
警察白書(令和二年版)によれば、全国の警察が認知している刑法犯は748,559件、検挙された件数は294,206件。検挙されている割合は約39.3%であり、警察が認知していない件数がさらに多いことを踏まえると、検挙されている割合はさらに減ります。つまり、検挙されずに見過ごされている犯罪は60%を超えることを意味しています。そこで注目されているのがビッグデータの活用です。ビッグデータを使用すれば、未解決の犯罪を解決することが可能です。本記事では犯罪規制に活用されているビッグデータの事例をご紹介します。犯罪規制やセキュリティに関する業務に従事している方は、ぜひ参考にしてください。
ビッグデータを活用した犯罪規制事例
日本国内は他の先進諸外国と比較してDX化に遅れていると言われています。コロナ禍の蔓延防止対策でも専用アプリは普及しませんでした。多くの国で普及しているキャッシュレス決済においてもその使用者が増加したとはいえ、中国のように90%を超える使用率に届きません。しかし、日本国内でもビッグデータを活用して犯罪規制を行っている事例もあります。いくつかご紹介しましょう。
顔認証にビッグデータを使用してセキュリティを強化
顔認証にビッグデータを使用して、セキュリティの強化をおこなうのは犯罪規制に役立ちます。ライブやコンサートだけではなく、オフィスへの出勤時や、帰宅時のオートロックにも顔認証を導入することでセキュリティの行き届いた社会づくりができます。また、銀行ATMでも顔認証を取り入れれば、銀行口座を持っている本人以外にお金を動かすことができなくなります。暗証番号の記入だけではなく、個人特定のための顔認証も導入して詐欺の防止に繋げられます。
決済時にビッグデータを活用して個人の信用度を確認
キャッシュレスにすれば、決済時にビッグデータを活用して個人の信用度を確認できます。キャッシュレス決済によって、個人のお金の出し入れのデータが蓄積されていきます。個人でのお金の出入りが管理されていれば、ローンやクレジット決済も便利です。信用度の審査が迅速に済み、個人での支払い能力を超えたローンやクレジット決済を防止して、債務不履行のリスクを減らせます。また、犯罪に使用されるお金を抑えることも可能になります。
災害時の効率的な救援活動
DX化すればビッグデータによって、災害時に効率的な救援活動をおこなえます。大規模な火事や自然災害が生じた場合、情報が錯綜して多くの人々が混乱してしまいます。そのような災害状況で、人の流れや被害状況を把握することは救援活動の第一ステップです。ビッグデータによって状況を迅速に把握し、インフラの整備や医療スタッフの配置を効率化します。地震が生じた場合でも、支援物資を効率的に過不足の無い配布ができます。
監視カメラにAIとビッグデータを搭載して犯罪予測
日本の会社ライフコーポレーションでは、監視カメラにAIを搭載することで、万引きやスリ、盗撮などの犯罪を予測します。人は環境や意図によって微妙に行動が変化します。犯罪をおこなう人の多くは、実際に犯罪行為をおこなう前に不審な行動をとる傾向があります。経験のある警察が、犯人を見出すことができるのはこういった行動を見逃さない「勘」があるからです。監視カメラにAIを搭載すると、カメラに映っている人の行動を高速度の計算で予測できます。AI搭載のカメラを設置することで、犯罪行為を未然に察知して防ぐ効果が実証されています。
GPSなどの位置情報で子供の危険を回避
GPSなどの位置情報で子供の危険を回避するデバイスもすでに販売されています。ドリームエリアが開発した「みもりGPS」は、子供に専用のデバイスを持たせることで行動を把握できます。「日本不審者情報センター」のデータベースと連携し、不審者の目撃情報が多い場所に子供が入ると警告メッセージを受信します。子供に対する犯罪は、同一の時間と場所で起こりやすい傾向にあります。保護者による最新の目撃情報や口コミデータを活用して、子供にとって危険な地域を特定しています。危険地域を特定しているため、未然に犯罪を防げます。
DX化とビッグデータ活用は治安の維持に繋がる
DX化とビッグデータの共有や活用をすることで会社への信頼度の向上や、治安の維持を効率化できます。日本では個人情報保護の観点から、ビッグデータを使用した犯罪規制には反対意見が多い傾向にあります。しかし、日本国内では、いまだに詐欺の事件が多いのも事実です。振り込め詐欺をおこなうのは、同一の犯人や組織であることも多いです。電子決済に切り替えれば決済時に常に個人の信用情報にアクセスできます。個人の信用情報や過去の犯罪歴を確認すれば、詐欺の防止が可能です。
ビッグデータのスクレイピングにより分析に適したデータを収集
個人情報保護の倫理的な問題が解決すれば、ビッグデータ活用の技術的な問題になります。ビッグデータを活用するにはまずビッグデータを収集する必要があります。しかし、ビッグデータの収集とデータ分析は、専門的な技術と経験のある分析人員が必要です。ネット上にはすでにビッグデータが溢れていて、分析に向かないデータの量も膨大です。データ分析をする前のスクレイピングのプロセスも大事です。データスクレイピングから分析ができるまでの仕組みをあらかじめ整えておくべきです。
まとめ
日本では、犯罪の6割ほどが未解決事件となっています。しかし現在、DX化やビッグデータの活用は、犯罪規制や予防につながる技術として応用されつつあります。DX化が遅れていると言われている日本国内でも、DX化やビッグデータを活用した犯罪規制のサービスが活用されています。ただし、個人情報保護の観点から、ビッグデータを活用した技術やサービスが抑えられているのが現状です。今後、個人情報保護の観点が修正されれば、ビッグデータの犯罪規制への活用がより普及することが予想されます。ビッグデータ活用が普及すれば、データの収集や分析が重要度を増します。すでにネット上には膨大な量のデータが溢れておりますが、Webデータを収集するためのスクレイピングには手間も時間もかかってしまいます。スクレイピングを専門にしている会社もあるので、データ収集の部分は委託して効率的に犯罪規制サービスの企画をするとよいでしょう。