
マーケティングに市場調査は欠かせません。そもそも市場調査はなぜマーケティングに欠かせないのでしょうか。また、市場調査はどのような方法で行われるのでしょうか。
本記事では、市場調査の必要性、方法をまとめ、市場調査の具体例や効率的な方法までお伝えします。
市場調査とは
市場調査とは、数字や数値で現在の市場、顧客の意向や動向を把握する調査のことをいいます。その数値を分析することでマーケティング戦略を立てるための要素のひとつになります。
市場調査と似た言葉で「マーケティングリサーチ」がありますが、厳密には違う意味をもっており、市場調査が現在の市場動向を調査するものであるのに対し、マーケティングリサーチは未来の市場動向について予測、分析するための調査です。
市場調査の必要性
絶えず変化する市場・顧客に対応する
市場や顧客のニーズは時代の変化と共に絶えず変化し続けます。それに伴って、企業は商品やサービスを変化させ続ける必要があります。そのために高い頻度で市場調査を行い、流れ続ける時代と市場・顧客の変化を追っていくことが大切です。
マーケティング戦略を効果的に立案する
マーケティング戦略を立案するのに市場調査は欠かせません。どの市場、どの顧客をターゲットに商品・サービスをどのように売り込めばよいかは市場・顧客のニーズを適格に知る必要があります。
7つの市場調査方法
- アンケート調査
従来から用いられる市場調査の方法で、企業側が用意した設問に対して回答を記入してもらいデータを集めます。近年ではインターネットを用いてWeb画面やQRコードから回答できるアンケート調査が増えており、より手軽に多くのデータを集めることができるようになっています。
- インタビュー調査
調査対象者に直接話を聞く調査方法です。紙やインターネットのアンケートとは違い、決まった質問に加えてその場で質問を変化させて詳細を調査することができます。ひとりひとり行うデプスインタビューと、複数人で行うグループインタビューがあります。
- 電話調査
調査員が調査対象者に電話をかけて行うアンケート調査の一種です。インタビュー調査と同様、その場で詳細な調査をすることも可能です。一方、ひとりひとりに時間をかけなければならないというデメリットもあります。
- ホームユーステスト
調査対象者に自社製品を送り、一定期間使用してもらった後に評価をしてもらう調査方法です。回答方法は紙、もしくはWeb上で行います。実際に使用した人の声を聞けるので、生活の中で使用する製品を対象とする場合に向いています。
- 行動観察調査
調査対象者の行動を直接的もしくは監視カメラなどで間接的に観察する調査方法です。調査対象者の言葉だけではなく、無意識の行動を観察することで、本人も意識していなかったような潜在ニーズを捉えることができます。
- ミステリーショッパー
調査員であるモニターが一般客を装ってサービスや商品を購入し、従業員のサービスなど店舗状況をチェックする調査方法です。調査される側はいつ、何を調査されたのかわからないようになっており、飾らない普段の店舗の様子が調査できます。
- インターネット調査
インターネットニュースやSNS、行政や企業が無料で公開している調査資料を収集する調査方法です。誰でも手軽に行え、人件費などのコストがあまりかからないというメリットがありますが、アンケートのように求めている内容そのものが手に入らない場合もあります。
市場調査のポイント
目的をたてる
漠然とした目的ではなく、「新商品開発のため」「○○の売れ行きを伸ばすため」「値上げをしても売上高が落ちないかを調べるため」など明確に目的を定めることでどんなデータを、どのような方法で調査するかを決定することができます。
仮説をたてる
調査データが膨大であったり複雑な場合、分析が追い付かなくなることがあります。事前に結果に対する仮説をたてて、それを検証していく方が効率的で質の高い分析結果を得ることができます。
予算の設定
市場調査を行うには多かれ少なかれコストが発生します。市場調査は長い期間をかければより多く、質の高いデータを得られますが、その分コストもかかります。調査内容を活用する時期から予算を設定し、確実に市場調査を行うリターンが得られるようにすることが大切です。
各調査方法のメリットデメリットを把握する
調査目的、仮説を検証するうえで、どの調査方法が適しているか各調査方法のメリットデメリットを把握する必要があります。ひとつの調査にもそれなりにコストが掛かることを想定して、一番適切な調査方法を選びましょう。
市場調査の具体的な成功例
アサヒビール
アサヒビールはノンアルコールビール「ドライゼロ」の開発において、大規模なインターネットアンケートやグループインタビューを行った結果、ビール愛飲者が休肝日や飲めないシーンでのビール代用品として愛飲していることがわかりました。そしてこれらの人はカロリーゼロといった機能性ではなく、よりビールに近い味を求めていることも市場調査からわかりました。さらにモニター調査を行い完成したドライゼロはノンアルコールビール市場でシェア24%を超える大ヒットとなりました。
明治
お菓子メーカーの明治は商品開発において常にグループインタビューや「生活者研究」と呼ばれる、幅広い年齢層の食生活・趣味・交友・ファッション・健康意識といった全般に関する数々のデータを集めています。従来の板チョコレートよりも2倍もの価格帯にある「THEチョコレート」は当初斬新なパッケージを批判する人もいましたが、消費者調査で9割もの好感度を得たことから販売に至り、消費者に新しい価値を与える板チョコレートとして大ヒットしました。
セブンイレブン
セブンイレブンは野村総研株式会社の「生活者一万人のアンケート調査」を精査し、消費者のマインドが「安さ」から徐々に「値段が高くとも品質のいいもの、おいしいもの」へと移ってきていると分析したことから高価格帯の「金の食パン」を開発しました。さらに消費者に金の食パンと既製品の食パンの食べ比べ、また金の食パンと1斤300円の食パンを消費者に送るホームユーステスト、神奈川県の店舗でのテストマーケティングを繰り返した結果1斤250円という価格を設定し大ヒットに繋がる商品開発となりました。
効率よく市場調査をするには
外部をうまく使う
アンケートなどの市場調査は自社内で実施するイメージがありますが、コスト面を考えて多くのデータを集める、または分析するために外部に受注することもひとつの手です。全て自社で行おうとせずに、外部企業でうまくできる箇所があれば部分的に活用することも素早い判断をするために必要です。
SNSからの市場調査に注目
近年では消費者の多くがSNSを活用することから、SNSを活用した市場調査が注目されています。SNSはアンケートなどを用意せずとも消費者のリアルな声が集まる場であり、そのデータ量も膨大です。データの収集には専門知識が必要となりますが、常にデータを集められるSNSを活用しない手はないでしょう。