
不動産業界では、人手不足などの問題を抱えているため、今まで以上にDXが重要視されています。不動産テックなど、少しずつ広がってはいますが、まだまだ不動産業界におけるDXの重要性やメリットについては理解されていない状況です。今回は、具体的な事例や成功の秘訣を含めて、不動産DXを解説します。
不動産DXの必要性
不動産業界ではDXが非常に重要視されています。なぜ、不動産業界ではDXに取り組む必要があるのか、その必要性について解説します。
人手不足とアナログの世界
不動産業界は人気が高いように思われがちですが、実態としては人手不足が続いています。細かな業務が多く、個人の負荷が高くなりやすいため、就職する人もいれば離職する人も多いからです。個人個人の業務過多に陥る背景としては、紙を中心としたアナログの世界であることが考えられます。例えば、契約時は紙でやり取りしなければなりません。他の業界では「脱アナログ化」しているようなことも、不動産業界ではまだまだアナログであり、これを打破するためにDXが必要とされています。
不動産DXで得られるメリット
不動産DXで得られるメリットとして、例えば以下が挙げられます。
業務効率化
DXを推進する大きなメリットは、不動産関連業務の効率化です。不動産業界は、手続きやデータの収集など、非常に多くの業務があります。これらを全て人力で処理することは現実的ではなく、DXによるデジタル的な支援が必要です。
特に、反復的な処理やデータの収集は、不動産DXによって大きく効率化できます。全ての業務が不動産DXで効率化されるわけではないものの、一部をデジタル化するだけで作業時間の短縮に繋がり、業務効率化としては十分な効果が期待できるのです。
人材の適切な配置
業務の効率化や自動化の結果、人材を異なった業務に配置できます。今まで、手間がかかっていた業務をデジタル化することで、人間がやるべき業務に注力できるのです。
例えば、問い合わせ内容をシステムに自動登録できれば、担当者は顧客に電話するだけで済みます。今まで、データを登録するための担当者がいたならば、この人材は別の業務に割り当てでき、適切な配置を実現可能です。
顧客満足度の向上
不動産DXを推進し、業務効率が高まれば、顧客満足度の向上につながります。例えば、不動産データを活用して顧客に最適な物件を短時間で提案できるようになると、「自分のことをよく理解してくれているため素早く提案してくれた」などと満足度を高める要因になるでしょう。
また、受付業務などをDXで最適化することで、問い合わせ から反応までに必要な時間を短縮できます。このような取り組みも、顧客満足度を高める要因となるでしょう。
不動産DXの事例
不動産DXの事例として以下を紹介します。
不動産の位置を「見える化」
インターネット上に存在する不動産情報から「位置」を見える化するDXツールが存在します。本来、不動産は住所だけで管理されていて、視覚的にどこに存在するかはなかなかイメージできません。自分たちで地図を開き、住所と照らし合わせながら場所を特定する作業が必要です。しかし、ツールを利用すると、このような作業は必要なくなります。
例えば、ZENRIN社の「建物ポイントデータ」を活用した見える化事例では、不動産の設計事務所が周囲の状況を踏まえた住宅やビルの設計を実現しています。今までは、周囲の情報を手動で調べていましたが、データの活用によりこの手間がなくなり、なおかつ正確な情報から設計できるようになりました。
不動産登記情報のオンライン参照
不動産を取引する際には、現在の登記情報を参照しなければなりません。ただ、登記情報の参照はアナログな手続きが多く、不便な部分が多いものでした。しかし、一般財団法人民事法務協会から「登記情報提供サービス」と呼ばれる有料サービスが提供され、これを活用した不動産DXが進められています。
例えば、このサービスに更新される情報を監視することで、登記情報の変化をいち早く察知することが可能です。これを活用し、相続や贈与などによって不動産の所有者が変化したならば、すぐに買取などの相談を持ちかける仕組みを構築した事例があります。
不動産周辺の情報を顧客へ提供
特に不動産を購入する顧客から、不動産周辺の情報を問われる場合があります。例えば、周囲の治安や学校の位置、地域の防災対策などです。ただ、不動産を管理する側がこれらすべてを把握することは難しく、問い合わせがあるたびに調査しなければなりません。
そこで「物件データ」「学校一覧データ」「犯罪統計」などのデータを一括で管理し、物件データに関連するデータを簡単に提示できるようにした事例があります。不動産データは自社で収集する必要がありますが、国土交通省や警察庁などから公開されているデータも多く、これらを組み合わせることで業務の効率化を実現したものです。
空室率を踏まえた賃料の決定
賃貸物件では、空室率によって賃料を変動させることが求められます。一般的に、空室が目立つならば賃料を下げ、すぐに埋まるならば賃料は上げるべきです。利益を最大化するために、定期的な見直しと決定が求められます。
この作業を効率化するために、空室率と賃料の相場に関するデータを大量に収集し、AIを活用して分析している事例があります。本来は、大家や管理会社などとともに人力で見直しますが、DXによりコンピュータが算出した値を軸とした見直しができるのです。直感ではなくデータに基づくということもあり、より正確な賃料の決定を実現しています。
不動産DX成功の秘訣
これから不動産DXを成功させたいと考えるならば、以下を意識することが大切です。
目的の明確化
最初に、DXの方向性を定めるためにも、目的を明確にしなければなりません。目的が明確になることで「いつ・誰が・何を・どのように」すべきかも明確になります。目的が定まらない状態で、大雑把なDXを推進しようとしても失敗するだけです。
目的を明確化するためには、自社が持つ弱点や課題を明確にしなければなりません。例えば、残業が顕著な状態ならば、業務効率化を軸としたDXが必要になるでしょう。また、顧客とのミスマッチが生じているならば、提案に役立つデータの分析ツールなどが必要です。解決すべき課題が明確になれば、それがDXの目的となり、やるべきことも見えてきます。
中長期的な計画の立案
短期的な計画だけではなく、中長期的な計画を立案することが大切です。DXは一気に推進できるものではなく、一般的には段階的に推進します。いきなり社内を大改革しても混乱が生じるだけであるため、少しずつ浸透させていくことが重要です。
もし、短期的に行うのであれば、特定の業務に絞ってDXを推進するようにし、対象は特に注力したい業務を選択しましょう。DXの効果があるか評価しやすく、また、範囲が狭いことでリスクも軽減できます。効果を実感できたり手法が確立できたら、そのナレッジやノウハウを横展開する流れです。
適切なツールの選定
不動産DXを推進するためには、適切なツールを選定することが重要です。どんなにDXを推進する力があっても、ツールが適切でなければ効果を得ることはできません。
例えば、不動産データを収集したいならば「RPA」「スクレイピング」などの手法が考えられます。どちらも自動的にデータの収集が可能ですが、その仕組みや結果、事前の設定作業などには大きな違いがあります。適切にツールを選択できていないと、設定作業でつまづいたり、取得した結果が思ったものにならない可能性があります。
成功のカギは不動産ビッグデータの活用
不動産におけるDXを成功させるためには、以下のとおり、不動産ビッグデータの活用が重要です。
ビッグデータの活用が不動産DXを成功に導く
不動産DXを成功させるためには、不動産ビッグデータの活用が非常に重要です。多くのデータを収集し、それを活用できるかどうかで、DXの価値が変化するといっても過言ではありません。
例えば、ビッグデータを活用すれば、不動産の価格査定を大きく効率化できます。今までは、担当者が経験や勘で算出していた作業でも、不動産ビッグデータを活用すれば過去の価格や周辺の情報からより正確に誰でも算出できるようになるのです。正確かつ短時間で不動産の価格査定が完了するため、業務の効率化や顧客満足度の向上につながります。ビッグデータのように、大量のデータから算出するからこそ、より正確な数値を得られると考えましょう。
ただ、ビッグデータを不動産DXに取り入れる際は、データの収集や分析に力を入れることが大切です。データの品質が悪かったり、分析の手法に誤りがあったりするとDXで得られる効果が薄れてしまいます。
不動産ビッグデータの収集ならばスクレイピングがおすすめ
不動産ビッグデータは専門の会社が提供していることもありますが、より効果的にデータを活用するためには、自分たちで自社に必要なデータを集めることが重要です。信頼できる情報源から必要な項目を収集することで、不動産DXへ活用しやすくなります。
大量のデータの収集元としてはWebサイトが適しており、それらから情報を収集する手段としては「スクレイピング」がおすすめです。スクレイピングは、指定したWebサイトから自動的に必要な情報を収集する仕組みで、データの収集だけではなくルールに沿った加工も可能です。複数のWebサイトを横断して大量のデータを集められるため、不動産DXへ大いに役立てられます。
まとめ
不動産業界がDXを成功させるためには、データの活用が重要であることを解説しました。データに基づいた分析や提案などを実現することで、利益を得たり顧客満足度を高めたりしやすくなります。
不動産データの集合体である「不動産ビッグデータ」は公開されているものを活用することもできますが、より自社に合ったDXを進めるためには、自分たちでWebサイトから収集する「スクレイピング」がおすすめです。信頼できる情報源から必要な情報を大量に収集することで、DXにデータを活かしやすくなります。なお、PigDataでは不動産データが収集できるスクレイピング代行サービスをご提供しています。ぜひご利用を検討ください。