
データドリブンとは、売上・利益・顧客の購買履歴・コストなどのデータ可視化や分析を行い、その結果を参考に意思決定を行うことです。導入すれば、迅速で的確な経営判断の実施や業務効率化と生産性・顧客満足度の向上を実現でき、企業競争力の強化につながります。
本記事では、データドリブンの概要やメリット・デメリット、実現プロセスと成功事例について詳しく解説します。データドリブンについて知りたい方、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
データドリブンとは

データドリブンとは、データを基に意思決定を行うことです。例えば、売上・利益やコスト、顧客の購買履歴などさまざまなデータを活用します。データドリブンには以下の特徴があり、従来の経験や勘に基づく判断よりも正確な結果が得られます。
- 客観性:個人の主観ではなく、数値などの客観的なデータに基づいている
- 再現性:スキルを有する人材が同じデータを用いれば、同様の結論に至りやすい
- 検証可能性:結果が出た後に、なぜその結果になったのかを検証できる
データドリブンを導入すれば、より効率的な企業・事業経営が実現するでしょう。
データドリブンが注目を集める背景
データドリブンが注目を集める背景には、主に以下の理由があります。
- 消費者ニーズの多様化と行動の複雑化
- テクノロジーの進歩
- 競争の激化
順に解説します。
消費者ニーズの多様化と行動の複雑化
データドリブンが注目される背景には、消費者ニーズの多様化と行動の複雑化があります。近年の消費者は、WebサイトやSNSを活用して口コミ・評判を含めた多彩な情報を集め、購入するか判断しています。以前のように、良いモノを安く売れば確実にモノが売れる時代ではありません。
選択肢が広がったことなどに起因して、さまざまな価値観を持つユーザーが誕生しており、消費者のニーズ把握が困難になっています。データドリブンを導入すれば、客観的なデータから消費者の好みを把握したり、各ユーザーに適した商品・サービスを予測・提案したりできます。
テクノロジーの進歩
テクノロジーの進歩も、データドリブンが注目される理由の一つです。近年は、インターネットが普及した結果WebサイトやSNSなどから日々膨大なデータが生み出されています。さらに、AIやCクラウドを活用したデータの収集・分析・可視化・活用ツールにより、これまで扱いきれなかったデータもビジネスに活かせるようになってきています。こうしたテクノロジーの進化により、データに基づいた意思決定を行う「データドリブン経営」の実現を後押しするようになりました。
競争の激化
競争力の激化も、データドリブンが注目される理由です。グローバル化や人口減少にともなう消費者の減少などが原因で、競争が激化しています。外部環境や消費者ニーズの変化も激しく、企業活動の継続・発展における難易度が向上しているでしょう。データドリブンを導入すれば、迅速かつ適切な意思決定ができる可能性が高まり、企業競争力の向上につながります。
データドリブンのメリット

データドリブンを導入すれば以下のメリットを得られます。
- 迅速で的確な経営判断の実施
- 業務効率化と生産性の向上
- 顧客満足度の向上
- リスクの回避と新規ビジネスの創出
ここからは、上記の各メリットについて解説します。
迅速で的確な経営判断の実施
データドリブン導入における最大のメリットは、迅速で的確な経営判断の実施です。リアルタイムのデータ共有・活用ができ、勘や経験に基づく属人的な意思決定から脱却可能です。ピンチやチャンスに対して、迅速な対策も打てるでしょう。
業務効率化と生産性の向上
業務効率化と生産性の向上も、データドリブンを行うメリットです。業務プロセスを分析すれば、無駄な作業やボトルネックを分析・把握でき、作業やビジネスプロセスの最適化に役立ちます。また、効果的なデジタルマーケティングも実行できるようになり、コストパフォーマンスの向上が見込めます。
顧客満足度の向上
データドリブンを導入すれば、顧客満足度の向上にもつながります。データの活用により、顧客ニーズを素早く把握でき、各顧客に合わせてパーソナライズした体験の提供が可能です。また、製品やサービスの改良にも役立ちます。
リスクの回避と新規ビジネスの創出
リスクの回避と新規ビジネスの創出にも、データドリブンは有効です。顧客や市場データなどを基に、自社の状態や強み・弱点を客観的に分析できます。例えば、クレームや悪い口コミを発見した際、スピーディーに対処すればリスクの回避だけでなく顧客満足度の向上につながります。また、消費者のニーズをいち早く把握すれば、新たなビジネスを創出できるでしょう。
データドリブンの課題やデメリット

メリットがある一方で、データドリブンには以下の課題やデメリットが存在します。
- 専門的な知識やスキルが必要
- 誤った情報活用によるトラブルの発生
順に解説します。
専門的な知識やスキルが必要
データドリブンの実施には、専門的な知識やスキルが必要です。データの収集や可視化、分析スキルがなければ、的確な結果を得られません。また、データ自体は売上や利益、市場動向などを客観的に示したものに過ぎず、そこから原因や傾向を読み取り、次に取るべき行動を判断する力が求められます。数字を“読み取る力”と“判断する力”が重要です。
誤った情報活用によるトラブルの発生
誤った情報活用によりトラブルが発生する可能性があることも、データドリブン実施のデメリットです。分析データに抜け・漏れ・誤情報が含まれれば、導き出される結果も間違うリスクがあるでしょう。
また、データドリブンでは定量的なデータが重視される一方で、定性的な情報が見落とされがちです。具体的には、顧客や従業員の声・満足度などが軽視されるケースがあります。ただ、定性的なデータには数値に表れない重要な情報が隠されています。データは一つの判断材料と捉え、過信し過ぎないことが重要です。
データドリブンの成功事例

データドリブンはすでに多くの企業で導入されています。ここからは、データドリブンにおける以下の成功事例について詳しく解説します。
- 星野リゾート
- 日本たばこ産業
- 第一三共
- GMOリサーチ
星野リゾート
星野リゾートは、リゾート・温泉旅館運営やブライダル、エコツーリズムなどの事業を展開している企業です。業務効率化と顧客対応品質の向上を目的にブライダル事業でCRM・SFAを導入し、データドリブンに取り組みました。
取り組みのきっかけは、ブライダル施設への来館予約キャンセルの発生です。顧客データの集約と分析をした結果、キャンセル率が向上する要因を発見して、対策を打つことでキャンセル50%削減に成功しました。
日本たばこ産業
日本たばこ産業は、たばこや医薬品、加工食品などの製造・販売を行う企業です。AIを用いたデータ分析の導入で、経験と勘に依存したマーケティングからの脱却に成功しました。
ダイレクトメッセージを送る際、以前は一部のみのデータを参考に担当者の経験と勘でおすすめ銘柄を決めていました。AIを用いたデータ分析に変えた結果、日本たばこ産業銘柄への移行人数が1.2倍になっています。
第一三共
第一三共は、OTC医薬品やスキンケア用品、健康食品などの製造・販売を行う企業です。ビッグデータとAIなどの活用で新薬の開発スピードを早めています。
新薬開発の成功確率は2万分の1程度といわれています。第一三共では高品質な薬品をより早く患者に提供する目的で、病気に効果のある化合物を見つけるためのAIスクリーニング実施を導入しました。
その結果、約2ヵ月で大量の良質な新薬候補化合物の創出に成功しています。また、バイオ医薬品の生産効率と品質向上も実現しました。
GMOリサーチ
GMOリサーチは、オンラインでのアンケート作成・配信・回収や集計などを手掛けている企業です。データドリブンの導入により、運営するアンケートサイト「infoQ」のアクティブ会員率増加に成功しました。
GMOリサーチでは、MAを導入して登録経路などのデータを参考に、パーソナライズされたコンテンツをステップメール形式で配信する取り組みを実施しました。その結果、新規登録会員における1ヵ月後のアクティブ会員率が1.4倍に増加して、2ヵ月後もアクティブ会員率を維持する成果が得られています。
他にもデータ活用の成功事例を知りたい方は、以下もご覧ください。
データドリブン実現のプロセス

データドリブン実現のプロセスは以下の通りです。
- 目的やゴールの明確化
- 必要なデータの棚卸しと収集・蓄積
- データの可視化と分析
- アクションプランの策定と実行
- 効果の検証と改善
順に解説します。
1.目的やゴールの明確化
まずは、データドリブンを導入する目的やゴールを明確にしましょう。また、組織全体で決定事項を共有して、従業員の理解を得ることが重要です。組織全体でデータドリブンに取り組まなければ、情報の収集や蓄積が困難です。
2.必要なデータの棚卸しと収集・蓄積
続いて、必要なデータの棚卸しと収集・蓄積を行います。データと一言でいっても、膨大かつ多彩なデータが存在します。さまざまなデータを集めようとすれば、多額のコストと手間がかかるでしょう。
収集データの選定時には、社内だけでなく社外データも視野に入れることが重要です。社内外のデータを効果的に組み合わせることで、より広い視点での分析や情報の読み取りが可能になります。オープンデータやデータマーケットプレイスの利用、業界横断的なデータ共有の推進により、自社だけでは得られない洞察を獲得し、競争優位性を高められるでしょう。
必要なデータの種類が明確になったら、収集と蓄積を行います。データは一ヵ所に集めなければ、サイロ化が起こる原因になるため注意が必要です。データのサイロ化とは、縦割りの組織構造や複数システムの利用などにより、データ統合が行われていない状態のことです。これはデータ活用の妨げや手間・コストが発生する原因になります。データドリブンを実現するには、データの蓄積・分析を行う基盤が必要です。
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なお、外部データの重要性やデータのサイロ化について詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
3.データの可視化と分析
続いて、データの可視化と分析を行います。データ可視化・分析手法にはさまざまな種類があるため、目的に応じて最適な方法の選択が重要です。データ可視化・分析手法の一例は以下の通りです。
可視化手法 | 分析手法 |
---|---|
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データの可視化や分析に関する詳細は以下をご覧ください。
4.アクションプランの策定と実行
データの分析結果に基づき、具体的な実効策などのアクションプランを策定して実行します。リソースが限られている場合には、優先順位付けをした上で短期・中期・長期に分けて施策を検討すると良いでしょう。
5.効果の検証と改善
実行後には効果の検証と改善も欠かせません。期待していた成果に対して、どの程度の効果が出たかや良かった・悪かった理由を検証しましょう。継続的にPDCAサイクルを回せば、より多くの成果を得られるようになります。
データドリブンの実現に役立つツール

続いて、データドリブンの実現に役立つ以下のツールを紹介します。
- Web解析ツール
- DMP
- CDP
- DWH
- MA
- SFA
- CRM
- ERP
- BI
Web解析ツール
Web解析ツールとは、特定のWebサイト・キーワードに対するユーザーのアクセスやクリック率、離脱箇所などを分析するツールのことです。Google Analytics4が有名ですが、それ以外にも以下のさまざまなツールが存在します。
- GAREPO
- AIアナリスト
- FARO REPORT
- アナトミー
- SimilarWeb
- Juicer
DMP
DMP(データマネジメントプラットフォーム)とは、インターネット上に蓄積されたマーケティングに役立つデータを一元管理するプラットフォームのことです。具体的には、ユーザーの購入・行動履歴や宣伝効果のデータなどが管理の対象になります。
CDP
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは、顧客データを一元管理して活用するプラットフォームのことです。各顧客の分析が可能になるため、パーソナライズされたサービス提供が可能になります。
CDPの詳細やDMPとの違いは以下をご覧ください。
DWH
DWH(データウェアハウス)とは、企業内のさまざまなシステムやデータソースから収集された大量のデータを統合・蓄積するデータベースのことです。大量のデータであっても高速処理が可能で、迅速な意思決定に役立ちます。
DWHの詳細は以下をご覧ください。
MA
MA(マーケティングオートメーション)とは、マーケティング活動を自動化・効率化するツールのことです。新規顧客の獲得や見込み顧客の育成などに役立つ多くの機能が実装されています。また、商談に至るまでの顧客情報管理が可能です。
SFA
SFA(セールスフォースオートメーション)とは、案件管理や顧客管理など営業に関するさまざまな情報を一元的に管理・共有するツールのことです。営業支援システムとも呼ばれ、主に以下の機能が実装されています。
- 顧客管理
- 案件管理
- 日報
- 分析・レポーティング機能
SFAの詳細や具体的なおすすめツールを知りたい方は以下もご覧ください。
CRM
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)とは、顧客の基本情報や購買履歴、クレームなど顧客に関するさまざまな情報を管理するツールのことです。顧客との関係維持や強化を目的に、以下の機能が実装されています。
- 顧客情報管理
- 人脈管理
- データ分析
- マーケティング・プロモーション支援
- リード管理
ERP
ERP(エンタープライズリソースプランニング)とは、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を集約して適切に分配し活用するシステムのことです。以下の企業経営における主要な情報の統合や管理が可能です。
- 財務
- 会計
- 予算
- 販売(受注・請求)
- 購買
- 顧客
- 倉庫・在庫
- 人材管理
BI
BI(ビジネスインテリジェンス)とは、企業内に蓄積された膨大なデータを分析・可視化するツールのことです。データを一元管理して、ダッシュボードやレポートなどで迅速な意思決定・業務の効率化を促進するための以下機能が実装されています。
- レポーティング
- ダッシュボード
- OLAP分析
- OLAP分析
- データマイニング
- プランニング
データドリブンの注意点や成功のポイント

最後に、データドリブンにおける以下の注意点や成功のポイントを紹介します。
- 目的と手段を間違えない
- 導入ツールは慎重に検討する
- 組織全体で取り組む
- 外部パートナーを上手く活用する
目的と手段を間違えない
データドリブンの導入にあたり、目的と手段を間違えないことが重要です。データドリブンはあくまで、データを活用して迅速かつ的確な経営判断などを行う手段です。データドリブンを導入した結果、なにをするかが重要です。データドリブン以外にも、目的を達成できる効率的な手段が存在する可能性もあるでしょう。
導入ツールは慎重に検討する
導入ツールは慎重な検討が必要です。「データドリブンの実現に役立つツール」の章で解説した通り、複数のツールが存在します。また、ツールの種類ごとに多数のソリューションがあり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。
全てを一度に導入することは難しいため、目的に応じて優先順位を付け導入すると良いでしょう。また、検討時には実装されている機能だけでなく、使いやすさやコストパフォーマンス、サポートにおける充実度などの確認が重要です。高機能であっても、使いこなせなければ意味がありません。
組織全体で取り組む
データドリブンの導入・実現には、組織全体で取り組むことが重要です。必要なデータが欠けていれば、正確な判断が下せません。一部の部署や担当者のみが積極的に活動しても、必要なデータの収集は難しいでしょう。
まずは、経営層がデータドリブンの重要性を理解するとともに、リーダーシップを発揮して強力に推進する必要があります。また、従業員の理解を得るための施策も検討しましょう。
外部パートナーを上手く活用する
外部パートナーを上手く活用すると、データドリブンを効率的に推進可能です。「データドリブンの課題やデメリット」の章で解説した通り、データの分析・活用には専門的な知識やスキルが必要です。ただ、近年はDX需要が高まっている一方供給が追いついておらず、専門人材の確保が簡単ではありません。
自社の従業員を育成する方法もありますが、時間がかかるでしょう。外部パートナーであれば、必要な時のみ依頼できるためコストコントロールがしやすく、迅速にデータドリブンの導入を実現できます。
まとめ

データドリブンとは、データを基に意思決定を行うことです。具体的には、インターネット上の行動ログや市場動向、売上・利益・コストなどのデータを活用します。消費者ニーズの多様化と行動の複雑化や競争の激化などの理由で多くの注目を集めており、成果を得ている企業も多く存在します。データドリブンを導入すれば、迅速で的確な経営判断の実施や業務効率化と生産性・顧客満足度の向上を実現でき、より効率的な企業・事業経営が実現するでしょう。
データドリブンの推進には、目的とゴールの明確化やデータの収集・分析など多くの作業が必要です。また、データ分析を行う基盤が欠かせません。データを一元管理しなければ、正確なデータ分析ができないでしょう。PigDataのデータ統合&自動化システム構築サービスを利用すれば、社内外のデータ収集から分析まで一貫したサポートを受けられます。データ活用に疑問や不安がある方は、どうしたら可視化できるか、どのようなデータが必要かを無料コンサルティングでご相談ください!