
データを効果的に活用して、売上を向上させたいと考えている方は多くいるのではないでしょうか?インターネットやスマホが一般に普及したことで、消費者は簡単に情報を手に入れられるようになっています。これまで企業が情報を与える側であったのに対し、現在では消費者が情報を積極的に手に入れるように動くようになり、ニーズも多様化しました。多様化した消費者のニーズに対応していくには、自社に存在しているデータの活用が必要不可欠です。しかし、どのようにデータをビジネスに活用すればよいのか、分からない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、データ活用を導入する理由と、メリットについて解説します。合わせて、業界別にデータ活用を行った事例もご紹介。この記事を読めば、データ活用で売上を向上させる方法が分かるようになりますよ。
そもそもデータ活用とは?
データ活用とは社内外に蓄積されている膨大なデータを、ビジネス成功のために活用することです。
企業に蓄積されているデータには様々な種類があり、具体的には次のようなデータが挙げられるでしょう。
- 業務データ
- 販売データ
- 顧客とのコミュニケーション記録
- ライフログデータ
- 自動記録データ
- センサーデータ
企業内の部門によっても、記録されているデータが異なります。
例えば、営業部門であれば顧客の属性データ、カスタマーサポート部門であれば問い合わせ内容の種類や対応時間のデータなどが挙げられるでしょう。センサーやPOSなどのシステムを活用すると、様々なデータを高い頻度で入手可能です。入手した膨大なデータを統合・分析して、課題の解決や目標の達成に繋げられる戦略を立案することをデータ活用といいます。適切なデータを分析できればこれまで気付かなかった課題を発見したり、新たに効果的な戦略や付加価値等を創造することも可能になるでしょう。
また、ビジネスにおけるデータ活用の方向性は大きく分けて、
- 攻め(エクスターナルフォーカス)
- 守り(インターナルフォーカス)
の2種類です。
攻めのデータ活用は顧客体験価値の向上や、新規ビジネスの創出によって売上や利益の向上を目指す戦略となります。対して、守りのデータ活用は業務オペレーションの改善や業務効率の向上を行うもので、コストの削減による収益の向上が目的です。目的や課題に応じて使い分けることで、効率的に業績を向上させることができるでしょう。

データ活用が注目される理由
近年ビジネスにおいてデータ活用が注目されている背景に、インターネットやスマホの普及によって、顧客や消費者のニーズが多様化している点にあります。インターネットやスマホが一般に普及したことにより、顧客や消費者が気軽に情報にアクセスしやすくなったためであるのが原因です。SNSの普及によって企業だけでなく、個人でも情報を発信できるようになっているのも、データ活用が注目を集める一因でしょう。
また、コロナ禍の現代においては、データマーケティングの需要がますます強まっています。職場や学校などで自粛が叫ばれてリモートでの活動に注目が集まる現代で、社会活動のデジタルシフトが進んでいるのも現状です。社会活動のデジタル化が進むにつれて、企業のDXに向けた取り組みも活発化しており、経済産業省もDXに向けた取り組みを推奨しています。DX化の動きが一層加速している市場で、収益を上げていくためにはデータ活用を積極的に行うことが大切です。これまで経験や勘に頼っていた企業であっても、売上を伸ばしていくためには、多様化しているニーズに応えなければなりません。各業界で多様化しているニーズに応えていくために、重要な役割を担っているのがデータ活用なのです。
それでもデータ活用が進まない理由
業績を向上させていくために不可欠なデータ活用ですが、日本においては欧米諸国やアジアの先進諸国と比べて、データ活用が進んでいないといわれています。日本でデータ活用が進んでいない原因として挙げられるのが、次の4つの理由です。
- 経営層の理解不足
- データの価値や有効性に対する理解不足
- 部門ごとに異なるデータ
- 人材不足
まず、経営層がデータ活用による、経営戦略の姿を思い描けていないケースが挙げられます。思い切った人材や予算の配分、人事評価の見直しといった施策の実行に踏み切れず、中途半端なまま進めてしまうのです。特にデータ活用に取り組んできた土壌がない企業の場合、経営層がイニシアティブを取って推進していかなければ、成功する可能性は低くなるでしょう。経営層のみならず、現場の一般スタッフがデータ活用の価値や有効性を理解してない場合でも、データ活用が進んでいきません。全社一体となってデータ活用を推進していくには、一般のスタッフもデータ活用の成功例や、分析の基礎リテラシーを身に付けておく必要があります。
また、同じ項目を表しているデータであっても記録している部門間でデータの定義やフォーマットが異なっているのも、データ活用が進まない原因です。データの定義やフォーマットが異なると、データの統合や集計が困難になってしまい、分析に入る前段階で作業が止まってしまいます。データ分析を効率よく行うには、データ収集と蓄積の方法を再構成しなければなりません。そのほか、そもそもデータ活用を推進していくために必要な人材が不足しているというのも、足かせの理由として挙げられるでしょう。上記の理由などによって、市場で勝ち残るために必要なデータ活用が、日本で遅れているのです。

データ活用をすることのメリットとは
企業でデータ活用を進めていく上でのメリットとして、次のような点が挙げられます。
- 売上の向上
- データに基づいた経営判断
- 気付かなかったチャンスの発見
データ活用をビジネスに取り入れることによって、業務の効率化や売上の向上などに役立つ経営戦略を立てやすくなるでしょう。最近ではデータドリブンという、今までの経験や勘だけに頼ってきた経営戦略から、データに基づいたビジネスの意思決定を行う手法が注目を集めています。データドリブンを実現するためには、データ活用の導入が欠かせません。データ活用のメリットを最大限生かすためには、PDCAサイクルを回して、より効果的な戦略やアクションを取り続けることが大切です。
また、実務データによるデータや、マーケティングの知識もあるとよいとされています。成功や失敗のデータと、知識を積み重ねていくことによって、的確な戦略や検証がしやすくなっていくのです。
次に、データ活用によって得られる具体的なメリットについて、詳しく解説を行っています。
売上の向上
企業に記録されている膨大なデータを収集し、統合・分析して得られたデータを活用すれば、売上の向上させる施策を打ち立てられるでしょう。ビジネス上の課題を解決するには、まず自社の現状を把握する必要があります。現状を把握するためには、データのような客観的な事実が欠かせません。企業に蓄積されている膨大なデータを収集、分析することで過去の振り返りをしながら、自社の現状や顧客のニーズの変遷を把握できるようになります。現状を把握することで、なぜ売上が落ち込んでしまったのかなどの原因を素早く特定できるようになり、課題を解決する施策を打ち立てられるようになるでしょう。
また、顧客や市場のニーズの変遷などのデータを分析すれば、高度な将来予測も可能となります。精度の高い将来予測を活用すれば、成功確率が高い施策を、無駄なく効率的に実施できようになるでしょう。近年の技術発展によって、コンピューターの処理速度が大幅に向上し、これまで時間がかかっていた予測分析も短時間で終わるようになりました。顧客の動向を短時間で正確に捉えられるようになるので、シェア率の拡大や利益の向上など、売上アップに繋がる最適な経営戦略を立てるようになるでしょう。
データに基づいて経営判断ができる
客観的なデータを活用することで、今までの経験や勘に頼ってきた戦略立案から脱却して、根拠に基づいた意思決定を迅速に行えるようになります。ビジネスにおける意思決定には、なによりスピード感が必要です。近年の市場は変化が激しくなっているので、迅速に意思決定を行わなければ、市場の流れに置いていかれてしまうでしょう。
しかし、故人の経験や勘に頼った意思決定では感覚を周囲に理解してもらいにくいので、全体に共有されるまでには時間がかかってしまいます。意思決定に至るまで時間がかかってしまうと、せっかくのビジネスチャンスも逃してしまうでしょう。仮に意思が通ったとしても、ニーズが多様化している現代においては、経験や勘が時代遅れになっていることも少なくありません。意思決定にデータを活用すれば、数字や行動履歴といった確かな根拠に基づいて意思決定できるので、周囲と認識を共有しやすいです。周囲と認識が共有されている意思決定であれば、戦略の立案から実行までの工程がスムーズになり、スピード感を持った意思決定となります。
また、経営目標がデータによって明確になっていれば、従業員も目標達成に向けて積極的に行動しやすくなるでしょう。具体的なデータによる意思決定であれば、将来的に意思決定の結果を検証しやすくなり、今後の戦略を立てる時に役立つデータを蓄積していけます。
今まで気づけなかったチャンスに気づける
企業内に蓄積されているデータを組み合わせて分析することで、これまで見逃していたようなビジネスチャンスや課題を発見できるようになります。今まで企業が抱えている課題の発見や、市場の新しいビジネスチャンスを発見するために、経験や勘に頼っているケースが多くありました。
しかし、情報化やIT化などの影響によって変化が加速している現代の市場では、経験や勘だけだと市場においていかれてしまうでしょう。企業内にある様々なデータを集約分析すれば、今まで気づけなかった洞察を導き出すことができ、新たなビジネスに参入していけます。データは新しいビジネスを立ち上げるためのヒントが多く隠されているので、様々な視点から分析を行うことで、新たな戦略を生み出すための土台となるでしょう。単体では意味をなさないようなデータであっても、複数のデータと組み合わせて分析すると、データ同士の相関関係や因果関係を発見できます。新たな消費者のニーズから、新商品や新サービスに繋がるアイデアのヒントを見つけられることもあるでしょう。新たなビジネスに参入した後も、結果を見極める際にもデータ活用が効果的な手段となります。社内のみならず、国などの公的機関が発表しているデータも活用していくと、新しいビジネスチャンスに気付いて参入していくことが可能です。
データ活用の具体例
続いては、業界や現場別にどのようにデータを活用しているのか、具体例をご紹介します。
ここでご紹介する業界や現場は、次の通りです。
- 小売業
- コールセンター
- 旅行業
- 農業
- 銀行業
- 飲食業
ビジネスでデータ活用を活かしていくには、目的を明確にしてから取り組む必要があります。目的が不明瞭なままデータ分析を行っても、ビジネスに繋がらないような結果しか得られないでしょう。
また、一度データ活用の施策を実施したとしても、そこで終わりではありません。データ活用による施策を実施した結果、どのような成果が出たのかを検証した上で、次の戦略を考える必要があります。目標や課題の設定から結果の検証までの流れを何度も繰り返すことで、よりレベルの高い戦略を立てられるようになるのです。精度の高い戦略を立てられるようになれば、売上や業績も向上していくでしょう。
次に、それぞれの業界や現場におけるデータ活用の具体例をご紹介しますので、参考にしてみてください。
小売業
小売業では商品の需要予測や新商品の開発などに、顧客データや購買履歴などのデータを活用しています。小売業を経営している企業の多くは実店舗のほか、ECサイトなどのサービスを提供していることが多く、在庫や売上のほか顧客の情報も獲得できるでしょう。小売業にデータ活用を導入すれば、顧客や市場の動向を予測できるようになるので、効果的なマーケティング施策を実行できます。例えば、ECサイトなどで顧客の購入データを参考にして興味を持ちそうな商品を提案する、レコメンド機能もデータ活用の一例です。大量のデータから消費者のニーズを捉えて提案できるので、顧客の購買意欲を高める効果が期待できます。
また、これまでの購買履歴といった顧客データからパーソナライズを行い、顧客1人1人に合わせた広告などの情報を提供するといったことも可能です。AIなどのITシステムを駆使すれば、実店舗やECサイトに訪れる顧客の数を予測できるようになり、仕入れやサービスの無駄を減らせるでしょう。近年では、実店舗とECサイトやアプリなどのオンラインサービスの情報を共有する、オムニチャネル化の動きも高まっています。
コールセンター
コールセンターのデータを活用することで、応対の内容や質を向上させることができ、顧客体験価値の向上に繋げられるようになります。コールセンターは実績が見えにくい現場ですが、顧客のニーズを把握しやすい業務でもあるので、データを分析することで改善に繋がるヒントが見つかるでしょう。商品に対するクレームであれば、顧客が改善を求めているケースが多くあるので、企業が気付かなかった課題点の発見に繋がります。
また、オペレーターの対応内容や対応時間をデータ化できるので、オペレーターの応対の質を向上させられるでしょう。具体的なデータ分析によって、オペレーターの応対に関する無理や無駄を突き止めて、業務を効率的に変えられます。AIなどを活用すれば、オペレーター間の応対品質のムラを減らせるほか、チャットボットによる自動対応でオペレーターの負担軽減も可能です。オペレーターの質が向上していけば、顧客が問い合わせを行った時に安心して話すことができるようになるので、顧客満足度も高まっていくでしょう。伴って企業の信頼度も向上していけば、新たな市場や顧客の獲得などにも繋がっていくはずです。
旅行業
旅行業では顧客の観光地への興味や、行動特徴に基づいたサービスの提供するために、世界中の観光地や観光客の情報といったデータを活用しています。以前から旅行業界ではデータ活用の動きが高まっていましたが、コロナ禍の影響によって動きがさらに活発になりました。例えば、旅行プランのマーケティングを行う際の意思決定に、データが活用されています。顧客がWebサイトなどを使って情報を探したり、サービスを利用すれば、顧客のニーズや関心ごとを把握できる情報を収集可能です。旅行企画を検討する際に、ターゲット層のニーズを把握できるデータを活用できれば、多くの人気を集めるプランを考え出せるでしょう。
また、旅行中の顧客や現地の気象情報などのデータがあれば、データに基づいた旅行計画やサービスの提供を行えるでしょう。近年ではコロナ禍の影響によって、オンライン旅行という新たな旅行形態も誕生しています。インターネットを用いた疑似旅行体験を通して、顧客の旅行意図とニーズを喚起するという目的で実施されており、旅行業にとって新たな試みといえるでしょう。
農業
農業にビッグデータを駆使したデータ活用を導入することで、将来予測や生産性を向上、生産現場の見える化が可能になる精密農業が実現します。これまで農業は経験や勘に頼る部分が多くありましたが、圃場の状況を撮影したり、センサーで計測してデータを集めることで効率的な栽培管理が可能です。例えば、長年農業に携わっていないと分かりにくい生育状況や病気、日照などの状況による変化をデータ解析によって誰にでも分かるようになります。野菜の収穫時期を一定濃度の炭酸ガスの量によってある程度予測できるほか、量などを測定することで出荷時期まで予測できるのです。
また、気象データなどといったビッグデータを解析していけば、栽培上で障害となるリスクの予測もできます。過去のデータから生育の傾向を導き出せれば、作物がダメになってしまうリスクを減らして、確実に成熟した作物の出荷まで結び付けられるでしょう。合わせて、ロボットやIoTを利用したスマート農業と結び付けられれば、人間の作業がなくても収穫まで行える農業も実現できるかもしれません。天候といった自然環境までコントロールするのは難しいですが、人間が培ってきた知識や知恵、労働力をデータやITを活用すれば別の方法で賄えます。
銀行業
長年ビックデータを活用し続けている銀行業では、現金の回収から財務管理まであらゆる業務の効率化にビッグデータを活用しています。銀行では多額のお金が動いているので、データを正確かつ安全に監視して、スピーディーに予測を立てた上で戦略を策定しなければなりません。ビッグデータを活用していくことで、個人に合わせてカスタマイズされた便利で安全なソリューションで、顧客の手間を省いて収益を生み出しています。例えば、ビッグデータソリューションを活用することで顧客の支払い行動を予測、分析できるプラットフォームの構築に成功しました。顧客の行動に対する知見を得られるので、企業は支払いの遅延を最小限にでき、キャッシュフローを抑えながら顧客満足度の向上を実現しています。
また、クラウドコンピューティングを活用すれば、リスク計算にかかる時間を削減してリスクマネジメントの効率化が実現できるでしょう。
飲食業
飲食業で売上データや顧客データを効果的に活用することで、効率的なプロモーションや無駄のないサービスの提供が可能になり、売上の向上に繋がります。従来の飲食店では、基本的に顧客が来店してくれるのを、ただ待つのみでした。しかし、飲食店が持つ情報をビッグデータ化できれば、顧客を増やすための効果的な宣伝活動やサービスの提供などの施策を立てられるようになります。例えば、センサーを導入することで店内におけるスタッフなどの動きをデータ化し、効率的な接客のヒントを掴むことが可能です。
また、過去の売れ筋の分析や正確な来店予測によって生産者が出荷調整できるので、材料の無駄を最小限に抑えられます。アプリなどを活用すれば、店の付近で飲食店を探している顧客に対して、最適なタイミングでスマホ上に広告を出すといったこともできるでしょう。
まとめ
データ活用をビジネスに導入するメリットや、業界ごとの具体的な例について解説しました。インターネットの普及している現代において、多様化した顧客のニーズに対応するためには、蓄積されている膨大なデータの活用が欠かせません。市場の変化も加速しているので、従来の経験や勘に頼った経営戦略では置いていかれてしまうでしょう。売上を向上させるために、データ活用を意思決定に積極的に取り入れてみてください。