
「オルタナティブデータ」を提供する企業は、ここ数年で数倍に増加しています。このことから、オルタナティブデータを欲している企業が増えていたことも読み取れます。オルタナティブデータの重要性を認識している経営者の方も多くいることでしょう。
そもそもオルタナティブデータとは何でしょうか?また、オルタナティブデータによって何ができるのでしょうか?疑問に思う方もいるでしょう。
この記事では、オルタナティブデータの解説と活用事例を具体的に紹介します。オルタナティブデータを活用して業績の拡大を目指したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
会社経営を左右するオルタナティブデータとは何か?
オルタナティブデータとは、政府や日本銀行などが発表する一次情報とは異なり、民間によって提供される細かい情報やデータのことです。政府が公表している「国勢調査」や「家計調査」、日本銀行が発信している「日銀短観」などの情報とは異なり、データの受け取りが早く、細かいデータも得られる特徴があります。具体的なオルタナティブデータとして以下のものが挙げられます。
・レジ会計の消費者動向
・クレジットカードの利用動向
・ウェブサイトの検索トラフィック
・衛星画像
これらのオルタナティブデータについて詳しく解説していきましょう。
SNSの口コミ
SNSの口コミから出現回数の多いキーワードを抽出するのも、オルタナティブデータの一つです。Twitterやインスタグラムは、多くのユーザーがいて最新の話題に一般の方が意見や感想をコメントできるサービスです。そのため、会社の経営をしている方にとっては、トレンド情報を入手するのに適したツールです。出現頻度の高いキーワードから、一般の方々が何に対して関心を抱いているのかを読み取り、事業に活かすことが可能なのです。
Twitterデータの取得・商用利用する際には、NTTデータのサービス(※)を利用する必要があります。
※NTTデータのサービス:「Twitterデータ提供サービス(インテグレーション)」
レジ会計の消費者動向
当然のことですが、コンビニやスーパーマーケットで買い物をする際には、レジで会計をしなければいけません。レジでの会計によって「POSデータ」と呼ばれるオルタナティブデータが抽出できます。POSデータには、消費者の属性(年齢や性別)などに分けられた消費動向のデータが蓄積されています。そのため、属性による消費行動を確認できるので、在庫管理によってコストを削減することができます。また、新規企画を考案するのにもターゲットを絞りやすくなります。
クレジットカードの利用動向
クレジットカード会社と協力して、消費行動のオルタナティブデータを抽出しているところもあります。クレジットカードは、店舗だけではなくネット通販、さらには海外での決済にも使用されているサービスです。そのため、消費行動のデータをより俯瞰して分析することが可能です。年齢や性別、職種や年収などの属性別に、どのような商品やサービスを購入しているのか分かるため消費者の購買動向を知り経営に役立てられます。

ウェブサイトの検索トラフィック
ウェブサイトの検索トラフィックもオルタナティブデータです。一般人にとって、情報収集のツールは、紙媒体の書籍やテレビではなくインターネットへと移行しています。情報収集を行う際に、検索窓に入力するキーワードから辿り着いたサイトのトラフィック件数を計測します。検索トラフィックをデータ化することで、社会一般に興味関心の傾向を推測できます。社会一般の興味関心の推測からマーケティングの戦略を決定することが可能です。
衛星画像
衛星画像もオルタナティブデータとして利用されています。意外に思われるかもしれませんが、衛星写真は有益なデータです。衛星画像は同一の地点から物理的な空間の撮影が可能です。そのため、時系列にならべた同一空間の変化を比較できます。特に、建物関係の変化を確認することによって、企業の成長も知ることができるのです。
オルタナティブデータを活用する企業が増加した理由
オルタナティブデータを活用する企業が増加したのは、先駆的にデータを活用した会社の成功があったことが理由としてあげられます。オルタナティブデータを活用すれば、大きく業績を伸ばせることが認知され、次々とオルタナティブデータを求める会社が増えてきました。
オルタナティブデータは、ターゲットを絞って会社の利益の増加を左右する重要な資源です。日本政府や日本銀行が定期的に発表する経済動向のデータは、信頼性が高いもののデータの公表までには時間がかかります。
また、中小企業が必要としている社会トレンドや特定の消費者が求めている商品やサービスなどの細かいデータの収集はできません。ビッグデータやAIの技術が発展し浸透するとともに、これらの細かいデータも収集できるようになりました。消費者動向やトレンドになっているデータを経営に活かして利益を伸ばす会社が増えたことを踏まえ、さらにオルタナティブデータを求める会社が増えました。
オルタナティブデータの活用事例
オルタナティブデータが会社の利益拡大に活用できることを解説してきました。それでは、どのような方法でオルタナティブデータを活用するのでしょうか。
オルタナティブデータは、日本政府や日本銀行が発表しているデータでは分析できない部分にスポットを当てられます。また、迅速に得られるデータによって、トレンドが頂点に達する前に施策の提案をすることも可能です。提供されているデータを厳選して、経営に有効な利用方法を探りましょう。
ここからは、オルタナティブデータを活用している事例を紹介します。
飲食店・アパレル業界
飲食店やアパレル業界では、オルタナティブデータを活用することによって、ターゲットにする客層に向けて適切な商品を提供できるようになりました。オルタナティブデータは、POSデータや各種SNSの口コミから抽出します。トレンドの発信点は、SNSでの有名人やインフルエンサーであることが多くなりました。また、SNSでは不特定多数の人がコミュニケーションを取っていることもあり、口コミの情報は広がりやすくもあります。
トレンドをいち早く察知しておけば、商品の品揃えや開発にも有効です。飲食店やアパレル業界は、トレンドによって大きく売り上げ幅が変わります。
コンビニエンスストア・スーパーマーケット
コンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、営業と共にPOSデータが蓄積されていきます。自社内部で得られる貴重なデータと、クレジットカードの使用履歴のオルタナティブデータ等を合わせることで、消費者動向を細かく目視できます。
消費者の購買行動を知って品揃えを変えれば、季節によって上下する商品の品揃えも無駄なく最適な分量にできます。トレンドの先読みも可能なので、新商品の開発や各種キャンペーンにも役立てられます。
証券会社
オルタナティブデータは、証券会社によっても活用されています。企業の成長を常に監視しておかなければいけない証券会社
では、積極的にオルタナティブデータを利用しています。経済の流れは、あらゆる要素が絡み合っていて複雑です。経済動向を知る要素として企業の成長を見逃すことはできません。衛星写真から企業ビルの開発状況を見ることで、会社の成長率を予測します。また、社会トレンドは経済には大きく影響を与えます。
証券取引は、社会的に影響を受けた投資家の心理によっても変動するものです。SNSのキーワードによる社会一般の心理状況も確認する必要があるでしょう。最新のトレンドを察知しておくことも証券会社には大事なことなのです。
広告会社・エンターテイメント業界
広告会社やエンターテイメント業界は、流行を察知しなければ業績を伸ばすことはできないと言っても過言ではありません。ウェブサイトの検索トラフィックやSNSデータによって、トレンドを推測することが可能です。人々を消費者として捉えた場合、消費者が求める情報やコンテンツを推測できれば、利益の拡大ができます。ターゲットを絞って、最適な人々に対して最適な広告を届けられるのです。また、トレンドが最高点に達する前に、新規のエンターテイメント企画の発信も可能です。
不動産会社
不動産業界でもオルタナティブデータは利用されています。衛星データによって、土地建物などの変化や成長も時系列で確認できます。不動産が扱う商品は高額になるものが多く、販売や建設する際には慎重にニーズ動向を探る必要があります。人口動向は政府が発表するデータでも確認できますが、より具体的にどのような建物に住んでいるか、企業ビルやアミューズメント施設などがどの地域に建設されているか、把握できません。同一地域を時系列に並べた衛星写真なら、建築物の変化も確認できます。地域別に最適な建物を建設できます。

オルタナティブデータを有効活用した企業が業績を伸ばせる
オルタナティブデータの活用は、消費者の細かい動向やニーズを察知し照準を合わせることを可能にします。消費者に対して最適な商品やサービスの提供ができるため、企業の業績を伸ばせるのです。データを細かく分析して迅速なデータの収集ができれば、競合と差をつけられます。
このことは、オルタナティブデータの活用を怠れば、競合に差を付けられてしまうことも意味します。トレンドの入り口で新商品や新サービスを提供することで、競合のいない市場で売り上げを独占できるでしょう。オルタナティブデータを利用して、小さな動向を分析し推測することは、大きな利益の拡大に繋がります。
まとめ

データこそが資源だと言われる時代になってから、オルタナティブデータを提供する企業が急増しています。オルタナティブデータを適切に分析することで、業績の向上に繋がるからです。オルタナティブデータとは、日本政府や日本銀行が提供している一次情報ではなく、一般社会のトレンド動向や人々が求めている情報などをより細かく、より迅速に得られるデータのことです。具体的には、「SNSの口コミ」「レジ会計の消費者動向」「クレジットカードの利用動向」「ウェブサイトの検索トラフィック」「衛星画像」です。これらのデータは、多様な業界で利用されています。
データの分析と推測こそが、新しい商品やサービスを生み出し、消費者のニーズを満たします。消費者のニーズを満たせれば、会社の利益は自然と拡大していきます。競合他社と差を付けるためにも、今後の会社経営にオルタナティブデータを利用すると良いでしょう。しかし、オルタナティブデータは膨大な量と種類がありますし、データそのものに対して解釈を与えるには知識と経験が必要です。データの扱いに慣れているデータアナリストやデータサイエンティストがいない場合は、データを収集して、最適化してくれるサービスがあるので利用することも検討してみてくださいね。