
AI-OCRは、紙に手書きで書かれた文字もデータとして読み取ることができるAI技術です。AI-OCRを活用すれば、従来の業務を効率化して人為的なミスも軽減できます。それでは、AI-OCRはどのような技術なのでしょうか。今回は、AI-OCRのメリットとデメリットを解説した上で、実際の活用例も紹介します。会社の業務にAI-OCRを導入して効率化したい経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
AI-OCRとは
AI-OCRとは、OCR(光学文字認識 Optical Character Recognition)にAI(人工知能)を搭載した技術です。画像データからテキスト部分を認識して、文字データに変換することができます。AIを搭載しているので、ディープラーニングによってデータを学習すれば精度を向上させることも可能です。手書き文字や罫線、非定型のフォーマットの文書でも読み取ることが可能です。これまで、デジタル化できなかった紙の手書き文書にも対応しているので、活用できる業務範囲が広いです。
OCRとの違い
AI-OCRは、AIを搭載しているため、OCRと異なり手書きの文字も特徴量を計算して認識することができます。従来のOCRでは、手書き文字を認識することは誤認識が発生しやすい問題がありました。また、OCRができなかった異なるフォーマットの読み取りも、AI-OCRなら対応可能です。さらに、AI-OCRはRPAと連携させることによって、業務での使用範囲を広げられます。
AI-OCRの種類
AI-OCRには、使用用途に応じて以下の3つの種類があります。
- 汎用×定型フォーマット型
- 汎用×非定型フォーマット型
- 業務特化×非定型フォーマット型
ここからは、それぞれの型について詳しく解説します。
汎用×定型フォーマット型
汎用とは、読み取る帳票の種類がなんであれテキストを抽出することができます。定型フォーマットは、あらかじめ人間がフォーマットや文字列の定義や指定をおこないます。汎用×定型フォーマットは、文字を読み取る精度が高くなりますが事前作業が必要になります。
汎用×非定型フォーマット型
汎用は、上述した通り読み取る帳票の種類を限定せずに読み取る機能です。非定型フォーマットは、AIにあらかじめ帳票のフォーマットデータを学習させることで、人間による事前作業が不要になります。汎用×非定型フォーマットの場合は、データを学習させるのに時間がかかります。また、学習していないフォーマットの帳票が紛れ込んでいると、エラーが多くなってしまいます。
業務特化×非定型フォーマット型
業務特化のAI-OCRは、帳票の種類を限定させておきます。帳票の種類をあらかじめサービスを提供する会社に知らせておけば、自社ではデータを学習させるような作業をする必要がありません。また、非定型フォーマット型なので、多様なフォーマットに対応可能です。また、自社の業務に必要なデータを意味づけして、カテゴリー別にデータの抽出と作成をすることができます。ただし、特定の業務や特定の種類の帳票にしか対応していません。
AI-OCRのメリット
AI-OCRを活用することには、多くのメリットがあります。ここからは、AI-OCRを使用することによるメリットを紹介します。
文字認識精度が高い
AI-OCRは、OCRと比較して文字認識精度が大きく向上しました。AIを搭載しているため、質の良いデータを学習させれば精度がさらに向上します。OCRだけでは認識できなかった文字への対応も可能になりました。例えば、乱雑な手書き文字や罫線などの記号に対しても識字率が向上しています。AI-OCRを使用すれば、人間が文字を読んで確認する必要が少なくなります。
多様な書類に対応可能
AI-OCRは、多様な書類にも対応可能な点がメリットです。会社が扱う書類は特定のフォーマットだけではなく、多様なフォーマットが使用されています。書類のデータ化や自動読み取りをする際には、多様なフォーマットにも対応する必要があります。AI-OCRは、書類のフォーマットが違っても、文字を認識することが可能です。AI-OCRは、事前に書類フォーマットの詳細を定義させる必要がありません。
人間の作業効率の向上
AI-OCRを活用すれば、人間の作業効率が向上する点もメリットです。紙に書かれていた手書きの書類の処理は、これまですべて人間の目視による確認と処理をおこなっていました。人間の目視による確認の工程をAI-OCRが代行してくれるため、人間がおこなう作業が省略されます。AI-OCRを導入することで、人間の作業効率を向上させて他の作業に再配置させることも可能です。
DXの促進
AI-OCRは、DXの促進を促すメリットもあります。紙による書類をすべてデジタル化することで、紙で保存されていた書類をデジタル保存することができるようになります。書類で保存されていたデータをデータベース化することで、抽出にかかる時間も迅速になります。また、過去のデータと現在のデータの比較分析も容易になります。
RPAとの連携も可能
AI-OCRは、RPAと連携することも可能な点がメリットです。AI-OCRは、文字を識別して読み込む機能ですが、読み取ったデータをRPAと連携させればさらに業務が効率化します。例えば、AI-OCRで読み取ったデータを会計ソフトと連携させれば、仕分けや計算も自動化されます。これまで、人間がおこなっていた作業を一気通貫で自動化できます。
AI-OCRのデメリット
AI-OCRの導入には多くのメリットがありますが、注意すべきデメリットもあります。あらかじめ、デメリットを確認して導入時の対応をしてください。
AI-OCRの読み取り精度に限界がある
AI-OCRの読み取り精度には限界があることが、デメリットの一つです。AI-OCRは、精度が向上していますが、完璧に手書き文字を読み取ることができる訳ではありません。そのため、AI-OCRにすべてを任せることはできません。AI-OCRによる読み取り結果をそのまま、業務に適用してしまうと重要な書類の場合大きな問題が発生してしまうことがあります。
読み取り結果を人間が確認しなければいけない
AI-OCRの読み取り結果は、人間が確認しなければいけない点もデメリットです。AI-OCRは、高精度で手書き文字を読み取ることができますが、先述した通り完ぺきではありません。AI-OCRが出力したデータは、人間が目視できちんと確認しなければいけません。人間が手書きで書く文字は、人間でしか読み取れない場合もあります。また、書類内の重要な部分で間違いがないように確認する手間もあります。
AI-OCRの初期設定に手間がかかる
AI-OCRの初期設定には、手間がかかってしまうのもデメリットの一つです。AI-OCRを自社のシステムに導入するには、ツールを使用する知識が必要です。さらに、AI-OCRの種類によっては、初期設定に時間がかかるものもあります。手書き文字を読み取りたい書類のフォーマットをAI-OCRに学習させなければいけません。また、初期設定時には、自動読み取りができるAI-OCRでも人間による微調整が必要です。
会社の使用意図に合わない場合がある
AI-OCRには、3つの種類があり会社の使用意図に合わない場合もあります。会社で使用している書類のフォーマットが多様な場合は、多様なフォーマットに対応可能なAI-OCRの種類を選択しなければいけません。AI-OCRは、既に多くのサービスが販売されていて、自社の使用目的に合ったものを選択するのが難しいです。AI-OCRを選択する際には、会社の使用目的とサービスの機能を照らし合わせなければいけません。
質の高いデータを学習させる手間がある
AI-OCRは、質の高いデータを学習させる手間があるのもデメリットです。AI-OCRは、データを学習することで精度が向上します。そのため、AI-OCRの精度を向上させるためには、質の高いデータを収集する必要があります。質の高いデータの収集は、人間が担います。質の高いデータを収集するのは、骨の折れる作業です。しかし、AI-OCRの精度を向上させて業務を効率化するためには、避けては通れない作業です。
AI-OCRの活用例
AI-OCRは、手書きで書かれている書類やアンケートなどをデジタルデータとして出力することで業務を効率化させています。ここからは、実際に業務で活用されている例を紹介します。
金融機関での各種手書き書類に活用
みずほ銀行では、AI-OCRを業務に導入して作業を効率化させています。お客様から受け取った請求書の画像データをAI-OCRで読み取り、データ化させています。データ化された請求書は、振込データと会計システムに自動で連携されます。手書きで書かれた請求書でも、振込だけではなくデータベース化され会計上の手続きもシームレスにおこなえます。人間がおこなう作業の省略と人為的なミスの削減に成功しています。
イベントのアンケート収集に活用
スーパーストリーム株式会社は、自社製品の普及のために定期的にイベントをおこなっています。イベント時には、参加者にアンケートを書いてもらっています。お客様の声は、自社製品の改善や市場調査の面でも大事なデータです。しかし、アンケートは手書きでおこなわれているため、データ管理して保存するのに時間と手間がかかっていました。AI-OCRを導入して、アンケートの読み取りを任せたことで迅速にデータベース化することができました。自社製品の普及イベントをおこなった当日に、アンケートのデータ収集と分析ができるようになりました。
自治体業務の各種書類読み取りに活用
全国で最も居住人口が集中している横浜市では、各種書類の読み取りにAI-OCRを活用しています。横浜市役所では、給付証明書や就労証明書の打ち込みをすべて人間が担っていました。膨大な量の書類量なので、人間がミスなく迅速に処理するのには限界があります。AI-OCRを導入してRPAと連携させることによって、人間の業務時間を500時間削減しました。残業時間が減りましたし、入力のためにアウトソーシングする必要も無くなりました。AI-OCRの活用で時間と費用の両方のコストを削減しています。
研究機関での資料読み取りで活用
埼玉大学では、AI-OCRを導入して古い資料をデジタル化しました。研究機関では、古い資料の閲覧や検索も必要です。しかし、過去の論文や資料を検索するためには、資料館や図書館に行って蔵書を一つひとつ探さなければいけませんでした。埼玉大学ではAI-OCRを導入して、古い資料や論文のデジタル化をおこないました。資料の検索や引用もデジタルでおこなえるので、論文作成や資料研究も容易になりました。
人材派遣業でのタイムカード読み取りに活用
福祉の人材派遣業を担っている株式会社kotrioは、AI-OCRを導入して事務作業の効率化に成功しています。福祉の人材派遣業は、就労時間のタイムカードが手書きになってしまいます。収集されたタイムカードによって個人の給料を支払うため、タイムカードの集計は必須業務です。タイムカードの集計をすべて手動で打ち込んでいました。手動打ち込みの作業をAI-OCRに任せることによって、事務作業時間を大幅に削減できました。
AIの進化で発展している技術
AIは、これまで説明してきたAI-OCR以外にも発展している技術があります。今後、あらゆる分野で活用が期待されているAIの技術を紹介します。
AIによる自動翻訳
AIによる自動翻訳は、発展している技術の一つです。自動翻訳はテキストベースで翻訳するだけではなく、音声を読み取ってから翻訳する技術の開発も発展しています。実際に、テキストベースの自動翻訳はWeb上でも公開されています。また、音声を読み取って翻訳し、コンピューター音声によって回答するアプリも使用できます。
AIによるテキスト生成
AIによるテキスト生成は、発展している技術の一つです。人間が日常使うような自然言語で質問をすることによって、AIが予測した回答を出力してくれます。ChatGPTは、自然言語による質問に対して、自然言語で回答してくれるサービスです。業務上の公式文書や、プレゼンテーション用の資料作成も可能です。AIを業務の効率化に活用できます。
AIによるレコメンド機能
AIによるレコメンド機能も発展し続けている技術です。インターネット検索をおこなうと個人のビッグデータが蓄積されて、個人の志向性に合わせて検索結果を表示してくれます。特に、ECサイトやWeb広告は、個人に最適化されたレコメンド機能が活用されています。過去の購入履歴や検索履歴、閲覧履歴のデータをAIが分析して自動的に個人に合った商品やサービスをおすすめしてくれます。
効果的なAIをつくるには
AIは、個人や会社内でもつくることが可能です。ただし、効果的なAIをつくるためには、きちんとしたステップを踏む必要があります。ここからは、自社にとって効果的なAIをつくるための必要事項を解説します。
AIの活用目的を定める
効果的なAI活用をするためには、自社での活用目的やサービスの企画を定める必要があります。AIは発展中の技術であり、用途は多岐にわたります。AIをつくり始める前に使用用途やサービス企画をきちんと設定しなければ、作成する段階になると混乱が生じます。使用目的やサービス企画を定めれば、導入するAIの種類や収集すべきデータも逆算して決定されます。AIを作るうえで一番最初のステップは、AI活用目的やサービス企画を定めることです。
大量の学習データを用いたディープラーニング
効果的なAIをつくる上で、大量の学習データを用いてディープラーニングをおこなうのは大事なプロセスです。AIは、質の良いデータを学習することで精度を向上させていくからです。この段階では、質の良いデータを大量に収集することも、人間がおこなわなければいけません。質の良いデータを収集しなければAIの精度は向上せず、意図した通りの動作ができない可能性もあります。質の高いデータを多く収集することが、効果的なAIをつくるポイントです。
自社のサービスへの取り込み
ディープラーニングをして精度向上をさせた後は、実際に自社サービスへの取り込みをします。AIは、実際に自社サービスに取り込む段階がゴールではありません。作成したAIを搭載させて運営していく中で、予期しなかったトラブルも生じる場合があります。自社サービスに搭載して運営をしながら、エラーの修正をしていきます。また、AIサービスに対するお客様からの意見や要望も取り入れて、改善させていく必要があります。
まとめ
AI-OCRは、紙に手書きで書かれている文字を認識してくれるAIの技術です。AI-OCRを導入すれば、これまでの事務作業も効率化します。AI-OCRに搭載されているAIの精度を高める秘訣は、大量の学習データによるディープラーニングです。画像や数値など大量の学習データは、Webからも得ることができます。Webからデータを取得する技術であるスクレイピングはAIの精度を高めるのに、スクレイピングは有効的な技術です。スクレイピングを実装することは簡単ではないため、専門の会社に委託することがおすすめです。質の高いデータを収集するスクレイピングは、PigDataにご相談ください。