製造業で海外進出を考えているならば、海外の法令をチェックする必要があります。日本とは内容が大きく異なる場合があり、適切に理解できていなければ、トラブルの原因となりかねません。内容によっては法令違反となり、何かしらの制裁を受けてしまうことも考えられます。

コンプライアンスの観点からこのようなことはあってはならず、法務部門などの担当者は、情報を細かくチェックしなければなりません。今回は、具体的に確認しなければならない法令やそれらを効率よくチェックする方法について解説します。

製造業がチェックすべき海外の法令の種類

製造業がチェックすべき海外の法令について具体的な種類を挙げて紹介します。

データ・ローカライゼーション規制

データ・ローカライゼーションは、製品とサービスのデータを特定の地域内でのみ保管・処理することを義務付ける法律です。これにより、データのプライバシー、セキュリティが強化され、地域固有の法規制に準拠することが各社に求められています。製造業者は、この規制を適切に理解して、国際的なデータ管理戦略を策定しつつビジネスを展開しなければなりません。

EU一般データ保護規則

EU一般データ保護規則（GDPR）は、個人データの取扱いに関する厳格なルールを定めたもので、製造業が取得しうるデータにも規制が及びます。違反すると重大な罰金が科せられるため、適切に理解しなければなりません。例えば、顧客データの収集・使用においてこれらの規則を遵守し、データ保護に注力することが求められます。ただ、規則に沿ってデータを確実に保護できれば、顧客の信頼を維持したりグローバルな市場での競争力を保ったりできるでしょう。

各国Product Liability（PL法）

製造業者はプロダクト・ライアビリティ（製品責任）や関連する法令（PL法）を理解する必要があります。これを理解しなければ、製造した製品が原因で発生した損害に対して、予想外の法的責任を負うことになりかねません。製品の安全性や品質管理の根底ともなるため、必ずチェックしておくべきです。国や地域によっては、適切なリスク管理や品質保証ができていないことにより、訴訟など大きな問題に発展する可能性があります。

各国個人情報保護法

データ・ローカライゼーション規制やEU一般データ保護規則に通じる部分もありますが、海外の個人情報保護法を理解することが重要です。各国が規制や規則をもとに法令を定めているため、より詳細な内容までチェックしなければなりません。特に、大枠の規制や方針こそあるものの、具体的な内容は各国の法令で異なります。それぞれに適合することで、顧客データを守れるようになり、法的な罰則などを回避できるようになるのです。

各国知的財産権

製造業が海外の知的財産権を理解することは極めて重要です。これは、製品の革新やデザインを保護し、模倣品や特許侵害から企業の資産を守るためです。国際市場での競争力を維持するためには、各国の特許法、商標法、著作権法などを遵守し、適切な権利登録や管理が不可欠です。また、他者の知的財産権を尊重することで法的紛争を避け、ビジネスのリスクを低減し、信頼性を高めることができます。

米国輸出管理規則

米国輸出管理規則は、特定の製品や技術の輸出について、国家安全保障や外交政策上の理由により規制するものです。大半の製品や技術は自由に取引できますが、一部については規制があり、それらはアメリカを介さない取引にも適用されることがあります。製造業でこれに気づかず取引していると、重大な違反として制裁を受けるかもしれません。日本を軸とした考えだけではなく、アメリカを軸とした考えも持つことで、リスクを軽減しながらグローバル展開できるのです。

REACH規制

REACH規制はEUで設けられている、化学物質の安全性を確保するための規制です。この規制が適用される範囲内では、製造業などが化学物質を利用するにあたって人の健康と環境への影響を評価とリスク管理が義務付けられています。言い換えると、製造業はREACHに準拠した製品を製造するだけで、EU全体で製品を流通させられます。個々の国について規制を意識する必要がなくなるため、結果的にはヨーロッパへ展開しやすくしてくれるでしょう。

各国独占禁止法

独占禁止法は、市場での公平な競争を保証し、独占的な行動や不公正な市場支配を防ぐための法律です。EUの競争法や米国のシャーマン法など、国や地域によって個別に定められています。独占禁止法は日本でも法令に違反してしまうことがあるなど、非常にシビアなものです。海外では、日本以上に法令に違反してしまうことが考えられるため、力を入れてチェックすべき法律と考えられます。

海外の法令をチェックする方法

海外の法令をチェックする方法は、大きく分けて3つ考えられます。

目視で確認する

最も単純な方法は、海外の法令が公開されているページへとアクセスし、目視で確認することです。多くの法令はインターネットで確認できるようになっているため、具体的な条文を確認できます。また、大半の法令は、更新日付が記載されているため、前回の確認日からの更新があるならば、その内容を確認することも可能です。

メリットとして、誰でも対応できることが挙げられます。ただ、デメリットとして、目視での確認は非常に時間を要してしまいます。海外の法令にいつ変化がでるかどうかはわかりません。そのため、毎日チェックする必要もあります。また、確認したにも関わらず、重要な部分を見落とすこともあるでしょう。時間がかかる作業であるのに対して、大きな効果を得づらい方法と考えるべきです。

専門家に依頼する

海外の法令について理解が正しいかどうか、専門家にチェックを依頼する方法があります。例えば、取引に必要な契約書を自分たちで作成し、その内容についてチェックしてもらうなどです。

メリットとして、専門家であることから、素人が目視で確認するよりも遥かに正確なチェックであることが挙げられます。素人は法令の文面と照らし合わせることが限界であり、関連する法令なども含めたチェックはできません。しかし、専門家ならばプロとして網羅的にチェックしてくれます。

しかし、チェックを依頼するために多大な費用が発生することが予想されます。また、依頼してからチェック結果を得るまでに時間を要してしまいます。

ツールを活用する

専用のツールを利用して、法令の状況をチェックすることも考えられます。何かしらの変化があれば、それを通知してもらい、必要に応じて変更された内容を書類などに反映するのです。また、専門家へ質問などができるサポートが付随されていることもあります。

メリットとして、ツールであることから、人間が時間をかけて情報を収集したり毎日変更を確認したりする必要がありません。海外法令は数多くあるため、人力での対応には限界がありますが、ツールならばその点を意識する必要がなくなります。

デメリットは、ツールによって対応している法令が異なり、求めている法令をチェックできない可能性があることです。特に、世界中に展開する企業は多くの国の法令をチェックする必要がありますが、一部しか対応していないことが十分にありえます。

法令チェックができるツール3選

実際に、法令をチェックできるツールを3種類ピックアップして紹介します。

D1-Law.com

D1-Law.comは第一法規株式会社が提供する、法令をチェックするツール群です。いくつものツールが提供されていて、日本の現行法をチェックするツールもあれば、海外の規制をチェックするツールもあります。必要に応じて、適切なものを契約する仕組みです。

なお、チェックの対象となる法律は指定されていて、それらを変更することはできません。いくつもの法令をチェックするならば、サービス群から複数を選択し、網羅性を高める必要があります。

法務業務支援ツールLexis® PSL

法務業務支援ツールLexis®PSLはレクシスネクシス・ジャパン株式会社が日本で展開する法務業務を支援するツールです。諸外国とのやりとりを重視したもので、海外の法令に幅広く対応しています。特に中心となる製品はヨーロッパへ対応していて、関連製品によってその他の地域もチェック可能です。

ただ、こちらについても、対象となる国や法令は指定されているため、利用者が変更することはできません。提供されている範囲内で、法令をチェックするにとどまります。

TOWA（Web監視ツール）

TOWAは株式会社インディゴデータが提供する、Web監視ツールです。上記で紹介した2つのツールとは異なり、事前に監視対象となるWebサイトを登録しておき、そのWebサイトに変更がないかを常時チェックしてくれます。変更があれば速やかに通知され、それを踏まえた行動が取れるという仕組みです。

TOWAであれば、利用者が監視対象を決定できるため「ツールのチェック対象となっていないため、情報がキャッチできない」ということにはなりません。具体的にTOWAがどのように役立つかは以下で解説します。

海外の法令をチェックするならWeb監視ツール！

海外の法令をチェックするなら、Web監視ツールの活用がおすすめです。上記で紹介した「TOWA」を例に、どのような観点でおすすめであるか解説します。

海外サイトも自由に登録できる

Web監視ツールであれば、どのようなWebサイトでも自由に登録できます。法令チェックツールは、事前に定められた法令しか対象になりませんが、Web監視ツールならそのような制限がありません。特殊な製品に関する制限など、各種法令チェックツールでは対応していないような法律の情報もチェックできます。

また、TOWAなら登録できるサイトの数は4,000件以上もあるため、おおよその法令のチェックに対応が可能と考えられます。製品の製造や取引にあたって必要な法令は、網羅できると考えて良いでしょう。

知りたい情報を素早く簡単に知れる

24時間365日、Webサイトの更新を監視しているため、変更をいち早く検知できます。また、検知するだけではなく、自動的に担当者へ通知することができるため、検知したことを見落とす状況にはなりません。

また、TOWAにはグループ機能があり、特定のグループを指定して検知したことを通知できます。全ての登録者に対して通知すると、その情報が必要ではない人もいるため、徐々に通知を確認しなくなりがちですが、必要なものだけを通知することで確実に確認してもらえるでしょう。

部署を超えて情報共有

上記の通りグループを設定しておくと、その中で情報を共有できます。グループの設定次第では、部署を越えて情報を共有することも難しくありません。部署間で情報連携する手間をかけることなく、それぞれのメンバーが簡単に法令の情報を閲覧できます。

競合調査、市場調査にも使える

Webサイト全般を監視できるため、競合調査や市場調査にも利用できます。例えば、競合他社のWebサイトを監視しておくことで、新製品の発売やキャンペーンの開始をいち早くキャッチできるのです。解説したとおりTOWAは多くのWebサイトを監視できるため、法令チェックと市場調査が同時に実現できるでしょう。Webサイトの監視は、非常に多くの使い道があるため、法令チェック以外にも応用できるコストパフォーマンスの良いツールです。

まとめ

製造業で海外進出していたり、海外進出を考えているならば、現地の法令をチェックすることが重要です。日本とは異なる法令が制定されていることが多く、それにそぐわなければビジネスが成り立ちません。定期的に改正されることもあるため、それも踏まえてビジネスを展開することが重要です。

海外の法令をチェックする方法はいくつもありますが、その中でもWeb監視ツールをおすすめします。監視したいサイトを設定しておくことで、法令の変更をいち早く検知することが可能です。Web監視ツールの中でも「TOWA」には紹介したような機能があるため、ぜひ活用をご検討ください。