データ可視化とは、数字などのテキスト情報をグラフやチャートといった形式で表すことです。データを可視化することにより、情報の理解を促進して迅速な情報共有や適切な経営判断、ビジネスチャンスの創出などが可能となります。
本記事では、データ可視化の概要や行うメリットと成功事例、実施する流れ・ポイントについて詳しく解説します。データ可視化について知りたい方、データを有効活用したい方は、ぜひ参考にしてください。
データ可視化とは

データ可視化とは、グラフやチャートなどを用いて見やすい形式で情報を表現することです。単なる数値の羅列ではなく、視覚的に見やすく理解しやすい形にすることで、迅速な情報共有や新たな傾向・パターンなどの発見に役立ちます。データの可視化を行えば、直感的に理解しやすくなるとともに、新たな気付きが生まれるでしょう。
データ可視化が求められる理由
データ可視化が求められる主な理由は以下の3つです。
- データ量の増加
- 競争の激化とデータにおける重要性の向上
- 多彩な利害関係者の存在
近年はテクノロジーが進歩したことにより、日々生み出されるデータ量が増加しています。また、マーケティング活動やAIの開発など活用方法の幅も広がっています。企業間の競争環境が激化しているため、企業はデータに基づいた判断により効果的な施策の実施が必要です。
さらに、多くの利害関係者とのコミュニケーションが必要な点も、データの可視化が求められる理由です。例えば、グローバル化が進み外国人が多数いる企業も存在するでしょう。株主とのコミュニケーションも重要です。知識や背景が異なる関係者とのコミュニケーションにも、誰もが理解しやすいデータ可視化が有効です。
データ可視化のメリット

データ可視化の主なメリットは以下の通りです。
- 迅速な情報共有の実現
- 属人化の解消
- ビジネスチャンスの創出
- 適切な経営判断の実現
順に解説します。
迅速な情報共有の実現
データ可視化は迅速な情報共有の実現に有効です。人間の脳は、テキストよりも画像からの方が情報を処理するスピードが早いという特徴があります。グラフやチャートを利用することで、迅速な情報共有を実現して共通認識の醸成を促すでしょう。例えば、売上・利益目標と現状・差額をダッシュボードで共有すれば、どの程度余裕があるか・足りていないかを誰もが一目で把握できます。
属人化の解消
属人化の解消もデータ可視化におけるメリットです。数字からの正しい情報把握や分析には、知識・スキルが求められます。テキストで情報を共有した場合、理解レベルに差が出る恐れがあるでしょう。理解しやすい形式に変更すれば、データの理解・分析に対する属人化の解消につながり、誰もが業務に役立てられます。
ビジネスチャンスの創出
データ可視化はビジネスチャンスの創出にも有効です。図として表せば、より正確で深い分析ができるでしょう。また、データの関係性もわかりやすくなるため、新たな発見を得られる可能性が高まります。テキスト情報からでは思いつかなかったアイディアが生まれ、課題の発見や新規ビジネスの創出に役立ちます。
適切な経営判断の実現
データ可視化は適切な経営判断の実現にも効果的です。グラフやチャートとして情報を表示することで、経営層は的確に内容を理解できるでしょう。複数の事柄を比較しやすくなり、課題の究明も容易に行えます。
また、データ可視化は迅速な判断にもつながります。近年は価値観や外部環境の変化が早く、状況に応じた素早い判断を行わなければ手遅れになるリスクがあるでしょう。データをビジュアル化して直感的に理解できるようにすれば、迅速で適切な経営判断が実現可能です。
データ可視化の成功事例

すでに多くの企業がデータ可視化に取り組んでいます。ここからは、データ可視化に成功した以下3社の事例について解説します。
- アイシン
- 協和
- Lohn&HR
アイシン
アイシンには多数の従業員がおり労務管理に多くの時間がかかっていました。労務管理の自動化とデータ可視化により業務改善に成功しています。自動車部品メーカーのアイシンは、BIツールを用いてデータ可視化を行うことで、労務管理に費やしていた時間のうち600時間の削減に成功しました。
BI(Business Intelligence)ツールとは、企業が保有する膨大なデータを分析・見える化して経営や業務に役立てるソフトウェアのことです。BIツールの詳細は以下をご覧ください。
協和
化粧品や美容サプリメントなどを販売している協和は、データ可視化で適切な評価と経営判断を成功させた企業の一つです。協和では月次の売上は社内で共有できていたものの、営業や広告に関する情報は担当者のみしか把握しておらず、媒体別の広告効果が不透明でした。データ可視化を行うことで、各媒体別の広告やキャンペーン効果を把握できるようになり、どの施策が有効かを把握するとともに適切な施策の選択が可能になっています。
Lohn&HR
人事ソリューションを提供しているLohn&HRは、データ可視化により顧客満足度を向上させています。Lohn&HRでは、給与形態や従業員の勤務管理・分析などを行い、レポートを出すことで顧客をサポートしています。データを可視化したことで、サポートの質が向上して顧客が自社の状況を把握しやすくなりました。
データ可視化する際の構成要素

データ可視化は、以下の要素で構成されます。
- 色彩 :データ項目の色分けや数値属性の色相・明度による違いを示すことで、視認性を高められる
- サイズ :数字の大小をサイズの違いで表せば、比較しやすくなる
- 関連性 :データごとの距離や線による連結で、データの関係性を示せる
- シンボル:アイコンや記号などのラベルをデータに付与することで、視認性を高められる
- 座標 :座標を用いれば、関係性の理解や比較がしやすくなす
各構成要素ごとに特徴が異なるため、視覚化するデータや目的に応じた使い分けが重要です。
データ可視化を実施する方法

データを可視化する方法は数多く存在します。ここからは、以下の方法について解説します。
- グラフやチャート
- 地図
グラフやチャート
グラフやチャートはデータ可視化で用いられる主要な方法です。ここからは、以下のグラフ・チャートを紹介します。
| 目的 | 可視化方法 |
|---|---|
| 変化を見る | ・折れ線グラフ ・棒グラフ ・エリアチャート ・地図 |
| 比較する | ・棒グラフ ・プロットマッピング |
| 割合を見る | ・円グラフ ・ツリーマップ ・帯グラフ |
| 相関を見る | ・散布図 ・バブルチャート |
| 散らばりを見る | ・箱ヒゲ図 |
折れ線グラフ

折れ線グラフとは、数値データの変化を時系列で表現したもののことです。 縦軸に数値、横軸に時間や日付などを設定し、データをプロットして線でつなぎます。折れ線グラフは、データの傾向や変化の速度、周期性などを視覚的に表現する際に役立ちます。
棒グラフ

棒グラフとは縦軸に量、横軸に比較したいものを並べたもののことです。もっとも良く用いられるグラフの一つで、データを比較する際に利用されます。
エリアチャート

エリアチャートとは、時間の経過に伴うデータの傾向を表したもののことです。変化の大きさを示すために、その領域が色で強調されます。全体的なデータ量の変化を見る際に用いられます。
プロットマッピング

プロットマッピングは、地域ごとのデータを比較を表現したもののことです。地域上に色をつけたり、棒グラフや円グラフを重ね合わせるなど様々な方法があります。データの所在地がわかっており、地域ごとの特徴を調べるときに用いられます。
円グラフ

円グラフとは、円全体を100%としてその中に占める構成比を扇型で表したもののことです。全体に対して、各要素の割合がどの程度かを一目で理解することができます。ビジネスレポートやマーケティング資料、プレゼンテーションで良く活用されます。
ツリーマップ
ツリーマップは、階層がいくつかに分かれているカテゴリの割合を表現したものです。カテゴリ、サブカテゴリと続く階層の比較が1つの図でみることができます。全業界シェア率と売上金額や時間帯別売上などを見るときに効果的です。

帯グラフ

帯グラフも、全体に占める構成比の割合をわかりやすく表現したものです。全体を100%としてその構成要素を円ではなく棒で表します。円グラフは、比較したい要素が少ないシンプルな情報伝達時に有効なのに対して、帯グラフは比較要素が多く複雑な情報を伝える際に効果的です。
散布図

散布図とは、縦軸と横軸に項目を設定してデータを該当箇所にプロットしたもののことです。分布図とも呼ばれ、データの相関関係を表す際に用いられます。
バブル図

バブル図とは、縦軸・横軸に加えて3つ目のデータをバブルの大きさで表す図のことです。散布図よりも多くのデータを表現できますが、データ量が多すぎると見にくくなるケースがあるため注意が必要です。
箱ヒゲ図

箱ヒゲ図は、異なる複数のデータの散らばり具合を表現します。また、箱を見ることで、ひとつひとつのデータの情報を簡潔にすることができます。株価の月別四分位点の幅や強化ごとのテスト成績のばらつきの表現に適しています。
地図
地図を利用してデータ可視化を行う方法も、以下のとおり複数の種類が存在します。
順に解説します。
ヒートマップ

ヒートマップとは、データや情報の分布・集中度合を視覚的に表現するもののことです。大量のデータを一目で把握するとともに、重要なポイントを迅速に発見できます。最近は、Webサイトの見られている場所やクリックされた場所の分析で良く用いられます。
ポイント分布

ポイント分布とは、地図上でデータが密集している地点にポイントマーカーを立てたもののことです。密度の高い場所を表現する際に役立ちます。
塗りつぶし

塗りつぶしとは、地図をエリアに分けてデータに基づき塗りつぶすもののことです。例えば、温度や降水量、積雪量など地域別のデータ比較に役立ちます。
フローマップ

フローマップとは、対象となるものの方向性を示す手法のことです。台風や桜前線の進路図で利用されています。
スパイダーマップ

スパイダーマップとは、ある事柄の始点と終点を結び矢印を付けたもののことです。例えば、物流などのルート確認で利用されています。
データ可視化を実施する流れ

データ可視化を実施する流れは以下の通りです。
- データを集める
- データを貯める
- データを整える
- データを活かす
上記のステップについて解説します。
1.データを集める
まずはデータを集めましょう。具体的には、社内システムやIoTデバイスからの収集、サードパーティーシステムとの連携などが挙げられます。
また外部データの収集も重要です。自社データだけでなく、外部データを効果的に組み合わせることで、より広い視点での分析や情報の読み取りが可能になります。オープンデータやデータマーケットプレイスの利用、業界横断的なデータ共有の推進により、自社だけでは得られない洞察を獲得し、競争優位性を高められるでしょう。
PigDataでは、Web上のデータ収集をサポートしており、ご希望する形式への成形も可能です。
なお、外部データの重要性について詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
2.データを貯める
続いて、クラウドサービスなどのデータベースに情報を貯めます。情報が社内に分散している場合、効率的なデータ活用や正確な情報の把握が困難です。近年は、縦割りの組織構造や複数システムの利用などに起因したデータのサイロ化が問題となっています。データのサイロ化とは、データが共有・連携されておらず、他のシステムと分断された状態のことです。
データのサイロ化に関する詳細は以下をご覧ください。
3.データを整える
次に、データフィルタリングや変換・標準化を行いデータを整えましょう。誤りのあるデータは削除して、重複は除去します。また、欠損値の処理や異常値の確認も行いましょう。間違った情報が混じれば、そこから導き出される結論にも誤りが生じます。
4.データを活かす
最後にデータを活かします。データの活用方法は可視化だけではありません。分析やAIの学習、システム運用などさまざまな方法で活用可能です。データを効果的に活用すれば、業務効率化や売上・利益・企業競争力の向上など多くのメリットを得られます。
データ可視化を行う際のポイント

最後に、データ可視化を行う際の以下ポイントを解説します。
- 適切なデータの利用
- 目的やニーズに合わせた可視化手法の選択
- 視覚的表現やデザインへの考慮
- キャプションや説明の追加
適切なデータの利用
データ可視化を行う際には、目的の達成に必要なデータのみを活用しましょう。近年はさまざまなデータが膨大に存在します。必要以上のデータを可視化すれば、ミスリードの発生や理解の促進を阻害する原因になります。利用するデータの正確性を担保するとともに、各データの意味を理解して適切なもののみを活用しましょう。
目的やニーズに合わせた可視化手法の選択
目的やニーズに合わせた可視化手法の選択も重要です。前述の通り、データ可視化の方法は多数存在します。目的に合わせたものを活用しなければ、正しい情報の読み取りができません。まずは、データ可視化の目的を明確にした上で、活用するデータとビジュアル化の方法を選択しましょう。
視覚的表現やデザインへの考慮
データの可視化を行う際には、視覚的表現やデザインへの考慮も欠かせません。ユーザビリティを重視するとともに、シンプルかつ明瞭な表示が重要です。過剰な情報や煩雑なデザインは、ユーザーの理解を妨げる原因になります。
適切なフォントサイズや行間、文字色選びにこだわりましょう。また、色や形、サイズに一貫性を持たせることも重要です。色を使い過ぎたり、過度なコントラストを用いたりした場合、視認性が低下します。
キャプションや説明の追加
キャプションや説明の追加を行えば、よりデータを読み取りやすくなります。データを可視化するとともに、必要に応じて背景や意味を捕捉しましょう。
まとめ
データ可視化とは、グラフやチャートなどを用いて見やすい形式で情報を表現することです。データを可視化することにより、知識やスキルがない人でも内容の理解や分析ができるようになります。迅速な情報共有や適切な経営判断、ビジネスチャンスの創出などに役立つでしょう。
データの可視化には、情報を収集・蓄積・整形する必要があり、その体制構築が求められます。やみくもに行っても期待する成果は得られません。PigDataでは、データ収集・整形・分析・可視化までデータ活用を支援しています。データ活用に疑問や不安がある方は、どうしたら可視化できるか、どのようなデータが必要かを無料コンサルティングでご相談ください!




