
マーケティングに携わっていると、よく「競合調査」という言葉を耳にします。
「とにかく、競合を調査すればいいんでしょ」
と思うかもしれませんが、具体的に、どのように調査していけばいいかまでを明確に理解できている人はごく少数です。
この記事では、そんな競合調査について、
- 競合調査とは(目的や意義)
- 競合調査の下準備
- 競合調査に使える代表的なフレームワーク
- 競合調査のポイント
「上司から『競合調査を進めておいて』と言われたけど、どうすればいいか分からない…」
そんな悩みをお抱えの方は、ぜひこの記事をご活用ください。

競合調査とは
競合調査とは、自社と競合の商品・サービスをさまざまな項目ごとで比較分析する調査のことです。
比較項目は多岐に渡り、売上や利益はもちろん、それぞれの強みや弱み、ターゲット層や実施プロモーションの内容など、さまざまなものが挙げられます。
競合調査は、自社の立ち位置を明確化するうえで欠かせない調査です。
熾烈なマーケットシェア争いに勝ち残るためのは、競合調査によって自社の強み・弱みを明らかにし、どのように差別化していくかを考えることが重要なのです。
競合調査の下準備
競合調査を効率的に進め、その内容を充実させるためには、3つの下準備が肝となります。
- 調査企画の策定
- 調査対象となる競合企業の選定
- 仮説立て
それぞれについて見ていきましょう。
調査企画の策定
まずは「調査企画」を策定しましょう。
調査企画とは、
- 競合調査の目的
- 競合調査の役立て方
などを具体的に明言化したもののことです。
たとえば、競合調査の目的としては、
- 新たな市場に参入するにあたり、その市場での戦い方を明確にしたい
- 主力商品の売れ行きが思わしくないため、今どのような対策が必要かを知りたい
- 脅威性の高い競合が参入してきたため、競合調査によって対策を講じたい
などが挙げられます。
競合調査の役立て方としては、
- 新たな市場における経営戦略の策定
- 商品企画への反映
- マーケティングの方向性の再確認
- 商流やターゲットの見直し
などが挙げられます。
調査対象となる競合企業の選定

次に、調査対象となる競合企業を選定しましょう。
この際に気を付けるべきは、必ず「自社にとって脅威となりうる競合=自社と位置関係が近い競合」を選ぶということです。
市場に参入したばかりにも関わらず、市場シェアトップの企業と比較してしまっては、差が大きすぎるために有益な情報が得られません。若者をターゲットとしているにも関わらず、昔ながらの高級路線を敷く老舗企業と比較してしまっては、ほとんど何も参考にはならないでしょう。
調査対象はあくまで「自社と位置関係が近い競合」であることを理解し、適切な企業を選定することが大事です。
仮説立て
競合調査の調査対象は極めて多岐に渡るため、事前にある程度の仮説を立て、どこを重点的に調べていくかを決定しておくことが重要です。仮説がないと、どこからどこまで調査すればいいかが分からなくなり、手間や時間を無駄に浪費してしまう恐れがあります。
まずは自社・競合それぞれを下調べすることによって仮説を立て、競合調査は「仮説を立証するための深堀り・裏付け調査」として行うようにしましょう。
ただし、競合調査を進めるなかで事実と仮説に相違が出てくることも大いにありえますので、仮説に囚われすぎないよう注意が必要です。
競合調査に使える代表的な3つのフレームワーク
それでは、実際に競合調査で用いるフレームワークの説明に入っていきましょう。
競合調査で使われる代表的なフレームワークは以下の3つです。
- 3C分析
- SWOT分析
- バリューチェーン分析
3C分析

3C分析とは、
- Customer(市場・顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
の3つのCを分析することでマーケティング環境を明らかにするフレームワークです。
3C分析では、徹底して「事実」を集めることを意識しましょう。
Customer(市場・顧客)の調査項目としては、
- 市場の規模感や成長性
- 顧客ニーズ
- 顧客の購買行動 など
Competitor(競合)の調査項目としては、
- 競合各社のマーケットシェア率および推移
- 競合各社の特徴(強みや弱み、戦略や立ち位置など)
- 競合各社の資本力および現有リソース
- 競合各社が今後取るであろう行動 など
Company(自社)の調査項目としては、
- 自社のマーケットシェア率および推移
- 自社の経営理念やビジョン
- 自社の特徴(強みや弱み、戦略や立ち位置など)
- 自社の資本力および現有リソース など
が挙げられます。
SWOT分析

SWOT分析とは、
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
の4つの分析対象の頭文字を取ったフレームワークです。
これらを組み合わせて分析することによって、自社を取り巻く環境による影響を明らかにし、市場機会や事業課題の発見に繋げます。
強みと弱みは「内部環境」にあたり、機会と脅威は「外部環境」にあたります。
強みと機会は、目標達成にプラスとなる社内外の特質および可能性、弱みと脅威は、目標達成の障害となる社内外の特質および可能性を指します。
まずは、先程の3C分析で得た「事実」をこれら4つの項目に当てはめていき、そこから戦略を考えていくのがSWOT分析のゴールとなります。
「強み×機会」、「強み×脅威」、「弱み×脅威」など、さまざまな要素を組み合わせ、多面的に分析することによって戦略目標を策定していきます。
バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、自社および競合の事業を工程ごとに分析し、どの工程でどんな付加価値・課題が生じているかを明確にするフレームワークです。
バリューチェーンとは、原材料の調達から顧客に届けるまでを複数の工程に分け、それらを「価値の繋がり」として表したものです。
バリューチェーンは「主活動」と「支援活動」に分類され、さらに以下のように細かい工程に分けられます。
■主活動の工程
・原材料の調達
・製造
・出荷・物流
・販売・マーケティング
・サービス
■支援活動の工程
・全般管理(インフラストラクチャー)
・人事・労務管理
・技術開発
・調達活動
※各工程は業種や企業によって異なります。
競合調査のポイント

最後に、競合調査をよりよいものにするためのポイントをご紹介します。
大切なことは下記の3つです。
- 調査を行う前に、必ず「目的」と「仮説」を明らかにしておく
- 競合調査に適したツールを利用する
- 定性的なデータが分かる「ビッグデータ」をフル活用する
それぞれ順に深堀りしていきましょう。
調査を行う前に、必ず「目的」と「仮説」を明らかにしておく
競合調査の下準備でも触れましたが、競合調査を行うにあたっては「目的」と「仮説」が欠かせません。
- なんのために競合調査を行うのか。
- 競合調査で得たデータをどのように活用するのか。
- どの領域の何が作用して今の状況を生み出していると考えられるのか。
これらを明確にしたうえで競合調査に臨めば、その効率・効果を最大限引き上げることが可能です。
ただし、「目的」がブレることがあってはいけませんが、「仮説」は調査結果に応じて柔軟に取り扱うようにしましょう。
競合調査に適したツールを利用する
競合調査を自社で行う場合、調査目的や対象に応じたツールの利用が便利です。
- 自社・競合のユーザーインサイトやパフォーマンスを抽出してくれるツール
- ウェブサイトで実行されているソフトウェアやプログラムを丸裸にするツール
- 競合のWEB広告実施状況を推測してくれるツール
- ウェブサイトのSEO評価をチェックしてくれるツール
など、さまざまなツールがインターネット上で公開されています。
中には無料で利用できるツールもありますので、ご興味のある方は、一度「競合調査 ツール」などのKWで検索してみてはいかがでしょうか。
定性的なデータが分かる「ビッグデータ」をフル活用する
定量分析だけの競合調査では、全体の一側面の情報しか得られません。
定性分析もあわせて行うことによって、はじめて自社の戦略に活かせる有益な情報を得ることができるのです。
そんな競合調査において、定性的なデータが詰まった「ビッグデータ」は、まさに宝の山のようなもの。
- SNS上における自社・競合商品への反応の違い
- サイト上に投稿された自社・競合商品へのクチコミ比較
- 自社・競合商品がインターネット上でどのように拡散されているのか
などを知り、ユーザー属性の違いや反応の表れ方を分析できることはもちろん、
- 競合サイトを定期的にスクレイピングすることで最新動向を探る
- 競合サイトをスクレイピング・分析することで重要KWなどの戦略を探る
ユーザーの「生の声」を知り、競合の動向を敏感に察知する。
そんなことを可能にする「ビッグデータ」をどこまで活用できるかこそが、競合調査の成否を分けるといっても過言ではありません。

まとめ
さまざまなフレームワークを組み合わせて行う競合調査。
自社や競合の内部環境・外部環境を正しく把握し、自社の経営に活用するためには、定量的・定性的両側面からのデータ収集・分析が欠かせません。
競合調査を行う際は、定量的なデータだけでなく、定性的なデータ分析に有効な「ビッグデータ」も、ぜひ併せてご活用ください。