
現在は、一部の業務をアウトソーシングする「BPO」が広がっています。業務の一部だけをアウトソーシングするのではなく、一連の業務をまとめてアウトソーシングするのです。今回はBPOと一般的なアウトソーシングの概要やそれぞれの違い、具体的に依頼できる業務などについて解説します。
BPOとアウトソースの違い
最初にBPOとアウトソースの違いについて理解を深めておきましょう。
BPOとは
BPOとは「Business Process Outsourcing(ビジネスプロセスアウトソーシング)」の頭文字をとったもので、企業の業務プロセスを一括して外部に委託することです。業務の一部だけを外部に委託するのではなく、一括して委託するところに意味があると考えましょう。
例えば、経費精算業務のうち領収書の入力業務だけを委託するのではなく、精算業務全体を委託します。簡単な業務だけではなく複雑な部分も委託することが特徴です。
なお、BPOの対象となる業務は多種多様です。具体的にどのような選択肢があるのかは、後ほど解説するためご確認ください。
アウトソースとは
アウトソースは、外部に業務を依頼すること全般を指します。BPOもアウトソースの一環であり、そのような観点ではどちらにも大きな違いはないのです。
ただ、アウトソースはBPOと異なり、業務プロセス全体を委託するとは限りません。一部だけを切り出して、委託するケースが多々あります。BPOの例で解説すると、領収書の入力業務だけを委託するならばこれはアウトソースです。
業務の一部だけを委託するため、アウトソースできる作業を挙げると際限がありません。委託する作業の範囲に違いがある点だけ理解できると良いでしょう。
BPOとアウトソースのメリット・デメリット
BPOにもアウトソースにもメリット・デメリットがあります。それぞれ、どのような内容であるのか理解していきましょう。
BPOのメリット・デメリット
BPOのメリットは、業務を一部だけではなくそのプロセスを含め丸ごと委託できるため、社内の業務負荷が大きく軽減できることです。会社を経営していくためには、幅広い業務を管理しなければなりません。ただ、幅広い業務の遂行にはどうしても負担がかかってしまうため、BPOすることによって負担を最小限に抑えられます。また、社内で管理しなければならない業務に関連する人材を確保する必要もありません。BPOは業務ごとに専門の企業に依頼することがあるため、社内では気づかないような新しい手法で効果的に業務を遂行してもらえる可能性もあります。
ただ、その反面でデメリットとして、BPOにはコストが生じてしまいます。委託費用が発生するため、軽減できる人件費とのバランスを考えることが大切です。また、業務委託してしまうため、社内に必要なナレッジが残りません。BPOを止めて自社で運用したいと考えた場合に、どうしようもできないリスクがあります。
アウトソースのメリット・デメリット
アウトソースの大きなメリットは、業務負荷の軽減です。日頃の業務で、負荷になっている部分だけを業務委託できるため、効率よく業務を進められます。また、業務は社内の人間を中心に推進するため、ナレッジが外部に流出してしまうこともありません。
ただ、デメリットとしてアウトソーシングにも一定のコストが生じます。社内で処理した場合の人件費と比較して、金銭的なメリットがあるかの評価が大切です。
BPOサービスの対象業務
BPOサービスの対象となる業務は年々、増えてきています。例は多くありますが、それらの中でも代表的なものを紹介します。
営業
営業部門では、市場調査や顧客管理のためにBPOが活用されます。重要な業務ではありますが、専門的なスキルが必要になることもあり、得意とする会社に委託してしまうのです。社内で市場分析や顧客管理するよりも、効果的かつ効率的に業務を推進してもらうことができます。
また、BPO先によっては、営業に必要な資料の作成を依頼することが可能です。このような資料作成は、センスやスキルが問われるものですが、BPOで専門の企業に委託できれば高品質のものを提供してもらえます。
経理
経理業務はマニュアルに沿って進められることが多く、BPOで業務委託しやすくなっています。対応してくれる会社の数も多いことから、今ではBPOの代表格です。
取引先からのデータを受け取って入力する業務はもちろん、請求書の代理発行などコアな業務も対応してもらえます。また、請求書の発行や受け取りにあたって証憑をチェックするなど、時間を要する一連の業務も委託が可能です。
しかも、BPOであれば閑散期と繁忙期を意識する必要がありません。経理の仕事は山と谷がありますが、外部に託していれば、委託先がリソースを調節して対応してくれるのです。
総務
総務のように全社的な業務がある場合でも、その内容を多岐にわたってまとめてBPOできます。専門性の高い業務もあり、本来は多くの人材が必要ですが、BPOならそのような人材の確保も必要ありません。
BPOに対応している業務は多岐にわたり、株主総会など回数の少ないイベントから、福利厚生や契約管理など、回数の多い業務まで委託が可能です。コア業務とノンコア業務の両方が入り乱れる部署ですが、その辺りもBPOならば意識する必要がありません。
人事労務
採用や人材教育など、人事・労務関連の業務もBPOできます。これらの業務は「社内の担当者が担当すべきではないか」と考えられがちですが、専門家にBPOした方が、効率が上がり業務の品質も高まるでしょう。例えば、人材の確保は素人よりも、多くの人を評価してきた専門家が対応したほうが確実です。
また、勤怠管理や給与計算は、重要ではあるものの間接業務に該当します。どうしても社内でやるべき業務ではないため、BPOしてしまうことで、煩雑な業務から解放されるでしょう。
カスタマーサポート
カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに対応する業務全般です。電話やチャットツール、専用フォームなどからの問い合わせに対応すると考えましょう。
このような問い合わせ対応には、マニュアル作成など一定の準備が必要です。ノウハウがなければ、社内で対応しようとしても、負担が増えてしまうだけでしょう。準備にリソースを割くことが難しく、八方塞がりになるケースがあります。
もし、BPOでカスタマーサポート業務に慣れている会社へ委託すれば、このような準備は必要ありません。委託先のテンプレートなどを活用し、定型化しやすい業務であるため、積極的にBPOを検討するとよいでしょう。
BPOサービスを行っている会社
BPOサービスを提供する会社は数多くあります。今回は代表的な会社に絞って紹介すると以下のとおりです。
トランスコスモス株式会社
トランスコスモスは、BPOサービスを日本で最も提供している大手企業です。幅広い業務のBPOに対応していて、事業を多角的に支えてくれます。また、それぞれの業務について、独自のナレッジやテクノロジーを有していることが特徴です。
また、BPOサービスをいつでも提供できるように、いくつものオフショア先を有しています。日本時間だけではなく、海外時間での業務にも対応できるようになっているのです。このような海外を含めたBPOサービスの提供もあり、日本で非常に高いシェアを誇っています。
株式会社ベルシステム24
ベルシステム24は、企業の間接業務やシステム運用を中心にBPOを受け持つ会社です。幅広い業務ではなく、経理や人事など一部の業務に特化して、プロフェッショナルとしてサービスを提供しています。それぞれの業務について多くの経験を持ち、高品質なサービスを提供してくれることが特徴です。
また、システム運用を得意としているため、BPOを交えた業務効率化を依頼することも可能です。近年はDXが推奨されているため、システムの活用と業務の委託によって、従業員が本業に集中できる仕組みなどを提案してくれます。
株式会社パソナ
パソナは、人材派遣など人的リソースの支援を全般的に引き受けている会社です。BPOのようにアウトソースはもちろん、パソナならばアウトソース以外に派遣などのサービスも提供してもらえます。
人材に関するエキスパート企業ということもあり、間接業務ならば全般的に依頼が可能です。総務や経理はもちろん、採用などもBPOできるため、自社で賄えない業務の多くを委託できるでしょう。また、グループ企業にはIT系のBPOを依頼できる会社など、専門的な企業が含まれます。
株式会社KDDIエボルバ
KDDIエボルバは、KDDIグループのBPOサービス提供会社です。通信系企業のグループ会社ということもあり、架電対応やシステムの活用などを得意としています。KDDIのシステムではなくとも、幅広いシステムを活用したBPOが可能です。
ただ、ITが専門というわけではなく、バックオフィス業務全般に対応してもらえます。大手企業のグループであることを活かした、信頼できる品質があるため、選択肢に含めてみると良いでしょう。
株式会社インディゴデータ
株式会社インディゴデータは、データサイエンスを中心とする会社で、データを活用したBPOサービスを提供しています。特に、外部データであるWebデータの収集や分析などを含む業務の依頼が可能です。
「スクレイピング代行サービス」を活用したBPOでは、データ収集に関して、目的や状況をヒアリングしつつ「どのWebサイトから」「どの情報を」「どのように収集して」処理するかの提案が可能です。例えば、競合他社の情報を効率よく調査する、マーケティング活動のBPOとして活用できます。
また「Web監視ツールTOWA」を導入すれば、営業先WebサイトのURLと担当者を登録しておくことで、自動的にWebサイトの更新を検知可能です。何かしらの変更があれば通知が届くため、必要な情報をいち早くキャッチして、営業活動に活かすことができます。
BPO導入の際に気を付けるべきこと
これから一部の業務をBPOしたいならば、注意点を理解することが重要です。導入にあたって気を付けるべきことを把握しておきましょう。
アウトソースしたい業務を明確にする
事前にアウトソースしたい業務を明確にしておきましょう。「特に細かく考えていないがアウトソースしてみたい」などと大雑把に考えていると、導入に失敗してしまう可能性が高まります。外部に委託できる業務プロセスはいくつもあるため、委託したい内容を細かく設定しておくことが大切です。
業務を明確にする際は、BPOのメリットやデメリットを考慮しなければなりません。例えば、社内にナレッジを残したいのであれば、BPOに適した業務ではないでしょう。逆に、ナレッジを残す必要がなく、社内で大きな負担になっているものは、BPOを検討した方が良いと考えられます。
なお、BPOの候補となる業務がいくつもあるならば、優先順位を決めることが重要です。アウトソースにはコストが生じるため、際限なく委託することはできません。
BPOサービスの詳細をよく確認する
これから業務を委託するにあたって、どのようなサービスが提供されているか評価しましょう。BPOにはいくつものパターンがあり、依頼先によってサービス内容が異なります。提供サービスを細かく比較して、自社に最適なサービスを選択しなければなりません。
また、サービス内容に加えて、料金も考慮した方が良いでしょう。一般的に、料金が高ければ高いほど、提供されているサービスが多くなり品質も高まります。サービス内容とコストのバランスも考え、コストパフォーマンスの良い委託先を見つけ出すことが重要です。
提供サービスを定期的に評価する
BPOは導入するだけではなく、継続的な評価が必要です。「依頼してしまえばあとは放置しても良い」と思われがちですが、それではBPOしている意味があるのかどうか判断できません。
繰り返し触れているとおり、BPOではコストが発生します。そのコストに見合ったサービスが提供されているか、評価する必要があるのです。コストパフォーマンスが悪いならば、別の委託先を探したりそもそもBPOの導入を見直したりすることが求められます。
まとめ
業務の一部をアウトソーシングする、BPOについて解説しました。一般的なアウトソーシングではなく、BPOでは業務のプロセス全体をアウトソーシングします。ここに大きな違いがあるため、BPOを検討する際は必ず理解しなければなりません。
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