ビッグデータの活用事例を知りたい企業は多いでしょう。コンピューターの性能向上などにより、ビッグデータの活用が可能となり、利用している企業が少なくありません。ビッグデータを有効活用すれば、売上や顧客満足度の向上、業務効率化などのメリットを得られます。
本記事では、効果別ビッグデータの活用事例24選や活用の流れとポイントについて解説します。ビッグデータを活用している他社事例を知りたい方、自社で活かしたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ビッグデータとは

ビッグデータ(Big Data)とは、さまざまな種類や形式のデータを含み、従来の技術では記録・保存・解析が困難だった巨大なデータ群のことです。具体的には、SNSやWebサイトアクセスの解析データ、顧客データなどが該当します。ビッグデータに関する明確な定義はありませんが、以下4Vの特徴を有するものとされています。
- Volume(量)
- Velocity(速度)
- Variety(多様性)
- Veracity(正確性)
ビッグデータが注目されている理由
ビッグデータが注目されている背景には、インターネットの普及とコンピューターの性能向上があります。インターネットが普及する以前は、生成されるデータ量が多くありませんでした。ただ、インターネットが世界中に普及したことで、WebサイトやSNSの投稿・閲覧履歴、ECサイト利用などの膨大なデータがリアルタイムで生み出されています。
また、ITテクノロジーの進歩によるコンピューター性能の向上で、生成されたデータの収集や蓄積、分析が可能になりました。日々生み出されるデータの分析から、競争優位性を築く情報が得られるため、ビッグデータ活用の注目度が高まっています。
なお、ビッグデータに関する詳細は以下をご覧ください。
ビッグデータ活用のメリット

続いて、ビッグデータ活用のメリットを解説します。
現状の把握と迅速な意思決定の実現
ビッグデータ活用のメリットとして、現状の把握と迅速な意思決定を実現できる点が挙げられます。自社の経営状況や課題が可視化されれば、状況を把握しやすくなるでしょう。また、データ活用によりリアルタイムな情報共有が実現することで、スピーディーな意思決定が可能です。
売上の向上
ビッグデータの活用は売上向上にも役立ちます。顧客の属性や購買行動の傾向、販売データなどの分析で、顧客のニーズを把握できます。分析結果を基にすれば、効果的なマーケティング活動を実施可能です。
業務効率化
業務効率化もビッグデータ活用におけるメリットの一つです。業務プロセスを分析して、ボトルネックを発見すれば改善が可能です。また、ビッグデータをAIやツール開発に活用して、業務の一部を自動化している企業も存在します。
顧客満足度の向上とイノベーションの創出
ビッグデータは質の高いサービス提供に役立つため、顧客満足度の向上にも有効です。顧客データを分析すれば、各顧客に合わせてパーソナライズした最適なサービスを提供できるでしょう。また、顧客の行動や要望と市場データなどの分析結果は、商品・サービスの開発・改良に役立ちます。トレンドをいち早く掴み、イノベーションの創出が期待できます。
業務の属人化防止
業務の属人化防止にもビッグデータは有効です。担当者が長年の経験や勘で行う業務のデータを収集・分析することで標準化できます。
ビッグデータを業務効率化に活用している事例6選

ここからは、ビッグデータを活用している企業事例を効果別に紹介します。まずは、業務効率化の事例です。
DAISEN
DAISENでは、蓄積してきた修理履歴データの見える化で、メンテナンス業務の属人化脱却に取り組んでいます。また、機械の制御装置から稼働状況データを取得して、トラブル発生時の早期復旧やメンテナンス業務の効率化・省人化に成功しました。
パナソニックインフォメーションシステムズ
パナソニックインフォメーションシステムズは、顧客や商談に関するデータ活用で営業の効率化に成功しています。もともと、顧客や商談状況などに関するデータ整備も行われていませんでした。ただ、データの整備や分析結果の活用により、時間と人手コストが削減され生産性が向上しました。
ワークマン
ワークマンでは、全従業員がデータ分析を行えることが重要だと考えており、ビッグデータの活用などに力を入れています。具体的には、商品とカスタマーデータを統計分析した結果を用いて、2時間かかっていた発注業務を10秒に短縮しました。
大阪ガス
大阪ガスでは、蓄積したデータを活用してコールセンターへの依頼内容から、修理に必要な部品を割り出しています。具体的には、過去の数百万件にのぼる修理履歴や機器の型番データの組み合わせで、必要部品の自動割り出しを可能にしました。その結果、修理作業員などの業務を効率化するとともに人件費削減にもつながっています。
ダイキン
ダイキンでは、過去の故障や不具合などのデータを活用した監視型AIを開発しました。監視型AIには、部品不良や故障しやすい箇所を自動発見してアラートを出す機能が実装されています。従来は、顧客から不具合の連絡があった際、原因特定と部品交換で2回以上の現場訪問が必要でした。ただ、AIの通知から不具合の内容がわかるため、現場訪問1回で対応できるようになりました。
六甲バター
六甲バターの神戸工場では、不良製品の画像データを活用したAIの作成・利用で、検査人員を6分の1まで削減しました。六甲バターでは、生産性の向上に向け設備投資を行いましたが、設備を増やすほど検査員が足りなくなる課題を抱えていました。AIの導入で、従来24人必要だった人員を4人まで減らすことに成功しています。
ビッグデータを顧客満足度の向上に活用している事例6選

続いて、ビッグデータを顧客満足度の向上に活用している事例を紹介します。
インフィック
介護施設の運営などを行うインフィックでは、居室やベッドなどにセンサーを取り付け、温度・湿度や運動量、心拍数などのデータ取得を行っています。取得したデータを活用し異常行動の検知や予測を行うことで、見回り業務を効率化して、その時間を入浴介助や食事の支援などの直接ケアに活用できるようになりました。
NIKE
NIKEは、自社のアプリから顧客データを収集して、最適なカスタマーサクセスを実現している企業です。具体的には、ユーザーが初めてアプリを使用する際に好みや興味ある分野を聞くアンケートを実施して、その結果に基づく情報を表示しています。また、どの情報が見られたかを継続的に集計・分析・活用して、各ユーザーに応じた情報が表示されるアプリを作り上げています。
TRUE&CO
女性下着などを販売するTRUE&COでは、過去の注文と返品データの分析を行い、ユーザーがオンライン上で体にフィットするブラジャーの購入が可能なシステムを開発しました。ユーザーは、初めてのアクセス時に日頃愛用しているブランド名やサイズ、好みのフィット感などを入力するだけで、その人に合う商品が表示されます。
トライアルホールディングス
トライアルホールディングスでは、AIカメラを導入するとともに棚や来店客の画像データを分析・活用しています。収集した画像データから商品の在庫情報を把握することで補充を適正化して、商品の欠品を防止しています。
キラ・コーポレーション
キラ・コーポレーションでは、製造・販売するマシニングセンターに内蔵したエッジコンピューターからデータを取得して、異常発生時の遠隔診断・操作や予防保全の強化に活用しています。その結果、トラブルの予防や早期復旧が可能となり、機械の安定稼働を実現しました。
コスモ計器
自動車や医療機器などの気密性検査で使う機器を販売するコスモ計器では、遠隔監視とデータ活用の組み合わせで品質・技術サポートの価値向上を図っています。具体的には、計測機器に対してデータ取得を可能にする機能拡張を行い、異常検知を可能にしました。また、遠隔監視も組み合わせて、不具合が生じた際などの迅速な事実把握と原因の早期究明で、機器の安定稼働を実現しています。
ビッグデータをロスやコストの削減に活用している事例6選

続いて、ビッグデータをロスやコストの削減に活用している事例を紹介します。
ミツカン
ミツカンでは、気象データとポスト(旧ツイート)データを組み合わせた活用で、廃棄ロス削減に成功しています。具体的には、夏季のみに売れる冷やし中華のつゆが売れ残る課題に対して、データを用いた需要予測サービスを活用した結果、余剰在庫を35%削減し廃棄ロスも抑えています。
豊明花き
植物や資材、種苗の卸売を営む豊明花きでは、植物に特化したコミュニティアプリを運営をするGreenSnapと業務提携して、消費者が植物を楽しむ方法やトレンドの把握を行っています。アプリから収集したデータは、植物の生産者がサイズや状態を改良する際などに活用されており、販売促進や生産ロスの削減に役立てています。
Tesco
Tescoでは、天候と売上データの解析を行い在庫を最適化しました。その結果、夏季の食品廃棄ロスを900万ドル分以上減少させました。また、POSデータを基に顧客を分類し、店舗ごとに品揃えや棚割りを変更した結果、店舗運営の最適化にも成功しています。
野村証券
野村証券では、テキストデータを活用した自然言語処理で、景況感指数の調査費用削減に成功しています。具体的には、抽出AIに膨大な景況感を示すテキストデータを学習させ、それと類似したテキストデータを集める機能を実装して、X(旧Twitter)のポスト内容を指数化しています。その結果、景況感指数に関する調査の高速化とコストカットを実現しました。
能勢鋼材
久野金属工業では、配送物と配送先データを用いて、最適なトラックの割り当て・配送ルートの設定を自動化で行うアルゴリズムを構築しました。従来2時間かかっていた配送ルート作成が5分から10分程度でできるようになり、トラックの走行距離と台数も減った結果、コスト削減に成功しています。
久野金属工業
久野金属工業では、さまざまな素材の成形シミュレーションができるクラウドサービス「IoTGO CAE」を開発しました。IoTGO CAEには、50種類以上の素材データや研究機関で作成されたデータが保存されており、成形シミュレーションの精度や効率の向上、コスト削減が期待できます。
ビッグデータを技術の承継に活用している事例3選

続いて、ビッグデータを技術の承継に活用している事例を紹介します。
電通
電通では、後継者不足が問題となっているマグロの目利き技能伝承を目的に、ディープラーニングを活用した画像解析テクノロジーを利用して、マグロの品質解析を行っています。尾部の断面画像に基づく判定結果は、マグロ職人と85%の一致度となっており、高い精度を実現しました。
ナガセインテグレックス
ナガセインテグレックスは、約40年間で蓄積した研削加工に関するデータや熟練者へのヒアリングを行い、研削加工支援アプリ「GRINDROID」を開発しました。研削加工には高い精度が求められ、加工材料や工具などの組み合わせも多く熟練者になるまでに、10年程度必要でした。GRINDROIDには、入力した情報に基づき最適な工作機械や砥石などの組み合わせを導き出す機能などが実装されており、技術の承継に役立っています。
ユーハイム
洋菓子を製造販売するユーハイムでは、他店で模倣できないほどの高い技術力で作るバームクーヘンを焼けるAIオーブン「THEO」を開発しました。THEOには、熟練の職人が焼いている際の以下情報をセンサーやカメラなどで収集して学習させています。
- 焼成時間
- オーブン内の温度
- バウムクーヘンの表面温度や焼き色
- 回転速度
ビッグデータを品質向上に活用している事例3選

続いて、ビッグデータを品質向上に活用している事例を紹介します。
IT工房Z
IT工房Zは、ログBOXの吊り下げだけでスマートフォンやパソコンを活用した環境値の24時間リアルタイム監視ができる温室向け環境モニタリングサービス「あぐりログ」を提供しています。あぐりログでは、利用者同士がフォローし合った場合データ共有が可能です。データを活用した生産者同士の意見交換を活発化させ、品質や生産性の向上に役立っています。
東芝メモリ
半導体製造を行う東芝メモリでは、データ解析基盤をプラットフォーム化させ膨大なデータを一元化することで、データの効率的な活用を実現しました。その結果、従来は発見が困難だった小さな問題の早期発見を実現して、品質向上につなげています。また、不良要因の特定に必要な時間も短縮でき、業務効率化にもつながっています。
岐阜多田精機
岐阜多田精機では、小型測定モジュールによる金型内部の圧力・温度・振動データの取得と活用で、異常検知を行っています。その結果、製造する金型における不良の減少と予防保全を実現させ、品質安定や向上につなげています。
ビッグデータを活用する流れ

ビッグデータ活用の流れは以下の通りです。
- 活用する目的の検討・決定
- データの収集と成形
- 目的に応じた分析の実施
- 分析結果の利用
- 利用後の効果検証とPDCAサイクルの実施
データは収集してもそのまま活用できるわけではなく、エラーやノイズなどを取り除く成形が必要です。また、分析方法もさまざまあり、データや活用目的に応じた方法を選択しなければなりません。
PigDataではデータ収集や収集したデータをすぐ使える形に成形するサポートをしています。
なお、データ分析手法について知りたい方は以下をご覧ください。
ビッグデータ活用を成功させるポイント

最後に、ビッグデータ活用を成功させるポイントを解説します。
目的の明確化
ビッグデータ活用の成功には、目的の明確化が不可欠です。データには多彩な形式や種類があり、さまざまなデータ収集・加工・分析を行えば、多大な手間がかかります。まずは目的を明確にして、必要なデータの範囲を絞りましょう。
適切なデータ収集と分析
適切なデータ収集と分析も、ビッグデータ活用の成功には重要です。正確なデータを収集しなければ、間違った分析結果になってしまいます。また、不適切な分析手法を採用した場合、求める結果が得られないでしょう。
専門人材の確保とリテラシーの向上
ビッグデータの活用には、専門的な知識やスキルが必要です。データサイエンスに関する専門人材の確保とリテラシーの向上を図りましょう。自社での人材確保が難しい場合は、アウトソーシングやツールの活用がおすすめです。
情報漏洩を防止するセキュリティ対策
情報漏洩を防止するセキュリティ対策も欠かせません。顧客情報や社内の機密データが漏洩すれば、企業の信頼性が低下します。近年はプライバシー保護に関する注目が高まっており、情報漏洩が原因で企業運営の継続が難しくなる恐れもあります。
まとめ

さまざまな種類や形式のデータを含み、従来の技術では記録・保存・解析が困難だった巨大なデータ群であるビッグデータは、すでに多くの企業で利用されています。業務効率化や顧客満足度の向上、ロス・コスト削減効果を得ている企業も少なくありません。
ただ、ビッグデータの活用には専門的な知識やスキルが必要です。また、社内データを最大限に活用するには豊富な外部データが必要で、収集や成形に多くの手間がかかります。PigDataでは、Web上のデータ収集をサポートしており、ご希望の形式への成形も可能です。また、データ活用のお悩みを解決するコンサルティングから実際の活用まで全面的にサポートしているので、データ活用にお困りであれば、お気軽にご相談ください。


