
AIやビッグデータの技術が成長するとともに、データの利用も重視されるようになりました。データそのものの抽出や収集はある程度自動化されています。しかし、分析や効果測定、分析結果に基づいた新規企画の提案などは、人間が行わなければいけません。そのため、データを扱う人材は今後の社会を牽引する存在であり、市場での価値も上がっています。
データを専門に扱うデータアナリストやデータサイエンティストは、技術も知識も兼ね備えておかなければいけません。この記事では、データアナリストやデータサイエンティストに必須な検定や資格を紹介します。データを扱う職業につきたい方や、データを扱う人材が欲しい経営者の方はぜひ参考にしてください。
目次
データアナリストになるために取得すべき資格5選
データアナリストは、経営を左右する重要なポジションです。そのため、高いスキルと広範な知識が求められます。また、ビッグデータやAIが発展している現在では、ITの知識やスキルも欠かせません。企業によっては、客観的なスキルと知識の判別のために資格取得者のみを採用をしているところもあります。国や民間が運営している検定を通過して、資格を取得しておけば就職や転職に有利にもなります。
ここからは、データアナリストとして就職・転職、そして会社で活躍していくために必要な検定や資格を紹介します。

統計検定
統計検定は、統計に関する知識や活用、問題抽出から解決までの技術を問われる検定です。統計の網羅的な知識や扱いは、広い知識と深く考えるスキルが無ければ通過できない検定です。グレードが設定されているので、データアナリストとしての技術を段階的に高められます。
統計データの理解や分析は、データアナリストの技術の基本中の基本です。統計検定を通して、統計データの抽出から分析まで網羅的な技術を磨きましょう。データ自体は数字やグラフで表現されることが多いため、統計検定を通して日本国内だけではなく世界中で利用できる知識や技術が身につきます。
ORACLE MASTER
ORACLE MASTERは、データベースの扱いを専門的に扱う人材を育成するための資格です。データの分析や抽出のためには、データベース無しには不可能です。しかし、データベースの技術も日々進化していて、扱いも複雑で高度化しています。データアナリストは、データベースを活用するシチュエーションが多いです。そのため、データアナリストとしての仕事を進めるためにもデータベースを利用する技術や知識は不可欠です。
ORACLE MASTERの資格を取得する過程で、データベースを操作するために必要な言語であるSQLも身に付きます。SQLはデータベース一般に用いられる言語であるため、利便性が高い言語です。データアナリストとして活躍していくためには、データベースの扱いにも詳しくなっておきましょう。

各クラウドサービスが用意している資格
GoogleやAmazonが用意しているクラウドサービスの扱いに関する検定も、取得必須の資格と言えるでしょう。ビッグデータやAIなどを駆使して得られたデータの多くは、無料で手に入れられます。分析ができるクラウドやデータベースのサービスは、GoogleやAmazonなどの大手企業が無料で提供しています。これらのデータベースを駆使して経営に活かせば、業績の向上につながります。
多種多様なデータは、クラウドサービスを用いたシステム設計や開発などの基本知識がなければ扱えません。大手のIT企業が提供しているサービスを使いこなすためにも、クラウドサービスの資格を通して理解を深めておきましょう。
G検定・E資格
G検定やE資格はJDLA(一般社団法人日本ディープラーニング教会)が発行している検定と資格です。G検定は、AIの全般的な知識や理論面を問われます。AI技術をどのように活用するか、あるいはどのような技術によってデータを抽出しているのか理解しておかなければ、データアナリストとして新規の企画提案はできません。
同じくJDLAが発行しているE資格は、AIのシステムを作る技術を問われる資格です。目的によって抽出したいデータや分析したいデータは異なります。個別の目的に合わせたシステムを作れるような、プログラミングの技術があれば業務もスムーズです。また、全体を指揮する立場であっても、的確な指示を出せる人材になれます。
基本情報処理技術者試験・応用情報技術者試験
「基本情報処理技術者試験・応用情報技術者試験」は、独立行政法人の情報処理推進機構が発行しているITに特化した資格です。技術力の高いIT人材を育てるために設計されている検定試験なので、取得することでITの知識と技術が身につきます。システムの設計から開発まで、エンジニアとしての技術を知ることができるのでデータアナリストとして働くためにも必須の資格と言えるでしょう。
データアナリストとして働くのであれば、システム設計や開発そのものに関わることは少なくなります。しかし、データを分析するために有効なデータの抽出をおこなうためには、用途や目的に適したシステム設計をしなければいけません。ITの知識があることで、技術者に対して適切で明確な指示も出せるようになります。
その他
データアナリストとして新規の企画や効果測定後の提言をするには、IT知識とデータ分析のスキルだけでは不十分な場合もあります。データアナリストはデータを分析できるだけではなく、経営を俯瞰的に観察するスキルも求められます。直接的にはデータ分析に関係ありませんが、「簿記」「TOEIC」「中小企業診断士」も必要な資格として紹介しておきましょう。
「簿記」は、会社経営のお金の流れを把握するために有効です。お金の流れが理解できると、経営のノウハウも習得できます。経営におけるお金の流れを知り、有益な提言ができるようになります。当然のことと思われる方もいるかもしれませんが、
英語のスキルはデータアナリストにとっても必須です。「TOEIC」は、資格となるだけではなく英語のスキルを磨くにも有効です。データアナリストは、最新の情報を取り入れて経営に活かしていかなければいけません。最新の情報や世界中の動向は、英語によって発信されています。いち早く情報を手に入れるためにも、英語のスキルを磨いておきましょう。
難易度が高いものの「中小企業診断士」も学ぶべき資格です。会社を取り巻く環境自体が常に変化するため、会社自体も環境や時代に合わせて変化していかなければいけません。中小企業診断士は、経営に関する知識を網羅的に学ぶことが可能です。経営判断は難しいものですが、理論的な提案ができれば新規施策や企画の成功確率も上がります。

データアナリストの仕事内容と年収
データアナリストの仕事内容は、データの分析がメインです。広告・宣伝に対する効果測定や、顧客管理のための消費者動向のデータ測定をおこないます。その結果を経営陣の施策資料として提出します。しかし会社によっては、データアナリストからの意見や提案も求められることがあるため、会社にとって重要な仕事を担う立場です。
転職サイトの資料によれば、データアナリストとの平均年収は600万円程度とされています。一般的なサラリーマンよりも高収入です。しかし、データアナリストは、経営に対する新規企画の提案や新しい価値を生み出し得るポジションでもあります。提案した企画が成功すれば、年収もさらに上げることは可能です。就職してからも、さまざまな視点や社会動向などの情報を集め、スキルアップをし続けることが年収を上げることにつながります。
検定は就職後に役立てるためのもの
これまでに、データアナリストになるため、就職や転職に必須な検定や資格の紹介をしてきました。しかし、検定や資格の取得を就職・転職の目的と考えるべきではありません。
検定や資格は客観的に知識や技術があることを証明するものであるだけではなく、会社にとって有益な人材として働くために役立てるものでもあります。検定や資格試験は単に資格を所持するためではなく、広く会社の経営や社会への貢献に役立てるものと位置づけるべきです。検定や資格試験で得た知識や技術で、会社に貢献できるデータアナリストを目指しましょう。

データアナリストとデータサイエンティストは何が違う?
データアナリストは、自社が保有しているデータの分析を専門とする職種です。多くの場合は、経営陣に対して施策の効果測定結果や消費者の動向を探りだし、結果を伝えることが業務の中心です。データサイエンティストは、ビッグデータやAIから得られたデータを科学的な研究や知見に基づいた提案をする職種です。このように考えると、データアナリストは分析を専門とした職人的な立場です。
便宜上の説明では、データアナリストとデータサイエンティストは定義されていますが、実際の仕事現場では明確な分類はされていません。特に中小規模の会社では、データアナリストがマーケティング戦略やセールスへの企画提言をおこなうこともあります。データを扱う職種を選ぶのであれば、厳密に仕事内容を限定するのではなく、広範囲の仕事を兼任すると考えておきましょう。
データアナリストの需要は増加する
データアナリストの需要は増加傾向です。データを重要視するデータエコノミー社会の到来が、データアナリストの需要を増やしている要因です。データエコノミー社会では、データこそが資源であり、データの活用によって利益を大きく伸ばせます。データを分析して提言できる人材は、経営そのものを左右する重要なポジションなのです。
データアナリストになるためには、各種の検定や資格を取得しなければいけないため決して簡単ではありません。しかし、需要の割に人材が足りていないからこそ、データアナリストになれば一つの会社だけではなく、広く社会にとって貴重な存在になれます。

まとめ
アメリカや中国の大手企業が証明しているように、データは資源であり、会社の利益に直結しています。データの分析と選別によって、会社の経営は左右されると言っても過言ではありません。そのため、データアナリストやデータサイエンティストは、今後の会社経営に無くてはならない必須の職種です。データを扱う人材は、経営を左右するためその職務の責任は重く高い技術や広い知識が要求されます。データアナリストとして働くためにも、検定や資格を通してスキルアップを目指さなければいけません。
今回はデータアナリストに必須の資格として、「統計検定」「ORACLE MASTER」「各クラウドサービスが用意している資格」「G検定・E資格」「基本情報処理技術者試験・応用情報技術者試験」を取り上げました。その他にも、経営に関わる知識を付けておけば、データアナリストとして多角的な提言や新しい企画を計画できます。データアナリストは、ハードルも高いため人材不足でもあります。そのため、優秀なデータアナリストを雇用することができない会社もあります。データアナリストを雇うことができない場合は、データ分析を専門にしている会社に外注することも検討しましょう。