
不動産業界の今後が気になる方は多いでしょう。
近年はビジネス環境の変化が激しさを増しており、不動産業界も例外ではありません。外部環境や顧客ニーズの変化に対応していかなければ、淘汰されてしまう可能性もあるでしょう。
本記事では、不動産業界の現状と2024年・2025年の状況変化や今後・将来の見通し、2025年に不動産業界が行うべき対策について詳しく解説します。不動産業界の今後や生き残るために必要なことを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
2024年の不動産業界については下記をご覧ください。
目次
不動産業界とは

不動産業界とは、土地や建物などの不動産を扱う業界のことです。大きく分けると以下の4つに分類されます。
- 開発
- 流通
- 管理
- 投資
順に解説します。
不動産開発
不動産開発(デベロッパー)は、マンションや商業施設、オフィスビルなどを企画する業種です。人口密度や立地条件など複数の要因を総合的に考慮して、企画や土地の仕入れ、建設の委託といった建物を完成させるまでの幅広い業務を行います。
不動産流通
不動産流通は、土地・物件の貸し借りや売買をサポートする業種です。大きく以下の2つに分けられます。
- 不動産仲介:貸したい人と借りたい人や、売りたい人と買いたい人をマッチングさせる
- 不動産販売代理:不動産の持ち主から販売を委託され、広報や営業活動を行う
不動産管理
不動産管理は、オーナーの所有する物件の管理を代行する業種です。以下の幅広い業務を担当して、物件の効率的な活用をサポートします。
- 建物や設備のメンテナンス
- 入居者対応
- 空室時の集客
- 清掃
- トラブルの対応
不動産投資
不動産投資は、集めた資金で不動産を購入して、その不動産から得られた利益を投資家に還元する業種です。主に、マンションやオフィスビル、商業施設などに対する投資を行います。
不動産業界の現状

続いて、人口や市場規模、新築住宅の着工数などのデータを基に、不動産業界の現状を解説します。
人口
総務省が発表した「人口推計」によれば、2025年1月1日時点(概算値)の総人口は1億2359万人で、2024年1月と比べ56万人減少しています。また、2024年8月1日時点(確定値)と前年の同月を比較すると、64歳以下の人口が減少した一方で、65歳以上の人口は増加しており、少子高齢化が進んでいます。
参考:人口推計|総務省統計局
また、以下は国土交通省が発表した建築着工時や購入時、入居時における世帯主年齢の調査結果です。

上記によれば、注文住宅や分譲戸建住宅などを購入する世帯主の年齢は、30代・40代が最も多くなっています。
日本では総人口だけでなく、住宅購入のメインターゲットとなる30代・40代が減少しています。
市場規模
財務省が発表した「年次別法人企業統計調査(令和5年度)」によれば、2023年度における不動産業の売上高は、直近5年で最高額となっています。具体的な売上高は以下の通りです。
- 2019年:45.4兆円
- 2020年:44.3兆円
- 2021年:48.6兆円
- 2022年:46.3兆円
- 2023年:56.5兆円
多少の増減はありますが売上高は増加傾向で、50兆円前後の多大な市場規模を誇っています。
参考:年次別法人企業統計調査(令和5年度)結果の概要|財務省
新築住宅の着工数
新築住宅の着工数は、ほぼ横ばいか多少の減少傾向となっています。以下は、国土交通省が発表した新設住宅着工戸数の推移データです。
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出典:令和5年度 住宅経済関連データ 1 新設住宅着工戸数の推移 (1)新設住宅着工戸数の推移(総戸数、持家系・借家系別)|国土交通省
上記によれば、ピークの2006年における124.9万戸から2009年にかけて大きく減少し、そこから多少の増減を重ね2022年では86.1万戸となっています。
2024年と2025年の不動産状況の変化

続いて、2024年と2025年の不動産状況の変化について解説します。
金融政策
日本銀行は、2016年から行ってきたマイナス金利政策を2024年3月に解除して、同年7月に政策金利の引き上げを行いました。また、2025年1月23日・24日の金融政策決定会合にて、政策金利をこれまでの0.25%から0.5%に引き上げることが決定されました。政策金利が引き上げられれば、ローン金利も高くなるため、住宅購入者が減少する可能性があります。
法令の改正や施行
日本では毎年法令の改正や施行が行われており、不動産業界に関係するものも存在します。とくに、不動産業界では複数の一般社団法人がカーボンニュートラルなど環境問題への対応を求めており、以下の省エネに関する法律の改正・施行が2025年4月に予定されています。
- 建築物省エネ法
- 改正建築物省エネ法
不動産業界関係者は、上記を十分に理解して対応するとともに、顧客からの質問に答えられる準備が必要です。
投資需要
2024年の日本国内における不動産投資は、好調を維持しています。以下は、ニッセイ基礎研究所が発表した、収益不動産の資産規模と用途別資産規模の推移データです。

引用:わが国の不動産投資市場規模(2024年)~「収益不動産」の資産規模は約315.1兆円(前回比+25.7兆円)。すべての用途が前回調査から拡大|ニッセイ基礎研究所
上記によれば、2024年における収益不動産の資産規模は約315.1兆円(前回比+25.7兆円)でした。好調をけん引した最大の要因は、オフィスへの投資です。新型コロナウイルス感染症の影響で定着したリモートワークですが、対面でのコミュニケーションにおける重要性が再認識され、オフィスとリモートで働くハイブリッドワークを前提にした空間づくりに注目が集まっています。東京を中心に再開発も進んでおり、今後も投資需要が伸びるでしょう。
為替
2024年は一時1ドルが160円を突破する、34年ぶりの円安となりました。2025年に入ってからも1ドル160円程度の為替レートとなっています。円安は住宅の新設・リフォームの材料や、重機を動かすエネルギーなどのコストを高める原因となります。コストが増えれば、消費者への提供価格も高まるため、購入やリフォームを躊躇する消費者が増える恐れがあるでしょう。
インバウンド需要と外国人・企業投資
新型コロナウイルス感染症からの回復や円安により、訪日外国人が増加しています。日本政府観光局(JNTO)が発表したデータによれば、2024年の訪日外国人は36,869,900人で、過去最高を記録しました。また、2024年12月は3,489,800人で単月の過去最高記録となっています。
参照:訪日外客数(2024年12月および年間推計値) |日本政府観光局
訪日外国人が増えるとともに、宿泊施設への投資が増加しています。また、国内企業だけでなくマリオットやヒルトンなどの有名な外資系ホテルも、2024年に開業しました。今後も宿泊施設や商業施設など、インバウンド向け不動産の投資が増加すると予測されます。また、日本は他国と比較して外国人が土地購入しやすいため、外国企業の投資も増えるでしょう。
不動産業界の今後・将来の見通し

続いて、不動産業界の今後・将来性を考察した内容について紹介します。
人件費や原材料費の高騰
労働人口や不動産業・建設業に従事する人が減少すれば、人件費の単価が高くなります。また、円安により原材料も高騰しており不動産価格が高まる原因になるでしょう。価格が高くなる分、付加価値の提供が重要です。
顧客ニーズの多様化
働き方や生活が多様化すれば、住宅に求めるニーズも多様化するでしょう。また、VR内見やSNSでの物件紹介など、PRの仕方も多く存在します。いち早く顧客ニーズを掴むとともに、柔軟な対応が求められるでしょう。
最新テクノロジーによる仕事内容の変化
インターネットの普及やAIの登場により、多くの業界では働き方の変化が起きており、不動産業も例外ではありません。例えば、宅地建物取引業法の改正で、媒介契約書や重要事項説明書、売買・賃貸借契約書における電子契約の利用が解禁されました。今度、最新のテクノロジーにより仕事内容や働き方の変化が加速するでしょう。
不動産業界におけるAI利用の事例を知りたい方は、以下をご覧ください。
省エネ設備の需要増加
不動産は環境問題への注目が高い業界です。また、日本では物価高が問題となっており、水道光熱費の値上げもニュースで取り上げられています。今後、環境問題への配慮と生活費を抑えるための、省エネ設備需要が増加すると予測されます。
住宅リフォームやリノベーション需要の増加
近年は地方創生の動きが活発化しており、子育てなどがしやすい環境の整備や補助金の提供で、地方移住を促す自治体が少なくありません。中には、移住の際に行う住居のリノベーションに対して、追加の補助金を支給している自治体も存在します。
また、古くなったマンションをリノベーションして、賃貸や販売するケースも多くあります。今度、住宅リフォームやリノベーション需要の増加が見込まれるでしょう。
高齢者向け住宅需要の増加
高齢化が進む日本において、高齢者をターゲットにしたビジネスが増加しています。不動産業界でも、今後高齢者の住みやすさを重視した住宅需要が増加するでしょう。例えば、手すりの充実やヒートショック防止に向けた浴室への暖房などが考えられます。
セカンドベスト需要の増加
都心の地価や家賃が高騰しているため、セカンドベスト需要が増加しています。セカンドベストとは、ベストな立地に次いで価値が維持されると見られる例えば以下のエリアを指します。
- 東京23区の駅から徒歩10分~15分圏内
- 千葉・神奈川・埼玉で国道16号圏内の徒歩7分~10分圏内のエリア
上記のエリアが高騰すれば「サードベスト」の需要が高まる可能性もあるでしょう。
不動産投資や不動産クラウドファンディング需要の増加
老後2,000万円問題などが取りざたされており、将来に向け投資を行う人が増えています。また、少額から不動産投資ができるサービスや不動産クラウドファンディングが登場し、不動産投資をしやすい環境の整備が進んでいます。今度、不動産投資やクラウドファンディングの需要がさらに増加するでしょう。
リースバックやリバースモーゲージ需要の増加
老後における生活資金の問題により、リースバックやリバースモーゲージ需要の増加も予想されます。以前と比べてさまざまな商品が展開されているため、リスクはあるものの利用しやすくなっています。
不動産業界が抱える課題

好調の兆しも見える不動産業界ですが、課題も抱えています。ここからは、不動産業界が抱える課題について解説します。
DXの遅れ
不動産業界はDXの導入が遅れている業界だといわれています。実際に、不動産業界は伝統的な業務のやり方が多数残っており、書面も多くなかなかデジタル化が難しい企業が少なくありません。古いシステムを使い続けている企業も多数あります。書面業務やレガシーシステムの活用は、業務効率を下げる原因となるでしょう。
働き手不足
不動産業界は深刻な働き手不足に悩まされています。厚生労働省が発表した令和5年度の「産業、就業形態別入職者・離職者状況」によれば、不動産業・物品賃貸業の入職者数が130.1万人なのに対して、離職者数が141.1万人でした。離職者が入職者よりも約11万人多い結果となっています。
また、同データによれば、動産業・物品賃貸業における入職超過率は全業種中でワースト3位です。働き手が不足すれば、サービス品質や企業競争力の低下を招くでしょう。
参照:産業、就業形態別入職者・離職者状況|厚生労働省
不動産業界で今後生き残るためには

続いて、今後不動産業界で生き残るために必要なことについて解説します。
自治体や他業種など外部パートナーとの連携
不動産業界で今後生き残るためには、自治体や他業種など外部パートナーとの連携が重要です。連携してお互いの強みを活かすことで、これまで以上の価値発揮や顧客満足度の向上が実現できます。
例えば、地方自治体と連携することにより、移住者に対する空き家の紹介やリノベーションの提案・実施が可能になります。他業種の企業と連携すれば、外国人や高齢者向けの不動産賃貸・売買を行う際に、生活をサポートするサービスも併せて提供でき付加価値が向上するでしょう。
データの収集と活用
不動産業界で企業競争力の向上を目指すには、データの収集と活用も欠かせません。近年は、ビッグデータなどさまざまな情報を活用して経営判断を行い、売上向上や業務効率化を実現している企業が多く存在します。
GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)が代表するように、データを効果的に活用する企業が、市場で競争優位性を持つ時代になっています。
日本において、データ活用企業のほとんどが内部データのみを活用していますが、競争優位性を高めるには外部データとの組み合わせが重要です。例えば、Web上のデータを分析することで、市場の動向や顧客ニーズを正確に把握でき、適切なサービスを展開可能です。
PigDataでは、外部データ収集をサポートするスクレイピング代行を行っています。また、データ活用のお悩みを解決するコンサルティングから実際の活用まで全面的にサポートしています。
なお、データの活用事例を知りたい方は以下をご覧ください。
⇒ビッグデータの効果別活用事例24選!メリットや活用の流れ、成功のポイントを解説
DX推進
アナログ業務が多く残るとともに、人手不足が問題視されている不動産業界で、生産性を上げるにはDX推進も求められます。他業界と比較してDX推進が遅れている不動産業界においても、近年はDXに関する注目度が高まっています。以下は、不動産テック7社と不動産メディアが共同企画した「不動産業界のDX推進状況調査 2024」の結果です。

出典:【不動産業界のDX推進状況調査 2024】不動産テック企業7社・不動産メディア共同企画 ~「DX推進すべき」が99%で過去最高!75%以上の企業がDXによる効果を実感~|WealthPark
上記によれば、DXを推進すべきと回答した企業は99.0%で過去最高を記録し、DXに取り組んでいる・取り組む予定の企業は64.9%でした。また、同データによればDX推進を行った企業のうち、75.7%が効果を実感しています。

出典:【不動産業界のDX推進状況調査 2024】不動産テック企業7社・不動産メディア共同企画 ~「DX推進すべき」が99%で過去最高!75%以上の企業がDXによる効果を実感~|WealthPark
DXの推進には手間とコストがかかる一方で、業務効率化や売上向上が見込めます。例えば、Webサイト更新チェックツールを活用すれば、営業効率化や情報収集自動化を実現できます。具体的には「TOWA」を活用すると、サイトの更新があった際に自動で通知してくれるため、今まで一つ一つ行っていた手作業を最大90%削減できるなど大幅な業務効率化に役立ちます。
なお、不動産テックの概要やサービスを知りたい方は、以下をご覧ください。
専門性や信頼性の向上
従業員の専門性や信頼性の向上も欠かせません。不動産業界の商品・サービスの多くが高価格です。専門性が低く顧客の不明点や不安点を解決できなかったり、信頼を得られなかったりすれば、契約してもらえないでしょう。最新の法律や制度に関する豊富な知識と、丁寧な接客などが求められます。
新規ニーズの開拓やサービスの多角化
消費者のニーズが多様化しており、日々新たな価値観も生まれているため、それに合わせた新規ニーズの開拓やサービスの多角化も重要です。以下のキーワードを基に、新たなビジネスチャンスを見出している不動産企業も存在します。
- シェアリングエコノミー
- ブロックチェーン
- ESG
- SDGs
2025年に不動産業界が行うべき対策

最後に、2025年に不動産業界が行うべき対策を紹介します。
方向性の検討
まず、自社がどのような価値を顧客に提供するかや、なにを目指すかなどの方向性を検討すると良いでしょう。例えば、サービスを多角化するか既存事業の強みを伸ばすのかなどを決定します。
また、決めた方向性に対していつまでになにをするかの検討・決定も重要です。スケジュールが決まらなければ、日々の業務に忙殺され取り組まずに時間が経ってしまう恐れがあります。
Webデータの活用
生き残りに向け、新規ニーズの開拓やサービスの多角化が必要ですが、新たなビジネスモデルの創出・多角化は簡単ではありません。多くの企業ではリースが限られており、新たなことを始めるハードルが高いでしょう。また、正確にニーズを掴まなければ、手間とコストをかけても失敗してしまいます。まずは、ニーズを掴むためにWebデータ収集・活用から始めると良いでしょう。
ただ、データ活用は目的の決定から始まり、データ収集・整理、分析・活用と続きます。時間がかかる施策であるため、2025年に取り組みを開始して他社と差別化することが重要です。
なお、データ活用について詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
DX推進による生産性の向上と魅力ある企業づくり
DX推進による生産性の向上と、魅力ある企業づくりへも取り組むと良いでしょう。不動産業界における人手不足の原因の一つは、長時間労働や休日出勤などのブラックな労働環境に関するマイナスイメージです。
DXを推進すれば、生産性の向上だけでなく魅力ある企業となり、採用力の強化や離職率の低下が期待できます。優秀な人材を獲得しやすくなり、経験豊富な人材も長期間働いてくれるでしょう。
なお、不動産業界のDXに関する詳細は以下をご覧ください。
人材の確保と育成
不動産業で生き残るには、従業員の専門性や信頼性の向上も欠かせないため、2025年は人材の確保と育成にも力を入れましょう。ただ、人の成長には時間がかかるため早くから取り組むことがおすすめです。今後、AIの活用などを含めたDXが進めば、人の価値が他社と差別化する上でより重要になるでしょう。
外部人材の有効活用
データ活用やDX推進などには専門人材が必要ですが、自社での確保は簡単ではありません。フリーランスや副業人材が増加しているため、雇用に固執せず外部人材の力を有効活用しましょう。外部人材を効果的に活用すれば、スピード感を持って施策を進められます。個人で活動している人の信頼性が疑われる場合には、サポートしてくれる企業の活用がおすすめです。
まとめ

2025年1月の日本銀行による政策金利の見直しを皮切りに、2025年も不動産業界には多くの変化があるでしょう。不動産業界で生き残るには、データ活用やDXの推進、新規ニーズの開拓とサービスの多角化などにより、変化に対応していくことが重要です。
やるべきことは多くありますが、まずは、売上向上や業務効率化が期待できる、DX推進とデータの収集・分析に力を入れると良いでしょう。質の高いデータの収集・活用を行えば、多くの情報を得られます。
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