
ニューラルネットワークは、人工知能を理解するにあたって非常に重要な概念です。人間の「脳」を模倣したモデルであり、これがあることで人工知能が発展しているといっても過言ではありません。今回はニューラルネットワークの概要から仕組み、ニューラルネットワークがどのように学習するのかなどを解説します。
ニューラルネットワークとは
ニューラルネットワークは、人間の脳の働きを模倣した計算モデルです。人間の脳は、数十億のニューロン(神経細胞)とその相互接続によって構成されています。そして、これらのニューロンは複雑なパターンを認識・学習・記憶することが可能です。ニューラルネットワークは、このニューロンのネットワークを模倣し、人工ニューロンと呼ばれる単純な数学的関数を使用してこれを実現します。
これらの「人工ニューロン」は、層状に組み合わされ、各層は次の層に情報を伝達可能です。これにより、ニューラルネットワークは複雑なパターンを学習し、未知のデータに対する予測に対応できます。
機械学習やディープラーニングとの違い
ニューラルネットワーク、機械学習、ディープラーニングはすべて人工知能(AI)の一部です。互いに密に関連していますが、それぞれ異なる概念を指します。
まず、機械学習はAIの一分野で、アルゴリズムがデータから学習し、新たなデータに対する予測を実現する能力です。つまり、機械学習はデータを通じて自動的にモデルを改善するアルゴリズムだと考えましょう。続いて、ニューラルネットワークは機械学習の手法で、人間の脳の神経細胞の動作を模倣したモデルです。これは、入力層、隠れ層、出力層の3つの層から成り、各層は多数のニューロンで構成されます。最後に、ディープラーニングはニューラルネットワークが深層(多層)になったものです。単純なニューラルネットワークよりも、複雑なパターンを学習できます。ディープラーニングは大量のデータと計算能力を必要としますが、人間が理解できないような複雑なパターンも抽出できるため、画像認識や自然言語処理などの分野で広く利用されています。
ニューラルネットワークの種類
ニューラルネットワークには、いくつもの種類があり、代表的なものは以下のとおりです。
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
CNNは、画像認識や音声認識などのパターン認識に特化した深層学習モデルです。「畳み込み層」と「プーリング層」を交互に配置することで、局所的な特徴を抽出できます。また、その特徴を組み合わせてより高次元の特徴を学習できるものです。
畳み込み層では、フィルタやカーネルを使用して入力データから「特徴マップ」を生成します。また、プーリング層では、特徴マップをダウンサンプリングしてデータの次元を減らし、モデルの計算負荷を軽減します。
リカレントニューラルネットワーク(RNN)
RNNは、時系列データや自然言語などのシーケンシャルなデータを処理するためのネットワークです。過去の情報を保持し、それを現在のタスクに活用する能力を持っています。このような処理を実装できる理由は、ネットワークが自己参照構造を持つためです。これにより、RNNは時間的な依存関係を学習できるようになっています。ただ、長期的な依存関係の学習は困難で、これを解決するためにLSTMが開発されました。
長短期記憶(LSTM)
LSTMは、上記で解説したRNNの一種で、長期的な依存関係を学習する能力を持っています。「ゲート」と呼ばれる構造を用いて情報の流れを制御可能です。これにより、LSTMは不要な情報を忘れ、必要な情報だけを保持できます。結果として、長期的な依存関係を効果的に学習できる仕組みです。
敵対的生成ネットワーク(GAN)
GANは、生成モデルの一種で、データの分布を学習し、新たなデータを生成します。GANには、生成器(Generator)と判別器(Discriminator)の2つのネットワークが必要です。
まず、生成器は、ランダムなノイズから偽のデータを生成します。その後、判別器がその偽のデータが本物か偽物かを判断し、学習内容を深めていく流れです。
ディープニューラルネットワーク(DNN)
DNNは、複数の隠れ層を持つニューラルネットワークの一種です。他の手法と比較すると、大量のデータを用いて複雑なパターンを学習する能力を持っています。
各層は、前の層からの入力を受け取り、それを処理して次の層に送ります。大まかな流れは以下のとおりです。
- 入力層:生のデータを受け取る
- 隠れ層:データの抽象的な表現を学習する
- 出力層:最終的な予測や分類をおこなう
DNNは、音声認識、画像認識、自然言語処理など、幅広い分野で大量のデータを処理しています。
ニューラルネットワークの仕組み
続いては、ニューラルネットワークの仕組みを簡単に解説します。
ニューラルネットワークの構造
ニューラルネットワークは、入力層、出力層、そして一つ以上の隠れ層から構成されます。層と層の間には、ニューロン同士のつながりの強さを示す「重み」が存在します。これらの構造は、人間の脳の神経回路の一部を模した数理モデルです。
活性化関数の役割
活性化関数は、ニューラルネットワークのニューロンにおける関数です。入力の内容から、出力を決定するための役割を担います。活性化関数を用いるとモデルの表現力が増すため、これによる変換を利用することでさまざまな値の出力が実現できます。
ニューラルネットワークの学習
ニューラルネットワークの学習は、最適化問題として定式化できます。現在最も広く用いられる手法は、勾配法の一種である勾配降下法を連鎖律と共に用いるバックプロパゲーションです。これにより、ネットワークの重みを調整し、出力が目標値に近づくように学習します。
ニューラルネットワークの学習方法
ニューラルネットワークでは、事前にデータからの学習が必要です。この流れについて理解していきましょう。
学習データの準備
ニューラルネットワークの学習では、大量のデータが必要とされます。これらのデータは、「訓練データ」と「テストデータ」の2つに大別されます。
まず、訓練データは、ネットワークがパターンを学習するためのものです。また、重みとバイアスを調整するためにも使用されます。一方、テストデータは、学習したモデルが未知のデータに対してどの程度うまく機能するかを評価するために使用されます。
なお、データの準備には、データの前処理や正規化を含むかもしれません。例えば、前処理は欠損値の処理、カテゴリ変数のエンコーディング、不要な特徴の削除などが考えられます。また、正規化では特徴のスケールを統一しなければなりません。これを統一することで、モデルの学習が効率よくなるからです。例えば、特徴の値が0から1の範囲に収まるように調整することがあります。
モデルの決定
モデルの設定は、ニューラルネットワークのアーキテクチャを定義する作業です。具体的には、ネットワークの層の数、各層のニューロンの数、活性化関数の設計などが該当します。どのような定義にするかで、ネットワークがどのようにデータを処理し、学習するかが変化するのです。また、モデルを決定する際には、損失関数と最適化アルゴリズムも選択しなければなりません。
まず、損失関数はネットワークの出力と目標となる出力との間の差を測定するものです。これにより、ネットワークがどれだけ「間違っている」かを定量化できます。また、最適化アルゴリズムは、この損失を最小化するようにネットワークのパラメータを調整するものです。一般的には、勾配降下法やその派生形のような手法が採用されます。
学習と評価
学習では、ニューラルネットワークがデータからパターンを学びます。訓練データをネットワークに入力し、出力と目標となる出力とを比較して損失を計算することから始めなければなりません。続いて、最適化アルゴリズムを使用して、この損失を最小化するようにネットワークのパラメータを更新します。必要に応じて何度も繰り返さなければなりません。学習が終わったら、テストデータを使用してネットワークの性能を評価します。これにより「ネットワークが未知のデータに対してどの程度うまく機能するか」を評価できるのです。なお、評価指標は問題の種類によるため、適切なものを選択しなければなりません。
ニューラルネットワークの活用方法
次にニューラルネットワークがどのような用途に活用されているのかを紹介します。
画像認識
ニューラルネットワークは、画像認識に広く活用されています。主に、画像の分類、物体の検出、顔認識などです。例えば、自動運転車では、周囲の環境を理解するためにニューラルネットワークが使用されます。これにより、他の車、歩行者、交通標識などを正確に識別し、適切な行動を取れるようになるのです。また、医療分野では、MRIやCTスキャンなどの医療画像から異常を検出するためにニューラルネットワークが使用されます。医師が病気を早期に診断し、適切な治療を開始するための手助けとなるのです。
自然言語処理
自然言語処理に含まれる、テキストの分類や機械翻訳、音声認識などにもニューラルネットワークが活用されています。例えば、ニューラルネットワークは、ユーザーのレビューやフィードバックの内容を理解できるため、これらの分類に利用可能です。これにより、プラスとマイナスのどちらの内容が多いのか機械的に判断できます。また、言語を別の言語へ翻訳する際にも活用が可能です。これにより、言語の壁を超えたコミュニケーションを実現しやすくなります。
商品のリコメンデーション
ユーザーの過去の行動や嗜好に基づいて、商品やサービスを推奨するシステムに使用されます。具体的には、オンラインショッピングサイトや動画ストリーミングサービスなどで、おすすめを紹介する機能です。例えば、動画ストリーミングサービスでは、ユーザーが過去に視聴した映画やテレビ番組に基づいて新しいコンテンツを推奨します。ニューラルネットワークを使用してユーザーの視聴パターンを学習し、それに基づいて新しい推奨コンテンツを生成するのです。
市場予測
ニューラルネットワークは、金融市場の予測にも使用されます。具体的には株価の動きや通貨の価値、市場のトレンドなどの予測に役立てられるのです。これらは、意外にも一定のパターンに沿って遷移していることがあり、これを学習して未来の動きを予測します。これにより、投資家は過去のデータに基づいた投資ができるようになるのです。ただ、市場の変化は常にルールに従うものではなく、突発的な変化を伴う点に注意しなければなりません。高精度なニューラルネットワークで予測しても、想定外の動きが生じる可能性があります。
エンターテイメント
ニューラルネットワークは、ゲームや映画・音楽などエンターテイメントの分野でも使用されています。例えば、ビデオゲームでは、ニューラルネットワークを使用して、CGやAIが生成することが可能です。リアルな世界観やより人間に近い動きのCPUなどを実装することが可能となりました。また、映画や音楽の生成にもニューラルネットワークが使用されることがあります。例えば、シチュエーションに沿った背景映像や音楽の生成ができるのです。人間が制作すると時間を要する作業でも、ニューラルネットワークを軸とすることで、大幅に短縮できます。
まとめ
人工知能を支える技術である、ニューラルネットワークについて解説しました。人間の脳を模したモデルであり、詳細な仕組みは利用するアルゴリズムやモデルによって大きく異なります。また、結果として応用できる分野も異なるものです。ニューラルネットワークはデータから学習する仕組みであるため、データ識別や分類によるパターン分析に向いています。特に、現在は画像や音声データに活用されている点を抑えておきましょう。
画像など学習に利用されるデータは、Webサイト上に多くあるため、これらを活用することでニューラルネットワークの性能を効率よく高められます。そのため、学習を視野にWebサイト上のデータを一括で収集したいならば「スクレイピング」と呼ばれる手法が有効です。もし、スクレイピングでデータ収集したい場合はPigDataをご検討ください。