、オープンデータの大きな魅力です。
自社で調査を行う費用も、データを購入する費用もかからないわけですから、オープンデータを利用するための障壁はほぼほぼないといっても過言ではありません。
オープンデータを活用できれば、データ取得にかける費用をゼロにすることができますので、そのぶん他の機能やサービスの充実などに費用を充てることができます。
オープンデータの入手方法

オープンデータの入手方法として代表的なものとして、総務省が運用する「データカタログサイト」が挙げられます。
国や地方公共団体、独立行政法人、民間団体などが公開しているオープンデータを取りまとめたサイトで、27,000件超のオープンデータが閲覧・ダウンロードできます。
(2021年5月時点)
任意のキーワードを用いた検索はもちろん、公開している組織やグループ、設定タグや、データのフォーマットなどでフィルタをかけることも可能です。
気になるデータ、調べてみたいデータがある場合、一度検索してみてはいかがでしょうか。
オープンデータの活用事例
官民それぞれで利活用が進んでいるオープンデータですが、データの幅が広すぎるため、逆に「どう活用すればいいかイメージが湧きづらい…」とお感じの方も多いことでしょう。
そうした方のために、政府CIOポータル内の「オープンデータ100」では、オープンデータの活用事例が多数掲載されています。
この段落では、オープンデータ100に記載されている事例の中から、よりイメージしやすいものをピックアップしてご紹介します。
活用事例①:ココゆれ/大和ハウス工業株式会社

地震大国・日本においては、家を建てようとする人の多くが、建設予定地の地震リスクに懸念を抱いています。
しかし、国が発表しているハザードマップなどは専門性が高く、個人が利用するにはハードルが高いという難点がありました。
大和ハウス工業が開発した「ココゆれ」は、建設予定地の住所を入力すれば、地震発生確率や予測震度を診断してくれる評価ツールです。
ツールの情報源には、地震ハザードステーション「J-SHIS」が保有する地震動予測に関するオープンデータを利用しています。
ユーザーは住所を入力するだけなので、専門的な知識がなくとも、簡単に建設予定地の地震リスクを把握することができます。
専門性の高いオープンデータを、誰もが分かる形に整理しなおして提供している。
活用事例②:働くママ応援し隊/株式会社アイネット

神奈川県横浜市が公開しているオープンデータに加え、独自に収集した「保育施設選定時に必要な情報」をマッシュアップすることで、忙しいママの保育施設選定を応援するサイト「働くママ応援し隊」。
- 保育施設情報(保育施設名称・種別、住所、電話番号、最寄りの交通機関、開所時間等)
- 入所状況情報(入所児童数、入所可能人数、入所待ち人数)
- 「子ども・子育て支援制度」に関する情報 など
「働くママ応援し隊」に利用されている上記のオープンデータは、横浜市のホームページ上でも公開されていますが、あちこちのページで必要な情報を取りまとめ、整理するには大変な苦労を伴います。
また、「働くママ応援し隊」では「区/路線/駅/MAP/アレルギー対応」などの項目から保育施設を絞り込むこともでき、働いていて時間がないママでも簡単かつ分かりやすく保育施設を選定できる工夫がなされています。
複数のデータ(オープンデータ含む)を組み合わせ、ユーザーの利便性を高めている。
データのマッシュアップに加え、検索機能や絞り込み機能を取り入れることで、ユーザーが簡単に目当ての情報を見つけられるようにしている。
活用事例③:HalexDream!/株式会社ハレックス

従来の天気予報アプリへの不満点として、
- 更新タイミングが1日4回しかなく、急変時などに天気予報が外れることが多い
- 地域によって、実際の天気と気象庁発表の天気情報が異なる場合がある
などがよく挙げられます。
オープンデータを取り入れることでこうした不満点を改善した新しい天気予報サービスが「HalexDream!」です。
HalexDream!では、気象庁発表の各種オープンデータを自社サーバー上で収集・分析。
最新の「アメダス観測データ」や「降水ナウキャスト」などのデータもマッシュアップすることで、1日48回もの予報更新を可能にし、時間分解能を向上させることに成功しました。
また、気象庁発表では地理的分解能の予測範囲が5~20kmの格子状であるのに対し、地域ごとの特殊補正を行うことで、予測範囲を1kmの格子状にまで細分化。
地形変化の厳しい地域でも、より正確な天気情報が得られるようになりました。
さまざまなオープンデータを組み合わせ、ユーザーの利便性を高めている。
オープンデータを取得・分析し直すことで、より精度の高い情報を提供している。
オープンデータの活用をサポートしてくれるサービスも
ここまで、オープンデータの活用事例などをご紹介してきましたが、いざ自社でもオープンデータを活用しようとなると、
- どんなオープンデータを
- どのように活かすか
が、すぐにはイメージできないかもしれません。
そんな時は、データの分析や可視化、システム構築などをサポートしてくれる会社に相談してみてはいかがでしょうか。
データの収集・分析を行っている会社であれば、常日頃からあなたの会社に合ったオープンデータの利活用方法を提案してくれることでしょう。
システム構築まで行っている会社であれば、オープンデータの取得環境もばっちり整えてくれますよ。
「オープンデータを活用してみたいとは思うものの、自社での活かし方が分からない」
「自社のこの課題に使えそうなオープンデータを見つけたけれど、取得・分析の段階で行き詰まっている」
そんな時は、データの分析や可視化、システム構築などに対応できる会社を頼ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
貴重なデータが無料で二次利用できる、大変便利な「オープンデータ」。
うまく活用できれば、マーケティング戦略の立案や商品企画、新たなサービスの開発など、さまざまな分野で大いに活躍してくれることでしょう。
とはいえ、オープンデータを上手に扱うためには、データ分析や活用に長けた専門家の助力が必要になります。
データの取得や分析、システム構築などの実績が豊富な会社とも連携し、ぜひオープンデータを自社のマーケティングにお役立てください。