
不動産に関わる情報を取得する方法として「レインズ」と呼ばれる仕組みの活用が挙げられます。これは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているシステムです。不動産取引に関する情報も多く管理されていて、販売中の物件に関する情報や、今までに物件がいくらで取引されたのか、などを確認できます。
不動産の情報収集に役立つものではありますが、利用者に制限があるなど便利とは言い切れません。今回はレインズの基本から、不動産データを活用したい場合にどのような選択肢があるのかについて解説します。
目次
レインズとは
レインズは国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているサービスです。会員のみが閲覧可能ですが、貸出中の物件情報や成約済の売買、賃貸契約などが把握できます。まずは、不動産の売買情報などを検索、照会できるWebサイト「レインズ」について、その仕組みや掲載される情報、閲覧の対象者を紹介します。
レインズの仕組み
レインズは地域ごとに分かれており、4つのWebサイトが以下のとおりそれぞれの団体によって運営されています。
Webサイト | 運営団体 | 対象地域 |
---|---|---|
東日本レインズ |
(公財)東日本不動産流通機構 |
北海道、東北、関東、甲信越の計17都道府県 |
中部レインズ |
(公社)中部圏不動産流通機構 |
中部7県 |
近畿レインズ |
(公社)近畿圏不動産流通機構 |
近畿6府県 |
西日本レインズ |
(公社)西日本不動産流通機構 |
西日本、四国、九州の18県 |
会員の不動産会社のみが閲覧可
レインズは運営団体の各不動産流通機構の会員しか利用できません。会員となれるのは、宅地建物取引業者のみであるため、その資格を持つ不動産会社のみが閲覧できます。
レインズに掲載される情報
レインズには不動産の販売中、貸出中の物件情報と成約済みの売買、賃貸契約の情報が掲載されます。会員である不動産会社が不動産を売りたい、貸したい顧客に代わってレインズに情報を登録し、それらが共有される仕組みです。
また、取引が成約した場合には、成約価格などの情報がレインズ上に残されます。取引の情報が残ることにより、以降の取引で適正な価格の参考とすることが可能です。
なお、顧客から不動産会社に不動産の売却を依頼する場合、媒介契約が結ばれるのですが、一般媒介契約以外の場合には、不動産会社はレインズに不動産の情報を登録する義務があります。つまり、多くの不動産売却情報がレインズに集まる仕組みが作られているのです。
レインズを活用するメリット
不動産データの収集に、レインズを活用するメリットは以下のとおりです。
全国の情報をいち早く閲覧できる
レインズには、日本中の不動産取引がほぼリアルタイムで管理されています。そのため、レインズの内容を確認しておくことで、日本中の不動産情報をいち早く閲覧することが可能です。誰でも閲覧可能な不動産情報サイトなどは、情報が公開されるまで待機しなければなりません。しかし、レインズならば、そのような待機時間がほぼ発生しないことがメリットです。
複数の不動産会社を調査する必要がない
多くの不動産会社が加盟しているため、参照するだけでそれぞれの情報を簡単に閲覧できます。つまり、それぞれの不動産会社について、細かく調査する必要がないことがメリットです。
本来、不動産のデータを集めるためには、それぞれの不動産会社が提供する情報をそれぞれ収集しなければなりません。しかし、レインズならば情報が集約された状態であるため、手間を大きく削減できます。
大まかな相場を把握できる
媒介契約制度に基づいた安全な不動産取引がレインズの前提です。そのような取引内容が、長年にわたって蓄積されているため、取引の大まかな相場を把握できます。また、過去のデータも閲覧できることから、相場の変動についても確認が可能です。
不動産を検索するサービスなどはレインズ以外でもありますが、直近の情報が中心で、過去の相場が確認できるものは限られます。過去も含めて、相場の妥当性を評価できるという点が他にはないメリットです。
レインズのデメリット
レインズにはデメリットもあるため。それらも理解しましょう。
不動産会社以外は見れない
非常に大きなデメリットとして、「レインズとは」で解説しましたが、レインズは事前に登録した不動産会社しか見れません。仮に不動産関係の友人などがいたとしても、レインズに加入していなければ情報を提供してもらうことはできません。
そのため、レインズはデータ収集に役立ちますが、閲覧する権限がない立場の人が多くないので、活用したい人が活用できないのが現状です。
専門用語が多く知識が必要となる
業界の関係者向けに提供されているため、専門用語が多く用いられています。そのため、事前の知識がなければ、データを見ても部分的にしか理解できないことはデメリットです。レインズのデータを活用したい場合は専門用語への理解を深める必要があります。
使い勝手が良くない
一部のユーザーのみを対象としたツールであり、使い勝手が良くないというデメリットがあります。レインズは万人向けの、ユーザーインターフェースを重視したものではなく、機能だけを提供しているものです。業界関係者の口コミなどを探すと、利便性の悪さに言及しているものが見つかります。もし、レインズを活用できるようになった場合は、利便性の悪さを覚悟しておいた方が良いでしょう。
レインズのCSV提供停止
以前のレインズには、掲載されているデータを、CSV形式で一括ダウンロードできる仕組みがありました。しかし、データの二次利用などの不正を防ぐために、2022年8月にはこの機能が廃止されています。つまり、レインズを利用して大量のデータを閲覧することはできますが、公式の機能でデータをダウンロードして活用することは難しい状況です。もし、データ分析をするために不動産データをCSVで手に入れたい場合はレインズ以外のサービスを活用するとよいでしょう。レインズほど早くはありませんが、不動産ポータルサイトにはレインズに掲載されているデータと同様のデータが掲載されています。これらをWebスクレイピングすることで、CSV形式でデータを収集することが可能です。
レインズ以外の不動産データが見られるサイト
レインズは不動産データを確認できますが、それ以外のサイトでも不動産データは手に入ります。
不動産データプロ(アットホーム)
不動産データプロは、不動産データを総合的に提供する「at home(アットホーム)」を運営している、アットホーム株式会社が提供する不動産データベースのサービスです。不動産の相場情報や土地の履歴、不動産周辺の情報などを確認したり、まとめられたデータを閲覧したりできます。また、駅の乗降客数などの情報も付帯されていることが特徴です。
また、情報を収集できるだけではなく、パンフレット作成ツールなども用意されています。不動産サービスの大手らしく、総合的なサービスであることが特徴です。
ホームズ
ホームズは「不動産アーカイブ」として、過去に掲載された不動産情報と提携先の地図情報などを集積し、データベースサービスとして提供しています。過去の情報が大量に集約されているため、現在は募集していない不動産の情報も収集が可能です。
また、自分たちで閲覧するだけではなく「不動産データソリューション」として、データを加工して提供するサービスも提供しています。
SUUMO
Suumoは「SUUMO物件ライブラリー」として、過去の不動産データを含めた「不動産物件の資料館」を提供しています。非常に多くの不動産データが掲載されているため、検索することで必要な情報を得られる仕組みです。ただ、検索機能しか存在しないため、それらのデータを収集したい場合にはツールなどを活用する必要があります。
REINS Market Information
REINS Market Informationは、レインズの情報を元にして、不動産の成約価格を確認できるWebサービスです。不動産の詳細な名称や場所は確認できませんが、概ねのエリアからどの程度の広さ、間取り、構造、築年数の物件がいくらで売買されたか確認できます。レインズの情報には基づいているものの、専有面性は「20~25平方メートル」などとマスクされているため、詳細に情報を得ることはできません。
有料で不動産データを提供しているサービス
有料で不動産データを提供しているサービスを紹介します。
不動産データクラウド
不動産データクラウドは、買取再販会社や仲介会社に向けて、不動産データを提供しているクラウドサービスです。月額料金を支払う必要はありますが、過去10年分の取引データを提供してもらうことが可能です。また、専用の画面で情報を閲覧できるため、ユーザーインターフェースの良さなども魅力でしょう。ただ、情報源などは公開されていません。
マンション•土地•戸建データ提供サービス
マンション•土地•戸建データ提供サービスは、不動産データを大量に集約したデータベースサービスです。掲載されている情報は非常に多く、他社が提供していない情報も含めていることを魅力としています。分譲マンションデータについては網羅率約99%とデータ量をアピールしたサービスです。ただ、費用などの掲載はなく、見積もりを取得しての確認が求められます。
不動産データを一気に集めたいならスクレイピングがおススメ
不動産データを一気に集めたいならば、Web上に公開されているデータをスクレイピングで収集する方法がおすすめです。スクレイピングならば、事前に設定しておくことで必要なデータを随時自動的に収集できます。
PigDataが提供するスクレイピング代行サービスは不動産サイトから不動産データの収集が可能です。スクレイピングを専門サービスとして提供しているため、実績もあり安心してご利用することができます。また、カスタマイズ可能なサービスのため、単ににデータを提供するだけではなく、CSV、ダッシュボード、APIなど状況に合わせたデータ提供が可能です。
まとめ
これからの時代、不動産業界では大量のデータを分析して、ビジネスに活かしていくことが重要です。ただ、レインズは利用の対象者が限られ、なおかつCSVでのデータダウンロードができなくなりました。そのため、レインズだけでのデータ活用は難しくなっています。
そこで活用してもらいたい技術が、Webからデータを収集するスクレイピングです。弊社のスクレイピング代行ならば、Webサイトに公開されている不動産データを自動的に収集できます。また、CSV出力も可能であるため、分析ツールなどに取り込んで活用いただくことも可能です。