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世界中に顧客を持つタイヤ製造メーカー
今回PigUPがご紹介する企業は、1931年に設立されたタイヤ製造メーカー「株式会社ブリヂストン」です。
本社のある東京都中央区をはじめとして、国内には久留米工場や那須工場、彦根工場などの生産拠点を設けるほか、海外にもアメリカやカナダ、ヨーロッパなど世界各国に生産拠点があります。
年間の売上は4,1兆円にのぼり、その約75%が海外で構成されているグローバル企業です。
(参照:https://www.bridgestone.co.jp/corporate/about/)
主力事業だけで終わらせないブリヂストンの選択
海外市場に展開するブリヂストンでは特に各国の景気が売上を左右します。
主力事業であるタイヤの製造だけでも売上は順調に伸びていましたが、2015年頃から商品単体の販売だけでは終わらない、ソリューション事業の強化が方針として掲げられました。
不安定な景気の中でも長期的な売上が見込めるビジネスモデルを構築するため、この頃からブリヂストンでは様々な取り組みが始まりました。
ソリューション事業を加速させたデータサイエンティスト育成
ソリューション事業の質やスピードをさらに高めるために、まずはじめに、ブリヂストンが行った施策がDXに向けたデータサイエンティストの社内育成です。
DX化を進めようとする企業の多くは、DX推進室を社内に設置するものの、問題点を把握した後は解決できる外注先に依頼するプロセスを取りがちです。
しかしデータドリブンなアクションを取りスマートシティを築くブリヂストンは、データサイエンティストの内製化を重要視していました。
データサイエンティストの社内育成により、タイヤデータとモビリティデータをスピーディに収集、分析することができ、新しい価値を提供し続ける仕組みを確立しています。
(参照:https://techplay.jp/column/1612)
タイヤから得られるデータ収集で命を守る!
(参照:https://techplay.jp/column/1457)
人間の場合、滑りやすい道では足に力を入れて歩くように、タイヤでも同じことができないか、という考えのもと、ブリヂストンは世界初の技術を開発しました。
それが、タイヤセンシング技術 CAIS®です。
タイヤに取り付けたセンサーからデータを収集し、分析することで「摩耗」「空気圧」「路面状態」といった情報が導き出され、路面状態は「乾燥」「半湿」「湿潤」「シャーベット」「積雪」「圧雪」「凍結」の7つに分けられ、瞬時にドライバーや対策本部などに伝えられるといいます。
摩耗や空気圧の状態を常に把握することで下記のような効果が。
- 燃費向上
- タイヤ交換の効率化
- 事故の未然防止
- 目視に頼らない冬季の道路管理
燃費向上やタイヤ交換のような経済面、環境面ともにエコであることだけでなく、事故防止や冬季の道路管理といった命を守ることにまでこのソリューションが貢献していることは世界的に誇れるDXだと言えるでしょう。
タイヤという一つのモノからスマートシティを実現するというビジネスモデルは、ブリヂストンの大きな魅力だと感じます。
2020年から猛スピードで売上が回復
全体の売上の推移を見ると、2018年から2020年にかけて売上は下降傾向にあり、2020年から今期にかけて売上増加の一途をたどっています。コロナの影響が大きな要因と捉えられますが、データドリブンな経営を続けてきたこともコロナ禍を終えて早々に売上を回復できた要因のひとつなのかもしれません。
(参照:第104回定時株主総会 議案・事業報告等)
DXを加速するデータサイエンスの可能性
ここまでブリヂストンが行ったDXへの道のりをご紹介してきました。
本来あるべき姿のDXを実現しようとしていると思われます。DXという文脈で切り取られる事例は、自動化やペーパレス化で完結するケースが多いのが実情です。
しかし、ブリヂストンの場合は豊富な内部データを活かすために、データサイエンティストの内製化を粛々と進めてきました。それに伴って、無理のないスピード感で内部データの管理システム(データレイク、データウェアハウス)を整えることができたと考えられます。
また、外部データ(路面データ等)と内部データ(タイヤデータ、運転データ)をかけ合わせたデータ改革(データDX)は弊社で推し進めている考え方です。
タイヤの生産・販売というフィールドを活かし、社内だけではなくスマートシティ化=社会全体のDXへの貢献も視野に入れた同社の動きは、データ活用によってDXを推進するPigDataとして今後も目が離せない企業です。