
オルタナティブデータは、金融業界でよく活用されています。しかし、現在では金融業界以外でも積極的に活用されています。今回は、オルタナティブデータがビジネスでどのように活用されているのか解説します。マーケティングや宣伝・広告、新規サービスの開発などにオルタナティブデータを活用したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
オルタナティブデータとは
オルタナティブデータとは従来のトラディショナルデータとは異なり、人工知能や機械学習などの技術の向上によって登場した新しいデータです。民間企業によって一般に提供されていて、WebデータやSNSのデータを抽出して分析できる形式にしてあります。オルタナティブデータは、金融業界で使用されることが多い傾向にありました。しかし、現在ではさまざまな分野で活用されています。
トラディショナルデータとの違い
トラディショナルデータとオルタナティブデータとの違いは、「提供元」「データの詳細度」「提供速度」の3点です。トラディショナルデータは、政府や企業が公式に提供しているデータであり定型的です。データの内容はマクロなものが多いのも特徴です。オルタナティブデータは、民間企業が提供しています。データの形式がさまざまで、定型的ではありません。データ内容が詳細なのも特徴です。また、オルタナティブデータは、トラディショナルデータよりもリアルタイムに近く即時性の高いデータです。
オルタナティブデータ | トラディショナルデータ |
民間企業が提供していて形式はさまざま | 政府や企業が公式に提供していて定型的 |
詳細なデータ内容 | マクロなデータ内容 |
提供速度が速い | 提供速度が遅い |
オルタナティブデータの種類
オルタナティブデータには、どのような種類があるのでしょうか。ここからは、オルタナティブデータの種類を具体的に紹介します。
POSデータ
POSデータは、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで活用するレジシステムから収集できるオルタナティブデータです。データが揃うのは、2〜3日後なので即時性が高いです。商品の個別の売上や購買者の属性の推移を把握できるので、分析して新しい商品の販売時期やキャンペーン企画を材料にすることが可能です。
クレジットカード利用データ
クレジットカードの利用データも、オルタナティブデータとして活用できます。ECサイトの登場から、クレジットカードで商品やサービスの決済をおこなう人口は増加しました。クレジットカードには、すべての購入履歴が残されています。これらの購入履歴を分析することで、市場のトレンドを把握することができます。
Webデータ
Webサイトのトラフィックデータからは、多くのデータを収集できます。Web検索の履歴から、商品やサービスの購入に至るプロセスまでデータ化されています。また、Webを検索している個人の属性も記録されているので、トレンドとなってる商品がどのような属性の方に好まれているか把握することも可能です。トラフィックデータ以外にも、Web上に公開されているデータはオルタナティブデータとして扱うことが可能です。これらを活用する事で、市場調査や競合分析などのさまざまなデータ分析に活用できます。Web上のデータは膨大で、人手で収集するには手間がかかります。Web上のデータを収集するためには、スクレイピングを活用すると効率的です。
携帯電話端末のログ
携帯電話端末には、多くのデータが収納されています。これらをオルタナティブデータとして活用することも可能です。例えば、GPS機能が内蔵されているスマートフォンのデータを分析すれば、人の流れを把握できます。人の流れを把握することができれば、オフィスの利用状況やアミューズメントパークなどの利用者数から施設の利用方法を再考する材料が得られます。
衛星画像
衛星画像のデータは、オルタナティブデータとして活用できます。衛星から撮影された画像を使用して、土地の利用や輸送状況、建築物の進捗状況を観察・分析をすることができます。衛星画像オルタナティブデータは、天候状況の分析と合わせて農家における収穫時期や肥料を撒く最適な時期も予測可能です。広大な農地を所有している方でも、衛星画像データで農地の管理を効率化できます。
SNSの投稿
SNSへの投稿は、テキストデータとして収集できます。SNSとインターネットが普及している現在では、多くの個人が自身の意見や感想を発信することができるようになりました。SNSへの投稿は、利害関係のない個人からの感想なので率直な意見やニーズをくみ取ることも可能です。テキストメッセージの量も膨大ですが、テキストマイニングを活用すれば効率的に分析可能です。
ニュース記事
インターネット上で更新されるニュース記事も、オルタナティブデータとして活用可能です。ニュース記事は、リアルタイムに近い重要な事件や出来事を取り上げています。ニュース記事の見出しや記事内容を日付と照らし合わせながら分析すれば、リアルタイムのトレンドを把握することが可能です。インターネット上のニュース記事は、常に更新されているため膨大な量のデータが蓄積されていきます。蓄積されたニュース記事は、スクレイピングであれば効率的に収集できます。
金融以外でのオルタナティブデータ活用例
オルタナティブデータの多くは、金融業界を中心に使用されていました。現在では、多くの業界や分野で活用されています。ここからは、オルタナティブデータの金融業界以外での活用事例を紹介します。
Webマーケティング
オルタナティブデータは、Webマーケティングでも活用可能です。Webサイトのトラフィックデータで消費者の興味関心の傾向を把握します。また、有名人やインフルエンサーによる発言と商品購入への影響を分析すれば、将来のトレンド動向の把握にも役立ちます。Webスクレイピングをおこなえば、公開されている過去の天候データを収集して、自社の売上データと掛け合わせることで、天候や気温が売上にどのように影響しているかも分析することもできます。外部のオルタナティブデータと、自社オリジナルの内部データをかけ合わせれば、精度の高い分析が可能です。
位置情報を活用したマーケティング
位置情報のオルタナティブデータは、マーケティングに活用することも可能です。地図データと移動・滞在している人口の推移を照らし合わせると、人口の密集地帯を確認できます。この活用方法によって、興行やキャンペーンの効果を把握できます。また、繁忙期には交通渋滞の状況をお知らせして、すぐに入れる自社が運営する興行施設へ案内することも可能です。混雑していて、待ち時間の長い特定の興行地を避けたい人々もいます。位置情報と共に混雑具合をお知らせすれば、これまで逃していた客層を取り込むことも可能です。
顧客ニーズの把握
POSデータを分析することで、顧客がコンビニやスーパーマーケットで購入する商品の傾向を把握することができます。その傾向から顧客ニーズを抽出することができるので、新しい商品の開発や生産数の管理に活用できます。
広告・宣伝の効果測定
オルタナティブデータで、広告や宣伝の効果測定も可能です。インターネット上での広告や宣伝は、トラッキングをおこなうことで購入までのプロセスを確認できます。また、購入した方や広告や宣伝に興味を示した方の属性も把握できますので、どのような人々がどのような商品・サービスを欲しているのか把握できます。
リスク管理
オルタナティブデータは、リスク管理にも活用できます。サイバーセキュリティの観点から、ハッキングやサイバー攻撃などの事例・情報はネット上に共有されます。そのため、悪意あるハッカーの手口を事例として収集し、内部のトラフィックデータに怪しい動きや事例に似た動きがある場合に迅速に対応できます。
オルタナティブデータ活用のメリット
オルタナティブデータを活用すれば、多くのメリットがあります。ここからは、オルタナティブデータ活用のメリットを紹介します。
簡単に利用できる
オルタナティブデータは、簡単に利用することができるのがメリットの一つです。オルタナティブデータは、各企業がさまざまな形式で公開しています。そのため、データを収集した後は、自社の目的にあった加工や分析が可能です。
既存のデータを補強できる
オルタナティブデータは、これまでに使用していたトラディショナルデータなどを補強することができます。トラディショナルデータは、人口統計のように全体的、マクロ的な分析が可能です。しかし、詳細なミクロ部分を分析することはできません。マクロ的な分析をおこなった後に、さらに詳細な分析をおこなう際に補強する役割としてオルタナティブデータは活用できます。
データの多様性
データの多様性という点も、オルタナティブデータのメリットの一つです。会社の目的によって、収集して分析するデータはそれぞれ違います。現在、さまざまな種類のオルタナティブデータが公開されています。そのため、自社が分析の対象とするデータを見つけやすいです。目的に合わせてデータを選択することが可能です。
独自の視点からの分析
オルタナティブデータを活用すると、独自の視点からあらゆる問題を分析できます。オルタナティブデータは、多種多様で提供元も多いという特徴があります。また、提供速度も速く、データの使用方法を変化させれば幾通りもの分析視点が手に入ります。多様なデータであることから競合と重複することが少ないため、独自の視点から、問題解決の方法だけではなく、新しい問題の発見にも役立つメリットがあります。
トレンドの動向把握
オルタナティブデータを活用すれば、トレンドの動向把握ができるのもメリットです。リアルタイムに近いデータを扱うため、分析をきちんとおこなえば流行やトレンドの動向がわかります。
オルタナティブデータ活用の課題
便利に活用できるオルタナティブデータですが、改善すべき課題も存在します。ここからは、今後改善すべきオルタナティブデータ活用における課題を解説します。
データの収集と選別
オルタナティブデータの収集と選別は、分析にオルタナティブデータを活用する際の課題です。現在では、オルタナティブデータを共有、公開する会社が増加しています。データ自体が膨大な量になってしまったので、収集するのが困難になりました。また、種類も多く選別が難しい点も課題の一つです。
オルタナティブデータを扱える人材不足
オルタナティブデータを扱える人材が少ないのも課題の一つです。オルタナティブデータは、比較的新しいデータであり分析や収集をする専門家が少ないです。データはきちんと加工して分析しなければ、有益な結果を得ることはありません。自社の目的に合わせてデータを収集し、加工と分析ができる人材の育成が必要です。
コンプライアンス遵守
コンプライアンスを遵守することは、オルタナティブデータを活用する上で絶対に守らなければいけない課題の一つです。あらゆるデータを使用する際には、個人情報を保護することは必須事項です。しかし、オルタナティブデータを複数以上掛け合わせることにより、個人情報を特定することができてしまいます。意図せずに個人情報を流出させないためにも、アクシデントを避ける仕組み作りが課題です。
オルタナティブデータ活用のポイント
オルタナティブデータを活用する際には、ポイントがあります。ここからは、オルタナティブデータ活用のポイントを解説します。
リアルタイムでの収集
オルタナティブデータは、リアルタイムで収集しなければならないことが活用のポイントの一つです。特にWebデータはインターネットの普及やSNSの登場によって、その更新が高速になりました。現在の状況下では、新しいと思っていたデータもすぐに時代遅れになってしまいます。そのため、Webデータ収集の効率化をおこなうことが、オルタナティブデータを扱う企業には求められています。
オルタナティブデータの特徴把握
オルタナティブデータには、多様な種類があります。それぞれの特徴を踏まえて、目的に合わせたオルタナティブデータを選択しなければいけません。今後も、新しいオルタナティブデータが共有されることになります。これらの特徴を把握し、他社が具体的にどのように活用しているのか、事例研究を続けることも大切です。
データの取捨選択
オルタナティブデータは取捨選択をおこなうことも、活用のポイントです。オルタナティブデータには、生データが多く中には分析にとって不要なものも含まれています。膨大な量のデータの中から、有益なデータと不要なデータを取捨選択しなければいけません。特にWebデータの取捨選択を効率よくおこなうためには、スクレイピングの活用が有効的です。
活用方法の考案
オルタナティブデータの活用方法の考案もポイントの一つです。オルタナティブデータを使用した分析は比較的新しく、長い歴史がある訳ではありません。そのため、活用方法のフォーマットが確立されていない状況です。活用フォーマットがある程度確立されていけば、効率的な分析も可能になります。今後は、オルタナティブデータの効果的な活用方法を考案することが課題であり、競合との差別化ができるポイントとなります。
検証を素早く繰り返す
オルタナティブデータの活用は、検証を繰り返すこともポイントです。データ分析による仮説の精度は、繰り返し検証することで向上します。特にオルタナティブデータはデータの即時性が高く、変化の大きいデータです。そのため、データの加工と分析、データとの照らし合わせをおこない、分析結果を基盤としてその都度市場で試してみる必要があります。実際に試した結果もデータとして収集し、さらに分析と検証をおこないます。このデータ収集、分析から検証を素早く繰り返すことでオルタナティブデータが活かされます。
オルタナティブデータの将来
オルタナティブデータは、AIや機械学習、IoT技術などが発展していく中で活用できる領域や機会が増加していきます。特に、ビジネスや技術革新、科学研究などで活用されていくことが期待されています。ただし、データによる個人情報流出の問題も抱えているため、扱いに慎重にならなければいけない側面もあります。オルタナティブデータの将来は、活用とセキュリティの両面を意識しながら発展していくことになります。
まとめ
オルタナティブデータはこれまで投資など金融関連で活用されてきましたが、近年ではそれ以外の分野での活用も注目されてきています。オルタナティブデータを活用するには課題や活用ポイントがいくつかあり、特にWebデータは取り扱いにも気を付けなければいけません。最悪の場合、個人情報が流出してしまう危険もあります。そのため、リアルタイムで安全に収集したい方、自動でWebデータの収集を行いたい方は、スクレイピング代行などのWebデータ収集専門サービスを活用することがおススメです。スクレイピングにお困りの方は、PigDataにご相談ください。