
AI(人工知能)の進化は目覚ましく、その中でも画像生成AIは特に注目を集めています。画像生成AIは、テキスト入力に基づいて画像を生成する技術で、デザインの世界に革新をもたらしています。この記事では、画像生成AIのおすすめのツールとその活用方法について詳しく解説します。
画像生成AIとは
画像生成AIは、テキストで入力した指示に従って画像を生成するAIのことを指します。この技術は、ディープラーニングというAIの一種を利用しています。ディープラーニングは、大量のデータからパターンを学習し、それを基に新しい出力を生成します。画像生成AIは、このディープラーニングの能力を利用して、テキストの指示に基づいた画像を生成します。
画像生成AIの仕組み
画像生成AIの仕組みは、大きく分けて2種類に分類されます。
教師あり学習
教師あり学習は、機械学習の一種で、アルゴリズムがラベル付きの訓練データから学習します。つまり、各データポイントにはラベルと呼ばれる「予測すべき正解」が付与されています。この学習方法は「教師」が存在するという意味で「教師あり」と呼ばれます。
たとえば、画像分類で利用される訓練データの各画像には、その画像が何を表しているかを示すラベルが付与されています。具体的には「いぬ」「猫」「車」などです。このラベルがあることで、特徴とキーワードの関連付けができます。教師あり学習アルゴリズムは、入力データと出力データ(ラベル)の関連性を学習し、新しい未見のデータに対して予測を実現するのです。
教師無し学習
教師無し学習は、ラベル付きの訓練データがない場合に使用される機械学習の一種です。具体的には、入力データだけからパターンや構造を見つけ出すことを目指します。この学習方法は「教師」がいないという意味で「教師無し」と呼ばれます。
教師無し学習の主な用途はクラスタリングで、これはデータを自然なグループに分ける手法です。たとえば、顧客のデモグラフィックデータから市場セグメントを特定することができます。他にも、データ内の異常なパターンを識別する、異常検出にも利用可能です。クレジットカードの読み取りにおいて、不審な部分がないかなどを、学習して探し出すことが可能です。
画像生成AIで使われている技術
画像生成AIでは幅広い技術が利用されています。それらの中でも代表的なものを紹介すると以下のとおりです。
VAE
変分自己符号化器(VAE)は、深層学習と確率的推論の原理を組み合わせた生成モデルの一種です。VAEは、入力データを低次元の潜在空間にエンコードし、その潜在表現から元のデータをデコードすることで、データの生成を行います。VAEの特徴的な点は、エンコードされた潜在空間が連続的であるため、新たなデータを生成する際に潜在空間を滑らかに移動することができる点です。そのため、VAEは新たなデータを連続的に生成することができます。

(参照:Vignette & Clarity)
GAN
敵対的生成ネットワーク(GAN)は、生成モデルの一種です。2つのニューラルネットワーク、すなわち生成器と判別器を競争させることでデータを生成します。
生成器は、ランダムなノイズからデータを生成し、判別器はそのデータが本物か偽物かを判断します。この2つのネットワークが互いに競争し合うことで、生成器はより本物に近いデータを生成する能力を習得できる仕組みです。また、判別器は偽物を見破る能力をより向上させます。GANは、その強力な生成能力から、画像生成やスタイル変換などのタスクで広く使用される手法です。
StyleGAN/StyleGAN2
StyleGANは、GANの一種で、特に高解像度の人間の顔画像を生成するために設計されました。特に、潜在空間における異なるレベルの詳細を制御する能力を有していることが特徴です。これにより、顔の形など「大きな構造」から髪の毛の質感など「詳細」まで、画像のさまざまな要素を個別に制御できます。なお、StyleGAN2はStyleGANの改良版で、生成画像の品質をさらに向上させ、トレーニングプロセスをより安定化させたものです。
CNN
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、画像認識や画像処理タスクに広く使用される深層学習モデルの一種です。CNNは、画像の局所的な特徴を捉える能力と、それらの特徴を高次元の表現に組み合わせる能力を持っています。これらを組み合わせることで、CNNは画像の内容と構造を理解できるようになりました。CNNは、画像生成AIの中でも、特に画像のスタイル変換や超解像度などの処理で使用されます。

(参照:Maxcell)
DALL・E
DALL・Eは、OpenAIによって開発されたAIモデルで、自然言語の説明から直接画像を生成する能力を持っています。DALL・Eは、GPT-3と同じトランスフォーマー・アーキテクチャを基にしており、テキストと画像の両方のデータで訓練されたものです。
大量のデータから学習しているため、DALL・Eは非常に具体的で複雑な指示に基づいて画像を生成できます。例えば「二頭身のロボットが料理を作っている様子」など、現実には少ないであろう画像も、適切に生成が可能です。
画像生成AIの活用方法
続いては、画像生成AIの具体的な活用方法について紹介します。
SNSなどのアイコン作成
画像生成AIは、ユーザーの好みや要件に基づいてカスタムアイコンを生成するのに役立ちます。例えば、「アニメ風」「リアルな肖像画」など特定のスタイルや髪の色や目の色を指定して、独自のアイコンを生成することが可能です。また、AIは一度に複数のバリエーションを生成することができるため、ユーザーはその中から最も気に入ったものを選ぶことができます。
Webサイトなどのバナー作成
AIは、Webサイトのバナーなどのグラフィック要素を生成するのにも使用できます。ユーザーは、バナーのテーマ、色彩、スタイルなどの要件を指定し、AIはそれに基づいてバナーを生成する仕組みです。これを活用すれば、プロのデザイナーがいなくても、高品質でプロフェッショナルな見た目のバナーを短時間で手に入れられます。
背景の生成
画像生成AIは、特定のシーンや環境の背景画像を生成するのにも使用できます。これは、ゲーム開発、映画制作、仮想現実などの分野で特に有用です。例えば、AIに「森の中の日の出」や「未来の都市風景」などの指示を与えると、それに基づいてリアルな背景画像を生成できます。このような画像を採用すれば、手作業で背景を描く時間と労力を大幅に節約できるでしょう。
新しいパターンの創造
AIは、新しいデザインやパターンを生成するためにも使用できます。例えば「ファッションデザイン」「インテリアデザイン」「グラフィックデザイン」などの分野で役立つものです。
画像生成AIは、既存のデザインやパターンから学習し、それに基づいて新しいデザインやパターンを生成できます。そのため、学習させたデータから新しい画像を生成することで、デザイナーは新しいアイデアを得ることができるでしょう。各種デザインに必要な時間の短縮も期待できます。
現実との合成
AIは、生成した画像を現実の画像と合成するのにも使用できます。映画など映像の特殊効果はもちろん、ARアプリケーション、写真編集などの分野で利用されている状況です。例えば、AIは、ユーザーが撮影した写真に、動物や建物、乗り物など特定のオブジェクトを追加できます。今までは、合成するためのオブジェクトを自分で用意する必要がありましたが、今は画像生成AIが何もない状態から生成してくれるのです。
画像生成AIおすすめサービス
画像生成AIはいくつも公開されているため、今回はそれらからおすすめをピックアップして紹介します。
Midjourney
Midjourneyは、画像生成AIの先駆けともいえる存在です。2022年7月にオープンベータ版が公開され、現在でも改良を重ねながら世界中で利用されています。ユーザーが、画像生成に必要なキーワードを打ち込み、その内容に適した画像が10分程度で生成されるサービスです。他の画像生成AIとは異なり、サービスの利用にあたっては、Discordのインストールが求められます。専用のサーバーで、画像が生成される仕組みであるため、そこに参加して利用しましょう。
Stable Diffusion
Stable Diffusionは、指定されたキーワードから画像を生成するAIサービスです。キーワードは英単語に限られますが、複数を組み合わせることで、自分に適した画像を生成してもらえます。比較的、単語選びが重要な画像生成AIであり、同じ意味を持つ単語でも生成結果が異なることが多々あります。適切な指示が必要となるため、その点で日本人にはやや難しいかもしれません。ただ、このようなニュアンスの難しさをカバーするために、画像生成のオプションが設けられています。これらを組み合わせることで、効率よく画像を生成できるはずです。
Canva
Canvaは、一般的な画像生成からイラスト、アート作品まで多種多様な画像生成に対応しているAIです。特に3Dグラフィックの生成にも対応しているため、この点で他の画像生成AIと差別化されています。いくつもの画像をCanvaだけで生成できるのです。また、画像を生成するだけではなく、生成した画像をその場で加工できます。Canvaは画像の加工を得意としたサービスであるため、画像生成AIについても、その特徴が活かされています。キャンバスを操作する方式で、生成した画像を修正可能です。
DALL-E2
DALL-E2は、人工知能を幅広く開発しているOpenAIが提供する画像生成AIです。ChatGPTが注目されている同社ですが、画像生成AIについても人気を集めています。他の画像生成AIと異なる点として、DALL-E2は文章から画像生成が可能です。他の画像生成は、キーワードから画像を生成しますが、DALL-E2ならば文章の解析ができます。ChatGPTは大量の文章を理解することに慣れているため、同社の画像生成AIも同じく文章を理解できる仕組みです。そのため、キーワードだけよりも、適切な画像を生成しやすくなっています。
画像生成AIの今後の課題
画像生成AIは多くのサービスがでており、今後も活用場面が増えてくるでしょう。しかし、まだまだ活用するにあたっての課題が上がっています。
法律的観点
画像生成AIの基となる機械学習データに関する著作権問題などがまだまだ確立されていません。AIで作成した画像自体に著作権はありませんが、その活用先には注意が必要です。例えば、有名なキャラクターに非常に似通った画像が生成された場合、それの使用が承諾されるかどうか、またそれを見た他者からの印象なども考慮する必要があります。
データの品質
画像生成AIを作成するには多くの機械学習データが必要です。そのデータに偏りがあったり、十分な量が担保されていなければ、求めているレベルの画像が生成されない場合があります。これは画像生成AIに限らず、全てのデータ活用においていえることですが、企業としてデータが関わるサービスを活用する場合、その質と量が十分であるかどうかを確認する必要があります。画像生成AIの場合は活用する前にデータセットを確認できるとよいでしょう。
まとめ
画像生成AIサービスの概要や仕組み、おすすめのサービスについて解説しました。数多くのAIが公開されていて、それぞれに特徴があります。これらを必要に応じて使い分けることが重要です。特に、単独のAIサービスと組み込まれているAIがあるため、適切なものを選択することが求められます。画像生成AIはディープラーニングを活用して、多くの画像データを学習して実装されたものです。多くの画像データはWebサイトから収集でき、画像生成AIだけではなく各種AIの作成・学習に活用されています。
AIの学習にあたっては、Webサイトから大量のデータを収集することが効率的で、これには「スクレイピング」と呼ばれる手法が有効です。もし、スクレイピングを活用したデータ収集に興味があったりお考えであれば、弊社のPigDataをご検討ください。