
賃貸市場がここ数年で絶えず変化しています。この記事では、賃貸需要とその変遷に焦点を当て、不動産業者にとっての重要性を解説します。また、市場のトレンドや需要を形成する要因について分析しているので、参考にしてみてください。
目次
賃貸需要とは
賃貸需要とは賃貸物件のニーズを指します。賃貸需要が高いということは、それだけ入居を考えている人が多いと判断できるため、入居者を獲得しやすいです。賃貸需要は、現代の住宅市場で重要な要素であり、不動産業者にとって重要な役割を果たしています。賃貸需要が高い物件には「利便性が高い」「住みやすい」などの特徴があり、市場の変化や顧客ニーズの変遷に影響されます。
不動産業を営む場合、賃貸需要の高い物件は利益に大きく影響するため、必ず把握しておきたい情報です。また、サービス向上や市場競争力の向上にも寄与します。
コロナ禍から現在に至るまでの人口移動・賃貸市場の概況
(参照:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2022年(令和4年)」)
2020年、緊急事態宣言や移動制限の影響で、東京都では転出が増加し、年間転入者数が前年比で大幅に減少しました。2021年にも緊急事態宣言や蔓延防止などの措置が発令され、首都圏への人口流入が急激に鈍化しました。
このような状況下で移動人口は減少し、特に東京23区では転出超過が顕著でした。しかし、2023年に入るとコロナ禍の状況が改善し、社会・経済が再び活気づいています。これに伴い、首都圏への人口流入も増加傾向にあり、特に東京23区では転入者数が増えています。
この動きは、大学や企業への新入学や新入社員が増加していることを反映しています。年齢別に見ると、若年層(20〜34歳)が首都圏に流入する一方、ファミリー層(35〜59歳)は転出傾向にあります。この原因は、高い賃料や物件価格、生活コストの上昇がファミリー層に影響を与えていることが考えられます。
また、首都圏以外の地域では、異なる市場動向が見られます。たとえば大阪では、若年層・ファミリー層ともに転入超過を記録しており、東京都とは異なり、賃料や物価の高騰が影響しているとは考えにくいです。
一方、名古屋では、若年層が若干の転入を記録しましたが、ファミリー層の転出が顕著です。
現在は地域や年齢・世代ごとに転入・転出状況が異なる結果となっていますが、首都圏では単身者向け、郊外ではファミリー向けの需要が今後活性化する可能性が高いと考えられます。
(参考:Panasonic Homes)
主要都市の賃貸市場の動向
(参照:2023年7月 全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向|athome)
アットホーム株式会社の調査・分析結果によると、全国主要都市において、単身者向けマンション、単身者向けアパート、カップル向きマンション、カップル向きアパート、ファミリー向けマンション、ファミリー向けアパート全ての需要が高まっていることがわかります。
これは東京23区、東京都下以外の地方都市でも住環境や利便性が向上しているため、安定した需要が見込まれているということです。
また、アパートにおいては東京23区、東京都下より地方都市の方が上昇傾向にあることから、東京都内ではアパートよりマンションのようなセキュリティなどの設備が整ったところが好まれているのかと予想もできます。
これらの動向から、単身者向け、カップル向け、ファミリー向けの賃貸住宅市場は地域によって異なりますが、一般的に賃貸物件への需要が増加していることが推察されます。
首都圏だけでなく地方都市でも、多様な層への賃貸住宅供給が拡大していると考えられます。
需要を生み出す要因の解析
経済状況、人口動態、都市計画などの外部要因
需要が生まれる要因には経済状況、人口動態、都市計画といった外部要因が影響します。
- 経済状況
地域の経済活動や雇用状況が賃貸需要に影響を与えます。
景気の好転や企業の進出がある場合、その近辺に住む人が増えるため、需要が高まる可能性があります。 - 人口動態
若い世代の独立による単身者向けの賃貸住宅、高齢者の増加に伴う高齢者向け住宅やシニア向け施設の需要など、世代が移り変わるとそれぞれ需要が変化します。 - 都市計画
路線や鉄道などの新しいインフラ整備は物件の立地価値を高めます。アクセスが向上することで、特定のエリアの需要が増加します。また、商業地域の拡大にも影響するでしょう。
新たな仕事やサービスが提供され、人々の住宅ニーズが変化します。
賃貸物件の種類と需要の関係
ここでは、賃貸物件の種類と賃貸需要の関連性に焦点を当て、異なる物件タイプや新しい物件形態が賃貸需要に与える影響について説明します。
異なる物件の種類と需要分析
物件の種類が異なれば、それぞれ違った需要があります。例えば、一人暮らし向けのアパート、カップル向けの2LDK、ファミリー向けの3LDKがあります。都市部では一人暮らし向けのワンルームアパートメントが人気で、中心部に近い場所での需要が高いでしょう。一方、郊外や郊外にあるファミリー向けの住環境では、広々とした3LDKの物件がより求められています。
物件の種類によって需要が異なるため、不動産業者は地域ごとに適切な物件を提供することが重要です。また、新たな住環境やライフスタイルの変化に合わせて、新しい物件タイプの需要が増加する可能性もあります。
テレワークと賃貸需要の関係
現在では、テレワークの普及によりコワーキングスペースなどの施設が登場しました。これまでは、テレワークといえば主に自宅で、たまにカフェが利用される程度でした。コワーキングスペースをきっかけに、テレワークの普及で都心部から離れたところにも需要ができたと考えられます。
コワーキングスペースも増加傾向にあり、通勤に便利な賃貸物件よりも自然が多いなど、仕事よりもプライベートを重視した物件の需要も増えているでしょう。
需要が高い賃貸の特徴
需要が高い物件には共通の特徴があります。
主に次の3つです。
アクセス性のよさ
単にアクセス性のよさといっても、駅やバスなどの公共の交通機関だけではありません。例えば、人気施設や商業施設、銀行、病院にアクセスしやすい、周囲にコンビニやスーパーが点在しているなど、生活に必要な施設があるエリアはアクセス性がよく、利便性が高いと言えます。
設備環境のよさ
需要が高い物件は設備環境がよいといった特徴もあります。
全国賃貸住宅新聞が発表した「入居者に人気の設備ランキング2022」によるとインターネット無料、エントランスのオートロック、高速インターネットは、単身者・ファミリー向け問わず重要な設備とされ、入居を決定づける要素と言えるでしょう。
ニーズに合う間取り
ニーズに合う間取りであるかどうかも重要な要素です。例えば、単身者であれば、ワンルームや1LDKで十分なケースが多く、その分家賃の安い物件が人気です。一方で、乳幼児のいるファミリー向けの物件では、入居者や地域を巻き込んだコミュニティが求められており、そのための間取りや設備に工夫が必要と言われています。ファミリー向けのなかでも新婚層に人気があるのは、40㎡以上で、ウォークインクローゼットなどの収納が豊富なタイプです。この層では、広めの1LDKが求められる傾向があり、築年数の古い2DKを1LDKにリフォームするケースも散見されるようです。
今後の賃貸需要はどうなる?
三菱UFJ信託銀行が2022年に実施した「賃貸住宅市場調査」では、「稼働率」「テナント入替時の賃料」「ダウンタイム(前テナントの契約終了から新テナントの契約開始までの空室期間)」、「広告費・フリーレント」について、調査されました。その結果、ファミリーの「稼働率」では、東京23区41.0、その他首都圏が35.0とポジティブな回答が多くなっています。
「半年後の予想」も東京23区30.1、その他首都圏が25.0と全体を通して前向きな傾向が伺えます。特に東京都の人口流入は郊外・東京23区ともに2021年にV字回復しています。
もともとコロナ直後は、テレワークが基本となり居住地を重視しなくなる傾向がありました。そのため、出社前提でない住宅選びによって、転入減少等が起きたため都心のシングルタイプの賃貸住宅の需要減少が懸念されていました。しかし、OWNER’S STYLEのアンケートによると、「今後従業員に週2日以上の出勤を求める」企業は79%との結果が出ました。
この結果は住宅の選び方にも影響を受けており、出社前提の住宅選びのニーズもあれば、テレワークを前提とした住宅選びまで、さまざまなニーズが現れているでしょう。
需要が高い賃貸を探す方法
需要が高い賃貸物件を見つける方法は、市場リサーチを行い競合物件やエリア別の需要動向を把握し、特定のペルソナのニーズに合致する物件を選定することから始まります。選定後、その物件の開発提案を考え、適切なマーケティング戦略を立て、ペルソナに合う要件を満たす必要があります。
これは自社でアンケートなどを行うことでもできますが、Webサイトから賃貸物件のデータを収集・分析することでも可能となります。
まとめ
この記事では、現在の賃貸市場の概況や賃貸物件の種類と需要の関係について解説しました。
需要が高い物件を調べるには市場調査や需要を生み出す要因の変化を知る必要があり、さまざまなデータを分析して物件開発をする必要があります。まず既存の賃貸価格や物件情報を収集するには専門の不動産サイトを活用するとよいでしょう。
スクレイピングはWebサイトから特定のデータを収集する技術です。弊社が提供するスクレイピング代行サービスではさまざまなサイトを指定し、自社が持つデータでは不足しているデータを収集することで需要分析が可能になります。
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