
「研究データを自動収集した事例を知りたい」と考えている方もいるでしょう。
研究やレポート、卒業論文において、研究データは信頼性向上などに欠かせません。ただ、研究データをインターネット上で探す場合、多くの手間がかかります。
本記事では、研究データを自動で収集する方法や実際の事例、研究データの自動収集を行うコツと注意点について詳しく解説します。研究データを自動収集した事例を知りたい方、収集の手間を抑えたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
研究やレポート、卒論で研究データが必要な理由

まず、研究やレポート、卒論において研究データが必要な以下の理由について解説します。
- 結論の信頼性を高める
- 議論を支える
- 間違った情報を避ける
結論の信頼性を高める
データの記載により、研究結果やレポートにおける結論の信頼性を高められます。適切なデータの収集は、再現性の保証や研究者・読者への安心感提供に役立つでしょう。信頼性の高いデータは、反論や疑問に対抗するための裏付けとなり、信憑性を高めます。
議論を支える
議論を支えるためにも、研究データが必要です。信頼性の高い具体的なデータを記載すれば、理論の一貫性を保てます。複数のデータソースを活用して多角的な視点で議論を展開することで、説得力が増すでしょう。
間違った情報を避ける
研究データを収集・活用すれば、間違った情報を避けることも可能です。信頼性が低い情報が混じれば、研究やレポートにおける信頼性が損なわれます。データ収集では、信頼性が高い複数のソースを活用して、誤情報とバイアスを避けることで、間違った結論を導き出す可能性を減らせるでしょう。
データの種類

データは大きく分けると以下の2種類が存在します。
- 一次データ
- 二次データ
順に解説します。
一次データ
一次データとは、自分で直接収集したオリジナルデータのことです。具体的には、以下のデータが該当します。
- 自分で実施した研究結果
- 自分で行ったアンケート調査の結果
- 自社サイトの利用履歴データ
- 自分で実施したグループインタビューの記録
目的に合わせて必要な情報を収集可能です。また、データの鮮度が高く、最新の状況を反映した情報を得られる特徴があります。
二次データ
二次データとは、他者によって収集・公開されているデータのことです。例えば、以下のデータが該当します。
- 公開されている学術論文
- 他者が行った研究データ
- 政府機関の統計
- 企業の報告書
スピーディーに大量の情報を収集可能です。自動収集するデータは、基本的に二次データに該当します。
研究データを自動収集する方法

続いて、研究データを自動収集する以下の方法について解説します。
- スクレイピングの実施
- AIの活用
- ウェブAPIの利用
- RPAの活用
スクレイピングの実施
スクレイピングを実施すれば、研究データの自動収集が可能です。スクレイピングとは、Webサイトからhtmlを解析して、必要なデータを収集する技術のことです。ツールの活用や専門業者への依頼など、複数の実施方法があります。なお、実施方法に関する詳細は後ほど解説します。
スクレイピングの詳細は以下をご覧ください。
AIの活用
研究データの自動収集には、AIの活用も効果的です。迅速に大量の情報を収集できます。また、高度なAIを活用すれば、ノイズや不要な情報を取り除き質の高いデータのみを集められるでしょう。AIには学習機能が実装されているため、精度が時間とともに高まっています。
なお、ChatGPTを用いたデータの自動収集方法は後ほど具体的に解説します。
ウェブAPIの利用
ウェブAPIを利用することで、データを自動収集できます。ウェブAPIとは、Webサービスの機能や所有するデータに対して、外部のアプリケーションからアクセスする仕組みのことです。多くの企業は、自社サービスのAPIを公開しており、サービス同士の連携が可能となっています。ただ、ウェブAPIの利用には知識やスキルが求められます。
RPAの活用
RPAの活用もデータの自動収集に有効です。RPA(Robotic Process Automation)とは、業務プロセスを自動化するテクノロジーのことです。データの集計や転記などの定型業務を自動化できます。また、Webサイトを巡回して、特定ページの情報を取得することも可能です。
なお、RPAの詳細を知りたい方は以下をご覧ください。
スクレイピングのメリット・デメリット

次に、データの自動収集を実現する方法の一つであるスクレイピングの以下について解説します。
- メリット
- デメリット
スクレイピングのメリット
スクレイピングにおける最大のメリットは、Webサイトから大量のデータを自動収集できることです。研究データを集める手間や労力は必要ありません。また、手段によっては事前に設定した形式への整理もできます。人が行うわけではないため、設定を間違えなければヒューマンエラーも発生しません。
スクレイピングのデメリット
便利なスクレイピングですが、場合によっては法律に違反するリスクが存在します。スクレイピングは、サーバーに負担をかける行為であるため、Webサイトの正常な運営を妨害し偽計業務妨害に該当するケースがあります。
また、利用規約でスクレイピングを禁止しているWebサイトも少なくありません。Webサイトの構造が複雑な場合、スクレイピングが上手くできないケースも存在します。
なお、スクレイピングに関する法律上の注意点を知りたい方は、以下もご覧ください。
スクレイピングの実施方法

スクレイピングの実施方法には、以下複数の手段があります。
- プログラミング言語の活用
- 拡張機能の利用
- ツールの導入
- 専門業者への依頼
ここからは、上記それぞれの方法について解説します。
プログラミング言語の活用
スクレイピングは、プログラミング言語を活用すれば実施可能です。とくに、Pythonが主に用いられており、スクレイピング用のライブラリやフレームワークも提供されています。中には、専門的な知識をあまり持っていない方でも気軽に利用できるオンラインサービスが存在します。
拡張機能の利用
Google Chromeでは、スクレイピングを実施できる拡張機能も存在します。拡張機能とは、ブラウザに機能を追加して利便性を高めるプログラムのことです。具体的には、Web ScraperやInstant Data Scraper、Easy Scraperなどが挙げられます。
無料で活用できる拡張機能も存在しますが、中にはウイルス感染などを目的に提供されているものも存在します。拡張機能を利用する際には、提供元が信頼できるかを必ず確認しましょう。
ツールの導入
スクレイピングを実施するための専門ツールも存在します。多くの専門ツールは、直感的に操作できるものが多く初心者でも利用できるでしょう。OctoparseやMozenda、Data Scraping Studioなど複数のツールが存在します。
なお、具体的におすすめツールを知りたい方は以下もご覧ください。
専門業者への依頼
専門業者への依頼も、スクレイピングを実施する方法の一つです。ツールなどでは、複雑な構造のWebサイトにおけるスクレイピングは実施できません。また、デメリットで解説した通り法律に違反する可能性があるでしょう。
専門業者であれば、複雑な構造のWebサイトであっても対応可能です。また、法律に準拠したところに依頼すれば安心です。PigDataでは、スクレイピング代行サービスを提供しています。ご興味がある方は一度ご相談ください。
研究データの自動収集事例4選

続いて、研究データの自動収集における以下の事例4選を紹介します。
- Webスクレイピングを用いたネットパトロールの効率化
- Webスクレイピングによる温熱データと居住者の温冷感申告との関係性
- Webクレイピングによる世界の淡水化施設のデータベース化と開発途上国における海水淡水化施設の設置指標の検討
- ウェブスクレイピングによる農林業センサスの研究利用の評価
Webスクレイピングを用いたネットパトロールの効率化
「Webスクレイピングを用いたネットパトロールの効率化」は、不特定多数の利用・書き込み頻度が高い学校裏サイトを、Webスクレイピング技術と迷惑メール対策ソフトを用いてパトロールした事例研究です。Webスクレイピングは、問題発言の抽出に活用されました。その結果、埋もれてしまう傾向がある問題発言の早期発見に成功しました。
参照:Webスクレイピングを用いたネットパトロールの効率化|国立大学法人宮城教育大学
Webスクレイピングによる温熱データと居住者の温冷感申告との関係性
「Webスクレイピングによる温熱データと居住者の温冷感申告との関係性」は、インターネット上に公開されている環境情報をWebスクレイピングを実施して、居住者の温冷間申告を予測する方法についての研究です。Webスクレイピングを行い、気候や環境汚染、災害などに関する情報が集められました。研究の結果、各所にセンサーを設けて導き出した結論よりも、Webスクレイピングを活用した方法の方が高い一致率を記録しました。
参照:Webスクレイピングによる温熱データと居住者の温冷感申告との関係性|J-STAGE
Webクレイピングによる世界の淡水化施設のデータベース化と開発途上国における海水淡水化施設の設置指標の検討
「Webクレイピングによる世界の淡水化施設のデータベース化と開発途上国における海水淡水化施設の設置指標の検討」では、以下が行われています。
- 世界の各都市における飲料水を含む都市用水供給を目的とした淡水化施設の有無と、稼働状況に関するデータベースの構築
- 上記を用いた海水淡水化施設の建設・運用の適否を示す指標の提案
- 算出した指標を活用して、今後海水淡水化施設による水供給が助けになる可能性がある人数の推定
この研究において、Webスクレイピングは以下に活用されています。
- 世界各国の人口10万人以上都市における淡水化施設設置情報の収集
- 世界銀行の公開指標にある1,386個の指標から、海水淡水化に関する指標の抽出
淡水化施設がないと判定されたODA対象国で、抽出した指標や世界銀行・JICAの報告書などの記載事項を基にした海水淡水化施設の導入が可能な国と人口を推定しました。この研究では、本実験で用いたWebスクレイピング手法で正確なデータのみの抽出が可能であることが確認されました。
参照:Webクレイピングによる世界の淡水化施設のデータベース化と開発途上国における海水淡水化施設の設置指標の検討|J-STAGE
ウェブスクレイピングによる農林業センサスの研究利用の評価
「ウェブスクレイピングによる農林業センサスの研究利用の評価」は、農林業センサスが過去どの程度研究で用いられてきたかの検証を行ったものです。利用回数を測定するにあたり、J-STAGEから以下の情報をWebスクレイピングで抽出しました。
- 発行年
- タイトル
- 著者名
- キーワード
- 抄録
- 引用
- 文献
Webスクレイピングの利用により、手間を抑えて「農林業センサス」という用語の出現数などが把握できました。
参照:ウェブスクレイピングによる農林業センサスの研究利用の評価|J-STAGE
ChatGPTを活用したデータ自動収集の方法

続いて、ChatGPTを活用した以下のデータ自動収集方法を紹介します。
- ブラウジング機能の活用
- HTMLファイルの活用
ブラウジング機能の活用
ChatGPTのブラウジング機能を活用すれば、URLを指定するだけでWebサイトからデータの取り込みが可能です。具体的な手順は以下の通りです。
- データ収集を行うWebサイトのURLをコピー
- ChatGPTにコピーしたURLと抽出したい情報・形式を入力
- Enterキーを押す
HTMLファイルの活用
HTMLファイルを活用して、ChatGPTでデータを収集する方法もあります。具体的な手順は以下の通りです。
- データ収集を行うWebサイトのページ全体をHTMLファイルとして保存
- 保存したHTMLファイルをChatGPTにアップロードして、抽出したい情報・形式を入力
- Enterキーを押す
研究データの自動収集を行うコツと注意点

最後に、研究データの自動収集を行う以下のコツと注意点を紹介します。
- 収集目的を明確にする
- 信頼できる情報源か見極める
- 最新データを活用する
- データの偏りをなくす
収集目的を明確にする
データ収集を行う前に、目的を明確にしましょう。データと一言でいっても、多数の種類と膨大な情報が存在します。むやみやたらに集めようとすると、多くの手間と時間がかかります。また、活用や正しいかの精査、整形ができない可能性もあるでしょう。
信頼できる情報源か見極める
信頼できる情報源かの見極めも、データ収集時には欠かせません。正しくない情報が混じれば、研究や論文の信頼性が失われます。情報の収集源には、学術論文や政府機関のデータベースなどを活用すると良いでしょう。
最新データを活用する
最新データの活用も重要です。とくに、テクノロジーや社会など変化の激しい研究を行っている場合、数年前のデータでは現状と合わないケースがあります。最新の研究や統計データを利用しましょう。
データの偏りをなくす
データの偏りをなくしましょう。偏ったデータを活用した研究は、結果も偏ったものになります。信頼性の高い複数のソースから情報を収集すれば、偏りを減らせます。
まとめ

研究データの自動収集には、スクレイピングの実施やAI・RPAの利用など、さまざまな方法が存在します。近年はテクノロジーが進歩しているため、時間や手間を抑えてデータを収集できるでしょう。研究に必要なデータはWeb上にあることが多く、とくにスクレイピングは実際に活用されている事例も多数存在します。
スクレイピングの実施には複数の方法がありますが、対象データを一括で収集するならスクレイピング代行を利用すると良いでしょう。ツールなどを活用する場合、複雑なサイト構造のスクレイピングができず、法律に違反する可能性があります。スクレイピング代行であれば、Webサイトの掲載データやPDFデータも収集可能で、研究データの収集にぴったりです。
PigDataでは、スクレイピング代行サービスを提供しています。ご興味がある方は一度ご相談ください。