
電気自動車を取り巻く環境は、常時変化していて、企業の担当者は情報の収集に追われていることでしょう。特に、自動車業界の開発部は、市場動向を把握して開発に活かすことが求められますが、これは非常に負担がかかる作業です。差別化に向けて技術の最新トレンドや競争状況の把握は必須ですが、日々の業務に追われて思うように集中できないと考えられます。また、開発の前提となる法規制など非常に重要な情報の収集の優先度は高く、これらだけで手一杯かもしれません。
今回は2024年最新の電気自動車を取り巻く状況、必ず押さえておきたい法規制やアセスメント、そして最新のトレンド等の情報を収集するために活用したいツールなどについて解説します。
目次
️現在の電気自動車市場の状況
最初に現在の元気自動車市場はどのような状況であるのか。日本国内と世界の両方の観点から解説していきます。
日本の電気自動車市場のシェアと成長率
日本の電気自動車市場は急速に成長していて、その市場規模は2024年には約433億2000万米ドルに達すると考えられています。また、このまま成長を続け、2029年までには945億1,000万米ドルへと成長する見込みです。非常に高い成長率が見込まれる業界であり、2024年から2029年までの年平均成長率(CAGR)は、16.88%です。自動車市場全体の年平均成長率は、6%から10%程度であると算出されているため、これらと比較すると電気自動車市場は成長率が高いと判断できます。
世界の電気自動車市場のシェアと成長率
世界の電気自動車市場も著しい成長を遂げていて、2023年は電気自動車の販売台数が2022年に比べて35%増加しました。概ね1,360万台の電気自動車が世界で発売されていて、日本のみならず世界中で電気自動車が積極的に利用されている状況です。特に、中国市場が活発で、電気自動車など新エネルギー車と呼ばれる分類の販売台数は、2022年に比べて、2023年は38%も増加しています。また、ヨーロッパでは2023年の新車販売台数に占める電気自動車の割合は37%増加、アメリカでも電気自動車の販売台数が前年に比べて51%増加と大きく拡大している状況です。
主な電気自動車メーカーとその戦略
日本では日産とトヨタが電気自動車市場を大きく握っています。
まず、日産は「リーフ」や「アリア」などのモデルで市場をリードし、2022年度のシェアは約89.11%と圧倒的です。今後もこれらを軸に展開していく戦略を示しています。
対して、トヨタはハイブリッド技術に強みを持ちつつ、「bZ4X」などのEVモデルを展開しています。ただ、シェアは6.46%にとどまり日産には大きく及びません。ただ、今後は 新しいモデルを投入する戦略としています。
電気自動車が普及する背景
一般的に電気自動車が普及する背景には、それぞれの国が環境へ配慮して規制を強化したり、電気自動車に関連する産業が成長している現状があります。これらについて、続いては解説していきます。
️電気自動車に関する日本の方針と取り組み
日本ではカーボンニュートラルを目指す一環として、電気自動車の普及が推進されています。政府は2035年までに新車販売を全て電気自動車に変更することを目標とし、単純な自動車の販売だけではなく、充電インフラの整備や補助金の提供などの支援策も実施している状況です。経済産業省として「次世代自動車戦略」を軸としたプロジェクトを数多く進め、電気自動車の普及や促進とともに、新しいバッテリーの開発やリサイクル体制の構築にも注力しています。
また自治体レベルでも、電気自動車に関する取り組みが見られ、例えば東京都などは、購入に際して補助金制度を設けています。都市部だけではなく地方でも様々な制度が用意されていて、電気自動車が購入しやすい環境となり、これが電気自動車の普及を後押ししている状況です。
電気自動車に関する世界の方針と取り組み
世界的には気候変動対策と、エネルギー減を見直すとの観点から、電気自動車の普及が急速に進んでいます。例えば、EUでは2030年までに新車販売をゼロエミッション車に限定する目標を掲げました。また、各国で購入支援や充電インフラの拡充が進められています。
他にも、中国はNEV(新エネルギー車)政策を推進し、電気自動車購入に対する補助金や税優遇措置を実施していることが特徴です。アメリカでも政府が電気自動車に向けたインフラの大規模投資を発表し、ゼロエミッション車の普及を加速させています。
電気自動車の課題
電気自動車は魅力的ではありますが、いくつもの課題が残っています。
日本国内の電気自動車の課題
日本の電気自動車市場は多くの課題に直面しています。
まず、充電インフラの整備が遅れており、都市部でも十分な充電ステーションが設置されていません。これは、電気自動車が普及するための障壁となっているでしょう。日本においては「利便性の悪い車」とのイメージを払拭できていないのです。
また、EVの航続距離が依然として短く、消費者の「レンジアキシティ(航続距離不安)」を解消できていないことも課題でしょう。リチウムイオン電池のコストが高く、電気自動車の価格がガソリン車に比べて高いことも併せて価格面の課題といえます。政府の補助金制度などがありますが、ガソリン車の水準にはならず、総じてコスト面の負担が大きいことは大きな課題です。
世界市場での電気自動車の課題
世界市場でも電気自動車(EV)の普及にはいくつかの課題があります。
まず、日本と同様に充電設備の整備が不十分で、例えばアメリカの中西部やヨーロッパの一部地域では充電ステーションが不足しています。国土が大きく長距離移動が求められる地域でありながら、充電が難しいために積極的に電気自動車が購入されない状況です。
また、世界的に見ても電気自動車の価格は依然として高く、政府の補助金や税優遇措置が求められることも課題です。ただ、政策は各国で異なり一貫性が欠けているため、電気自動車が普及しつつある国とそうではない国の格差は開きつつあります。
加えて、それぞれの国で政策が異なるため、規制が少しずつ異なっていることが課題として挙げられます。その結果、開発された電気自動車が基準を満たさず、思うように事業者が展開できないなどの問題が生じているのです。
電気自動車に関する法規制・アセスメント
電気自動車に関連する法規制やアセスメントが存在するため、それらについて解説します。
日本国内の電気自動車関連の法規制・アセスメントとその影響
日本では、2035年までに新車販売を全て電動車にすることを目指す「ゼロエミッション車(ZEV)規制」を制定しています。これに伴い、電動車普及促進のための様々な法規制とアセスメントなど、さらに細かい規制が導入されている状況です。
例えば、東京都では新築建物にEV充電設備の設置が義務付けられる条例が2025年4月から施行されました。国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構が主導する「自動車アセスメント」では、電気自動車についても項目が強化されました。
世界各国の電気自動車関連の法規制・アセスメントとその影響
世界各国でも電気自動車の普及に向けた法規制とアセスメントが進んでいます。例えば、EUでは2035年までにガソリン車の新車販売を禁止する計画、法規制を掲げました。その結果、これの実現に向けて購入支援策や充電インフラの拡充などが進められています。他にも、中国では補助金や税優遇措置を通じて普及を加速させている状況で、CO2排出削減を目指す「ライフサイクルアセスメント」も導入されました。
電気自動車の技術の最新トレンド
電気自動車の技術は常に進化しているため、最新トレンドをおさえておきましょう。
注目すべき電気自動車の最新技術
2024年の電気自動車業界では、いくつかの技術進化が注目されています。例えば、全固体電池と呼ばれる電池の登場です。これは従来のリチウムイオンバッテリーと比較してエネルギー密度が高く、安全性も向上しています。トヨタが発表した最新の固体バッテリーは、航続距離が約1,200kmと非常に長くなっており、従来の問題を解決するものとして期待されています。
また、テスラの充電プラグが業界標準として採用されつつあります。これは、フォードやGMなどの主要メーカーがテスラの充電設備を活用できるようにするためです。これを実現できれば充電インフラの問題が大幅に改善され、電気自動車の利便性が向上するでしょう。
新しい技術が電気自動車業界に与える影響
電気自動車業界を取り巻く技術は数多くあり、これらが業界に影響を与えることが考えられます。例えば、AIが発展することで、AIを活用した自動運転の技術が広がることが考えられます。現在でも標識などを読み取って運転速度を調節したり、周囲の状況をセンサーで読み取って、加速や減速を自動化する技術が生み出されています。自動車にもこれらが当たり前のように搭載され、各自動車メーカーは差別化に向けて自動運転関連のアイデアを生み出すことが求められるかもしれません。
また、ネットワークの世界が進化していて、2030年には現在の5Gから6Gへと進化する見込みです。6Gへ進化すると現状の約10倍の通信速度を実現でき、遠隔地でもほぼリアルタイムでやり取りできると考えられてます。そのため、ネットワーク経由で電気自動車を運転するなどの技術が必要になるかもしれません。
他にも、センサー関連の技術が発展したことで、IoTが幅広い分野で利用されるようになっています。これを電気自動車に応用して、自動車のセンサーが常に情報を収集して、利用者のスマートフォンに問題を通知する機能が当たり前になるかもしれません。部品が故障する前に、危険であることを知らせる仕組みづくりが必須となることも考えられるのです。このように今どのような業界にも関わる最新技術が発達することで、自動車業界も自動車そのものの開発はもちろん、マーケティング等にも影響を及ぼすでしょう。
効率的に最新情報をチェックする方法
電気自動車業界は急速に変化を遂げています。成長の著しい業界であり、それに合わせて関連する法規制やアセスメントも随時更新されている状況です。世界中の情報を効率よくキャッチアップして内容を確認することが求められます。そこで、続いては効率的に電気自動車に関連する最新情報をチェックする方法についても解説します。
Webサイト更新チェックツールで常に監視する
電気自動車に関する新しい情報は、Webで発信されるケースが大半です。そのため、Webで公開された情報をいち早くキャッチすることが求められます。しかし、法令情報やニュースなどを含む数多くのWebサイトを常に目視でチェックする、というのは業務上難しいことが多いでしょう。常に電気自動車のトレンドや各国の規制の最新情報を効率よくチェックしたいならば、Webサイト更新チェックツールの活用がおすすめです。人間がチェックすると負担がかかりミスが生じる可能性もありますが、専用のツールを利用すれば負担はなく、変更も素早くキャッチできます。
PigDataのWebサイト更新チェックツール「TOWA」なら、監視したいサイトのURLを登録するだけでWebサイトの監視が可能です。監視対象に変更があった際はメールで通知してくれるため、最新情報を見逃すことがありません。また細かなキーワード設定やグループ設定ができるため「必要な情報を必要な人にだけ届ける」ということが実現できる点でもおすすめです。
電気自動車の今後
電気自動車を取り巻く環境は変化が激しく、今後の予測は難しいものですが、大胆に予想してみます。
日本国内の電気自動車の今後
現在、自動車販売台数における電気自動車の割合は2%程度です。しかし、政府の目標に向かって行動が加速すると仮定すると、ここ数年以内の間に大きく割合は変化し、一気に半数以上が電気自動車になるかもしれません。現在は電気自動車が走っていると、少々珍しい印象を受けますが、この先は逆にガソリン車が走っていると珍しい時代が来るのです。
特に、日本は周囲に同調する傾向があるため、職場などで周りの人々が電気自動車に買い換えると、同じく電気自動車へと買い換える人が増えるでしょう。結果、加速度的に電気自動車が普及すると予想します。現時点では、コスト面や航続距離の問題で、そもそも購買意欲が低いですが、この先数年でこれらが解決されれば、日本国内では電気自動車が一気に普及するはずです。
また、国内の主要メーカーであるトヨタ、日産、ホンダはEVへのシフトを加速させています。それぞれのメーカーが2026年までに多くの新型電気自動車を計画していて、これが実現されれば一時的にでも、日本国内での新車販売台数が大きく増えるでしょう。大量生産による低価格化や補助金の創設などによって、低価格で購入できるならば、購入のハードルは大きく下がります。結果、電気自動車の登場や普及によって、自動車業界だけではなく、日本経済そのものの流動性に影響を与えるかもしれません。
世界市場での電気自動車の今後
現在、電気自動車の世界シェアは、米テスラを筆頭に中国BYDやドイツのVMグループなどが販売数を伸ばしています。その反面で、アメリカのGMグループ、日本の日産や三菱など販売数を減らしているメーカーも存在している状況です。ただ、今後、電気自動車は機能面による差別化が顕著になると予想し、これが世界シェアに大きな影響を与えるかもしれません。例えば、現時点では、スーパーカーのような速さに特化した電気自動車はごく一部ですが、スーパーカーは根強いファンが多いことから、今後電気自動車でもスーパーカーの車種が新たに登場し、世界で注目されることも予想できます。また、電気やモーターという特徴を活かして、今までにはない発想の車種が登場することも考えられます。世界に目を向けると多くのメーカーがあるため、日本では考えられないような車種が登場してもおかしくはありません。世界の電気自動車市場のシェアは、今後大きく変化する可能性を残しているのです。
また、どのようなメーカーが業界をリードするかによって、電気自動車の価格にも差が出てくるでしょう。例えば、現在の米テスラは高価な路線、中国BYDは安価な路線を進んでいます。どちらが主流になるかによって、追従するメーカーが設定する価格にも影響が出るでしょう。とはいえ、電気自動車が大衆車になる近未来では、今よりもずっと価格を抑えた車種が多く登場するはずです。
まとめ
電気自動車が今後どのように普及して、どのような変化を遂げるかの予測は簡単ではありません。そのため、常にトレンドや規制の最新情報をキャッチして需要予測に活かし、製品に反映していくことが大切です。
情報を収集する際はWebサイトの活用が重要で、効率的に情報収集するならTOWAの利用をおすすめします。海外の規制当局や自動車メーカーなどを監視対象としておくことで、変化があれば速やかに検知と通知が可能です。
