近年は多くの企業でグローバリゼーション（グローバル化）が進められています。日本のみならず世界に目を向けることによって、市場を開拓できるなどのメリットがあるからです。ただ、グローバル化を進めるにはいくつもの課題があります。今回はグローバル化のメリットやデメリットと課題、成功に向けたポイントを解説します。

グローバリゼーション（グローバル化）とは

グローバリゼーションとは、政治や文化、経済などが国や地域の垣根を越えて、相互に影響を与え合うことを指します。グローバル化とも呼ばれ、経済学や社会学など幅広い分野に影響を与える要素です。ビジネスの世界では、商品やサービス、情報などの交換が多く、国家間の経済的な繋がりや社会的な依存関係にも影響しています。
特に近年は、インターネットが発達したことによって、Web上の情報交換が急速に進展しました。また、交通手段の進化などにより、様々な国や地域が簡単に交流できるようになったことも影響していると考えられます。ただ、それぞれが相互に影響を与えたり結びついたりする反面で、一部の地域文化が消失したり、社会的な問題が発生したりするなどの課題も明らかになってきました。

グローバリゼーション（グローバル化）のメリット

グローバル化を進めるメリットについて解説します。

商圏の拡大

グローバリゼーションにより、企業は地理的な制約を超えて、新たな市場を開拓できるようになりました。これにより、製品やサービスを今まで以上に多くの消費者へ提供できるなど、市場を拡大できることがメリットです。例えば、日本の企業がアジアやヨーロッパの市場に進出することで、国内の市場で成長限界を迎えていても、海外進出によってビジネスを拡大させられます。
また、商圏を拡大して多国籍企業を目指すことで、現地の需要を知ることができ、それに応じた商品やサービスを生み出すことが可能となります。それぞれの地域に適応した製品やサービスを提供することで、競争力の向上が実現され、市場の更なる拡大を実現できることもメリットと考えられます。

生産コストの削減や利益の増加

グローバリゼーションにより、企業は生産拠点を海外に移すことで、コストの削減や利益の増加に繋がります。例えば、労働力や原材料が安価な国に生産拠点を設けると、コストを抑えて商品を生産できます。その結果、今までと同じ価格で販売したとしても、利益を増加させることが可能です。
例えば、日本で原材料を輸入して生産するのではなく、原材料の産地に工場を建てれば、輸入にかかっていた部分のコストカットを実現できます。コストカットによって利益が増加すれば、新製品を開発したり、新しく人材を確保したりできるようになるため、更なる市場の拡大を実現できます。

技術革新の実現

技術革新を加速させる重要な要素であるとも考えられます。例えば、国際的な企業間競争が激化すれば、それぞれの企業は新技術の開発やサービスの改善に注力するでしょう。これによって、新しい技術が生み出されたり、利用者にとって今まで以上に魅力的なサービスが提供されたりするはずです。
国を超えた研究者がそれぞれのノウハウを提供し、新しい技術を生み出した事例があります。グローバリゼーションによって、今までよりも技術の幅が広がり、それが世の中にプラスの効果をもたらすきっかけとなるのです。

グローバリゼーション（グローバル化）のデメリット

グローバリゼーションにはメリットがありますが、同時にデメリットもあるため、注意しなければなりません。

価格競争による消耗

企業間の価格競争が激化することが予想されます。これによって利益率の低下やコスト削減に対するプレッシャーが高まり、消耗戦に陥るかもしれません。大企業ならまだしも、中小企業については価格競争で戦うことができず、倒産してしまうこともあるでしょう。
また、価格競争が激化すると、品質やサービスの低下を招くことが懸念されます。中長期的には企業の評判を下げたり、利用者に不利益を与えたりすることになりかねません。極端なコストカットのために、賃金や原材料を削るなど、市場に悪影響を与えることも考えられます。

自国の技術力低下

グローバル化によって海外工場などを建設するようになると、自国の技術力が低下するリスクがあります。例えば、日本で技術開発して、海外に工場を建設すると、海外で雇用する人材の技術力のみ高まるでしょう。その結果、日本国内の人材は技術力を高める機会を失い、世界的な競争力を失ってしまうかもしれません。グローバル化を展開するためには、日本国内でも世界で活躍できるための技術力などを持ち合わせることが求められます。そのため、すべてを海外に持ち出すのではなく、日本国内に残すべき技術と海外に委託できる技術を見極め、最低限の流出で済むように考え続けることが求められます。

貧富の差が拡大

コスト削減や利益率の向上などのメリットをもたらす一方で、貧富の差を拡大させる原因となることもあります。例えば、発展途上国にグローバル企業が工場を建設する行為は、安価な労働力を吸い上げると評価される可能性があります。現地では最低限の賃金しか支払われず、企業側は莫大な利益を得ることになるのです。
これは一例ですが、グローバル化は先進国と発展途上国の格差を広げる原因となりかねません。もちろん、工場などを建設することで現地に技術ノウハウが伝わり、国全体が潤うという考え方もあります。どのような結果を迎えるかは、グローバル化を進める企業側のさじ加減次第と表現しても過言ではないでしょう。

グローバリゼーション（グローバル化）における課題

グローバル化においては、いくつもの課題が存在します。特に重要な観点を挙げると以下の通りです。

海外の法令や規則に抵触するリスクがある

企業がグローバル化を目指す際に注意すべきは、海外の法令や規則を理解することです。グローバル企業は日本だけではなく、ビジネス進出する各国の法制度や規則などを理解しなければなりません。しかし、詳細な内容は複雑なことが多く、誤った認識によってミスを犯すかもしれません。例えば、労働関係の法律や税金関係の法律などが問題の原因となることがあります。これらを理解していないと、賃金の支払いミスや過労働など重大な問題を引き起こす可能性がある点でリスクです。そのため、常に最新の法律情報を収集することが求められます。また、場合によっては専門家のアドバイスを取り入れることも必要です。

進出先の情報が入手しずらい

海外の市場へ進出する際には、現地の動向や消費者の考え方などを収集しなければなりません。しかし、国や地域によってはこれらの情報がスムーズに手に入らないこともあります。このような情報の入手しづらさは、グローバル化におけるデメリットと考えられます。
また仮に情報が手に入ったとしても、それが信頼性や正確性に足るものであるかを評価しなければなりません。一般的にグローバル化は日本での事業拡大よりもコストがかかるため、情報の誤りが大きな判断ミスにつながる可能性があります。

自然災害の影響を受ける可能性が高まる

企業が複数の国や地域に生産拠点や事業所を構えると、自然災害のリスクが高まることがあります。日本では、地震や台風が問題視されますが、アメリカではハリケーンなどが発生することがあります。また、地域によっては干ばつなどの問題が生じることも考えられ、それぞれの国や地域に適した対策が求められるようになるのです。
適切な準備をしておかないと、自然災害の影響によりサプライチェーンが停止する可能性があります。これは企業の信用度に影響するため、より多くのコストをかけて対策を講じる必要が課題として生じるのです。

多様性を受け入れる風土づくりが求められる

特に日本から海外展開を考える際は、多様性を受け入れる風土作りが重要です。一般的にグローバル企業では、多様なバックグラウンドを持つ従業員が同じ環境で働きます。そのため、文化や価値観の違いをお互いに受け入れ、差別や偏見なく働ける環境を整えなければなりません。日本は比較的閉鎖的な文化であるため、多様性を受け入れようとしない人が一定数見受けられます。個人の価値観を強制することは難しいですが、全社的には受け入れる風土作りを整えることが重要です。

日本ではグローバル人材が不足しがち

日本企業がグローバル展開してグローバル企業になるためには、いわゆるグローバル人材の確保が必要です。例えば、英語力の高い人材や、異文化を深く理解している人材のことです。しかし日本ではこのような人材が不足していると考えられます。日本の教育はグローバル化を前提としたものではないため、十分な知見を持っている人は一部に限られています。そのため、人材の確保に失敗し、グローバル化に失敗してしまうことが懸念されます。もちろん、グローバル化の過程で人材を育てるという選択肢もありますが、グローバル人材が不足しがちであることは大きな課題でしょう。

グローバリゼーション（グローバル化）の主な戦略

グローバリゼーションには、いくつか代表的な戦略があり、それらについて簡単に解説します。

グローバルスタンダード戦略

グローバルスタンダード戦略は、世界中で同一の製品やサービスを提供し、標準化されたマーケティングを展開する戦略です。製品やサービスの品質を一貫して維持することで、コスト削減や効率的な運営を目指すことが目的です。例えば、世界中で同一の製品デザインやブランドイメージを用いることで、顧客に安定した価値や品質を提供します。規模を活かし競争力を高める戦略ではありますが、国や地域の特徴を無視しがちな戦略になりかねるため注意が必要です。

トランスナショナル戦略

トランスナショナル戦略は、グローバルな視点で効率性を追求することを軸とした戦略です。各国や地域のニーズや文化などに適応しようとする視点があるため、グローバルスタンダード戦略とは異なります。この戦略の場合、グローバルスタンダードのような統一した管理と現地の自律性をバランスよく組み合わせ、競争力の強化が可能です。例えば、製品の中心となる機能は統一しつつ、各市場の文化などに適した内容にカスタマイズすることで、現地の消費者に適応します。

インターナショナル戦略

インターナショナル戦略は、企業が自国で成功した製品やサービスを他国などへ展開する戦略です。自国で培った技術やノウハウを活用することで、現地市場への対応を最小限に抑える方法と考えましょう。例えば、自国で成功した製品やビジネスモデルをそのまま海外に導入し、市場拡大を図るのです。そのため、初期投資やリスクを低く抑えることが期待できる戦略といえますが、現地市場の特性に十分に対応できない場合、競争力を失いかねません。

グローバリゼーション（グローバル化）を成功させるためのポイント

グローバル化を成功させるためには、以下のポイントを意識することが重要です。

国際的規約に適応する

グローバル化で特に重要な要素は国際的規約を理解して、製品やサービスに適用することです。

物流に関するもの

国際物流においては、輸送手段や通関手続きに関する規約を理解して適応することがポイントです。例えば、各国の税関規則や輸入禁止品目、検疫規則などを把握することが求められます。また、IMO（国際海事機関）が定めている規則も理解すべきです。規則の変化により物流会社のルールが変更となり、国際的な物流やサプライチェーンに影響を及ぼす可能性があるかもしれません。

貿易に関するもの

貿易に関する規約には、国際貿易協定や関税制度などが挙げられます。例えば、WTO（世界貿易機関）の協定やFTAやEPAなど地域貿易協定を理解し、細かな規則の把握から適用まで対応することが必要です。これらは定期的に改定されるため、その変更を把握して自社のビジネスに影響がないかどうかの評価も求められます。もし、ビジネスの展開に影響を与える規則の変更や貿易紛争などを確認したならば、ビジネス戦略を見直すなどの対応も必要です。他にも、輸出入のライセンスや許可、貿易制限品目のリストなど各国が独自に定めている貿易管理規則にも適応しなければなりません。

環境に関するもの

環境に関連する国際規約は、企業が持続可能なビジネスを展開するために重要です。例えば、パリ協定や京都議定書など、国際的な気候変動に関する協定は、ビジネスを展開するにあたって、考慮した方が良いでしょう。このような規約を無視してビジネス展開を進めてしまうと、世界からバッシングを受ける原因となりかねません。また、各国の環境保護法や、廃棄物の管理規則、リサイクル規則なども確認しなければなりません。環境に負担をかけないビジネスの展開は、どこの国でも求められる事項であるため、国際的な規約はもちろん、各国の規制の理解が重要です。

製品規格に関するもの

製品企画について国際規約が設けられている場合があります。このようなものが存在するならば、理解しておかなければ、グローバル市場へ参入することはできません。例えばヨーロッパのCEマークやアメリカのUL認証など安全規格を遵守することは、品質に関わる重要な要素です。また、ISO（国際標準化機構）の製品品質管理規格を導入することも重要です。最新の規格や変更点を素早くキャッチして製品やサービスへと反映させることで、顧客へ信頼性と品質の高さを示せます。加えて、他の競合メーカーが遵守している規格やトレンドを把握しておくことで、自社の製品やプロセスを改善でき、国際競争力を維持したり高めることもできるでしょう。

現地の情報収集を怠らない

グローバル化にあたっては、現地に適した製品やサービスを提供する必要があります。そのため現地の情報収集が非常に重要です。

文化・宗教について調べる

現地の文化や宗教について理解しておかないとビジネスが成功しない可能性が高まります。例えばイスラム圏で商品の展開を考えているならば、ハラール認証の取得などを検討した方が良いでしょう。この情報を取得しているかどうかで、現地に受け入れられるかどうかが大きく変わります。また、現地で重要な宗教行事や祝日などを把握しておくことも重要です。現地の人々が大切にする価値観や信念を考慮していないと、マーケティング戦略や製品の訴求ポイントに反映できません。また、現地でのコミュニケーションに問題が生じることも考えられるため、時間をかけてでも丁寧に理解する必要があります。

法律や商慣習を理解する

ビジネスを成功させるためには、現地の法律や商習慣の理解が重要です。例えば、現地で会社を設立するための手続きや従業員を雇用するための法律などを把握しなければなりません。契約書の作成方法も日本と異なる場合が多く、現地での最適な方法を確認しておくことが重要です。また、個人情報の取り扱いが国や地域によって異なるという特徴もあります。例えばヨーロッパではGDPR（一般データ保護規則）を遵守しなければなりません。それぞれの規制を踏まえてビジネス展開しなければなりません。

他にも、商習慣も考慮することが重要です。海外ではクレジットカード決済が主流の国もあれば、中国のように銀聯やAlipayが主流の国もあります。現地の動向や消費者のトレンドも考慮しなければなりません。これらを考慮することで、現地で十分な競争力を維持できるはずです。

現地での最新情報（トレンド）を把握する

現地市場の動向や消費者のトレンドを把握することは、グローバル市場で競争力を維持するために重要です。例えば、現地の市場規模や成長率、競合他社の動向を把握して、現地のトレンドを理解します。また、現地メディアやSNSから情報収集して、特定の商品やサービスに対する反応を把握することも大切でしょう。特にSNSから得られる「生の声」を調査することで、現地の人々が何を求めているのか掴みやすくなります。トレンドは移り変わりが激しく、タイミングを逃すと販売戦略が競合より出遅れるなどの可能性があるため、常にトレンドが把握できるような仕組みづくりが大切です。

現地になじむデザインを考案する

製品やサービスが現地に馴染むためには、デザイン面で現地に馴染むことが重要です。印象を左右する部分であるため、現地の顧客が好みやすいデザインや色使いを意識して、製品やサービスを展開するようにしましょう。グローバル化の戦略に左右されますが、可能な限り現地の文化や歴史に根付いたデザインを取り入れることが望ましいです。そうすることで、現地の顧客からなじみの深いデザインや商品サービスとして、認識してもらえる可能性が高まります。また、国や地域によってはデザイン面に制限が設けられているかもしれません。例えば、過度な露出を含むデザインは認められないことが考えられます。現地の規則に適したデザインでないと、そもそもビジネスを展開できなくなるため、その点も十分に考慮しなければなりません。

社内でもグローバル化を浸透させる

社内でも積極的なグローバル化を進めていくことが重要です。内部でグローバル化が進んでいない状況で、外向けにグローバル化を進めても思うように成功しません。社内でグローバル化の基礎を固めてから、ビジネスを展開できることが理想的です。例えば、グローバル人材を確保して、社内に多様な文化を浸透させるようにします。また、外国語の研修を積極的に取り入れ、多言語に対応できる人材を育てることも良いでしょう。他にも上記で解説したような法律や規則を調査したり徹底したりする部署を設け、そこにリソースを割り当てることも、社内のグローバル化といえます。

まとめ

グローバル化を成功させるためには、国際情報と現地の情報を事前に知っておくことが重要です。特に海外は日本の常識が通用しないケースが多々あるため、事前の情報収集がビジネスが成功するかどうかの鍵を握ります。国際情報や現地の情報を収集するためには、気軽に利用できるWebサイトを活用すると良いでしょう。ただ、Webサイトは多岐にわたるため、それらから情報を収集し続ける作業には負担が生じます。そのため、Webサイトの情報を簡単に収集できる更新チェックツールがおすすめです。弊社のTOWAならば、事前に指定したURLの変更情報をスムーズにキャッチできます。規則の変更などもいち早く検知できるため、ぜひお試しください。